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星読みと、ありふれた奇跡の発見 - その3

今回は、わたしが『星読みのガイドブック』(※note内記事で販売中です)を作ったときのいきさつを書いてみたいと思います。ちょっとした宣伝を読むつもりでおつきあいください。

■ 夫、大長編ドラえもんに泣く

年齢を重ねていくほど、何かをやり残したくないなという想いが自然と強くなるように感じます。やり残すといっても、名を残すような功績をあげるとかではなく、ただ、何か人の役に立ちたいなという想いです。どこかで、人生には終わりがあると感じ始めるからかもしれません。

あるとき、夫が高熱を出して丸1週間下がらなかったことがあります。熱を出すことも珍しいのですが、この長引きかたが初めての経験ということもあって、布団の中で色々と思うことがあったようです。2日、3日くらいのあいだはもうそろそろ下がるかな、なんて前向きに考えることもできても、5日、6日たっても下がらないと、もう治らないのかもしれないと不安になってくる、と。

そんな中、夫は何げなく子どもの漫画を手にとって読んでいました。大長編ドラえもんです。で、読みながら泣いていました。「人がもとめているのは何よりも愛なんだ」、「生きている間に、誰かによろこばれることをしたい」という想いを強く実感したというのです。藤子・F・不二雄先生がドラえもんにこめた想いに、どこか響くものがあったのかもしれません。

愛のために何かできないだろうかということで、わたしたちはホームページで『毎日の星読み』を書きはじめました。わたしはもともと何十冊も星の本を読むくらい星読みへの関心があったので、何かしらの星のことが書けないかなと思ってホームページ自体はつくっていたのです(夫任せですが)。でも、どうも方向性がつかめていませんでした。

別の記事にも書いているのですが、わたしの『毎日の星読み』はトランジットをもとにして、そこから自由に発想をめぐらすという読み方です。発想の中心となるテーマは、愛です。自分自身(そして夫)が愛について学びつつ、それがまた誰のためにも役立ってくれますようにという願いと想いで書いています。

偉そうに聞こえるかもしれませんが、むずかしい知識をあつめてホロスコープの細部をどれだけ解読するよりも、ただ愛に視点を定めようとする方がずっと大きなはたらきをしてくれるように思います。星読みは、やっぱりどこか当たりはずれで判断したくなりますが、当たっているならまだしも、当たっているのかなとモヤモヤし続けたり、はずれている星読みは消化不良を感じます。

当たりもはずれも手放して、ホロスコープのことを単に出発点として自由に発想するなら、想いには、ときには小さくても、ときには大きな発見があります。いちどやってみれば、きっと誰もが実感できるものです。

もともと星読みに関連した何らかの手引きを作ったり、講座のようなものをしたいと考えていたこともあり、自由な星読みがたくさんの発見をあたえてくれるものである実感をたよりに、その力を信じ、自由な星読みのためのガイドブックをつくると決めました。

さて、絵を描くのは夫です。

■ 牡牛座が笑っている

夫はまず、12星座の絵にとりかかりました。ノートにスケッチして、いくつもアイデアを描きます。でも、どれだけたくさん描いても、何かうまくいかないと感じるらしい……。紙面にはすごくたくさんの羊やら牛やらの絵が描かれていて、はたから見ていればどれも十分だと思えるのに、本人はそうじゃないと感じるようなのです。

何日も描き続けて、羊や牛が山ほどできました。でも、本人が駄目だと感じていることには変化がありません。「描けない」と言います。最初っからスランプかよと思うかもしれませんが、ほんとうは、何年も色々と描けない想いを抱えこんでいた部分もあるようなのです。画家というわけではないけれど、物をつくる想いのある人です。

それで、どうにか描けるようにならないかなと思っていた矢先、わたしの頭にふとひらめいたのは「彫刻刀」というキーワードです。何の意味かもわからないけれど、それを伝えてみました。人とは不可思議なもので、わからない中からも、何らかの意味を見出すものなのかもしれません。

それから2、3日したころ、ふいに「(12星座の絵)あと、2日でできるかな?」と夫がいいました。わたしは何も考えずに「できるよ」と気楽にこたえました。そして次の日、まったく描けないまま……。また次の日、やっぱり描けないまま……と、思いきや、深夜になってわたしがすっかり眠っていた間に描き上げたということを、朝になって告げられました。

# 夫の誓い

そのとき、夫は12星座を描くための想いというか誓いを次のようにたてたといいます。


  • 自分はただ道具のようになりきって描くことだけに集中する。

  • 描かれた絵に対して、良い悪いの判断をしないこと。

  • 理想や完璧をもとめすぎないこと。

  • 勢いをもって最後までできると信じること。


絵は12星座の順番に、牡羊座から順番に描きはじめたそうです。牡牛座ですぐにつまづきそうになってしまったけれど、誓いにしたがって手を進めることを選んだそうです。またなぜか、わたしの「できるよ」の、ほとんど無責任なひとことが大きく貢献していたといいます。すると、どんどん描ける感覚になっていくことが分かったそうです。

わたしは必要はないと思ったのですが、1点、夫は牡牛座をあとから描きなおすつもりだと考えていました。でもまずは、いったんパソコンにすべての絵をスキャンすることにして、『星読みのガイドブック』に使えるかたちに加工してくことにしました。すると、「あ!」と、夫がおどろきの声をあげました。

# スイッチは切り替わった

「牛が笑ってるよ」
パソコンでは、ファイルを選ぶとき、ウィンドウ横にプレビュー画面というものが表示されるのですが、そこに表示されている牡牛座の絵が、実際に描いたものよりも笑顔になっているというのです。見てみると、たしかに目が、実際の絵柄よりもにっこりうれしそうに笑っています(下の図です)。

左:プレビュー画面のスクリーンショット
右:実際の絵柄

夫いわく、プレビュー表示される際、画像が縮小される仕組みのどこかで絵の細かなところが変わるのだろうと言うことなのです。また、牡牛座の元画像のサイズを少し編集してみると、プレビューがにっこり顔ではなくなるのです。つまり、これほどはっきりと表情が変化していたのは牡牛座の絵柄だけであり、また、絶妙にプレビュー画面が笑顔に変化するサイズで画像がつくられていたということです。偶然とはいえ、これをひとつのメッセージとして、牡牛座の絵は描きなおす必要がないと結論づけました。

そのあとは、ここまでの流れが嘘だったかのように『星読みのガイドブック』の挿絵がつぎつぎに描かれていきました。夫の中のスイッチの変化を、彼自身がすごく不思議に感じています。きっと、はたから見れば些細な出来事です。でも目に見えないところで、色んなことが、ひとりひとりにとってはすごく大きな意味をもっているのかもしれません。

■ 誰でも自由に星をよむこと

自由に星を読むということを大切にし、想いをはたらかせさえすれば、いつでも何か発見がある。そんな星読みを感じてもらいたい、と、『星読みのガイドブック』にはしつこいくらい書いてあります。もっとも『星読みのガイドブック』で紹介している知識は、自由な星読み専用のものではありません。一般的な星読みにそのまま用いることもできます。だから、ここから他の本に移っても「わあ、テトラにだまされた」とはならないはずです。

ところで、自由に読むというのは、このうえなく簡単な星読みなのだけれど、ある意味ではとてもむずかしいものだろうというふうにも思っています。

芸術は爆発だ! で有名な岡本太郎の『今日の芸術』(光文社)を読むと、簡単であると同時にむずかしいという感覚についてすごく的確に表現されていると感じます。もちろん、岡本太郎は星読みについて述べているわけではありませんが、自分の想いにほんとうに自由になって表現するという精神は、きっと、あらゆるものに通ずるものです。

たとえばひとつの花を部分ごとに分解して、花びら、がく、めしべ、おしべ、葉っぱ、茎などとやっていけば、花の構造をよく知ることはできるかもしれません。それぞれの数を数えたり、場合によっては化学的な成分を調べるなど、できることは山ほどあります。でも、ひとつの花を感じとって、そこにある豊かさを見つけ出そうというとき、わたしたちは、ほんとうの芸術、ほんとうの哲学と向かい合うことをもとめられます。

すぐ先の未来、AIの進歩によって複雑な技法でホロスコープの解釈を出すことさえ容易になるはずです。もしかしたら、人並みどころか、人間以上の説得力をもっているかもしれません。クリエイティブは人間の特権というイメージも、もはや崩れ落ちそうだともいわれています。絵も音楽も小説も、AIの創作は始まっています。たぶん、わたしたちの唯一の特権は、こたえに至らない、無駄にさえ見えるプロセスの中で生じる発見です。知識が理解にかわるときの気づきです。

そんなわけで『星読みのガイドブック』は、ひとりひとりの感性にお任せする星読みの本といえるかたちで出来上がりました。行ったり来たり、ほんとうに、自分の想いを見つめてたくさんの発見ができるようにと願いをこめています。

■ まとめ

わたしの頭の中には、これまで読んできたたくさんの本や教わってきたこともあるので、まだ色々な星読みの知識がのこっています。でも、ほんとうに役立つ星読みのために必要なものは『星読みのガイドブック』で全て紹介しました。

わたしと夫には、このガイドブックが出来上がるまでの過程に、まだまだ色々な出来事がありました。不思議だなと思うのですが、それでも他のひとから見ればありふれたものだろうなと思います。でも、そのひとつひとつがやっぱり奇跡なのです。わたしとしては、ときどき絵を見たいなと思って、テキストを見てもらえるだけでもうれしいです。そしてなにより、みなさんが星読みでたくさんの愛を感じることができたらと思っています。

(※星読みのPDFテキスト『星読みのガイドブック』は以下の記事で販売中です。サンプルも見ることができます)

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