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お気に入りの物語ベスト10

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これまでの物語の中で、スキの数に関係なく作者自身が気に入っているショートショートをセレクトしています。【きまぐれ更新】
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#眠れない夜に

ヤツはロボット?|ショートショート

アンドロイドと人間の区別がつかなくなって、もう数年になる。 アンドロイドの持ち主が何らかの事情でいなくなることによって生まれる、いわゆる「野良ロボット」の問題が顕在化し始めたのもこの頃だ。 街を人間のようにうろついている野良ロボットは、取り締まりの対象となった。アンドロイドは腹部にバーコードを持っている。警官が呼び止め、相手がアンドロイドと分かれば、バーコードの提示を求めた。 バーコードの改ざんは不可能。野良ロボットが取り締まりを避ける唯一の道は、人間のフリをすることだった

道に落ちていた失恋|ショートショート

ある日、会社からの帰り道に、失恋が落ちていた。 それは、植え込みの下に隠れるようにあった。遠くから見ると、手袋が落ちているように見えたが、近づいてみると、失恋だった。 どうしてそれがすぐに失恋だとわかったのか、今から説明しようとしても、難しい。でも、その時の僕には、すぐにわかった。 次の日の朝、同じ場所にまだ、失恋は落ちていた。昨日と同じ格好。 昨日は夜だったので暗くてよく見えなかったが、明るい時に見ても、やはりそれは失恋だった。 それを通り過ぎて会社に向かいながら、