ヘルプ商店街|ショートショート
「ヘルプ、一丁いかがぁですかぁ〜」
店先の店主の大声に、思わず振り返る。
今さら人の助けなどいらない。そう思っておきながら、声に反応した自分自身に腹が立った。
声の主から無理やり目を逸らして歩き出そうとすると、店主が店を飛び出し追いかけてきた。
「お兄さん、お兄さん、ヘルプ売ってくれませんかねぇ」
「なんだ、急に」
「うちね、ヘルプの買取もしてるんです。よかったら、お兄さんのヘルプを買い取りますよ」
「買い取る?」
「えぇ、お店が人を助けるのがヘルプ販売、お客さんが人を助けるのがヘルプ買取。どうです?」
ちょうどその時、同じ店からおじさんがお札を数枚握って出てきた。別の店員が見送っている。俺のと同じように、おじさんの靴は傷んでいたが、俺とは違ってその足取りは軽かった。
「わかった。売ろう」
「この商店街の端っこの八百屋さんがヘルプ募集してるけど、そこでいいですか?」
俺は八百屋に向かいながら、ポケットの遺書を商店街のゴミ箱に捨てた。
(410文字)
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