チャリンチャリン太郎|ショートショート
太郎はよく鍵をなくす。
友達は「鍵にヒモをつけて首からさげなよ」と言う。
太郎は言われた通りに鍵を首からさげた。それでも、いつの間にか鍵はヒモごとなくなっていた。
学校の先生は「鍵にキーホルダーをつければいいのよ」と言う。
太郎は言われた通りにキーホルダーをつけた。それも、ポケットから消えていた。
お母さんが呆れた顔で「これをつけなさい」と言った。
手のひらには、大きな鈴。
太郎はその鈴を取り付けようと、新しい鍵をポケットから取り出した。
「違うわ」
お母さんは太郎から鍵を取り上げた。
「鍵に、ではなくて、あなたにつけるの」
太郎が歩くと、チャリンチャリンと鈴の音がした。
学校の廊下でも、チャリンチャリン。
トイレでも、チャリンチャリン。
「じゃあな、チャリンチャリン太郎!」
友達はニヤニヤ顔で手を振った。
チャリンチャリン、チャリンチャリン。
家が近づく。そうだ、鍵を持っていない。
扉の前。
勝手に扉が開いて、お母さんが顔を出した。
「おかえり」
(410文字)
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