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二月の星々(140字小説コンテスト第3期)応募作 part2

part1 part2 part3 part4 part5 結果発表

月ごとに定められた文字を使った140字小説コンテスト。

今月の文字は「分」。

2月28日までご応募受付中です!
(応募方法や賞品、過去のコンテストなどは下記をご覧ください)

受賞作の速報はnoteやTwitterでお伝えするほか、星々マガジンをフォローいただくと更新のお知らせが通知されます。

応募作(2月5日〜11日)

投稿日時が新しいものから表示されます。

2月11日

さなみ @7Tr04
大人になった今、分度器の使い道がない。そうだ、ケーキの角度を測ってみよう。さっき職場で男性社員がホールケーキを切り分けてくれた。測ってみると、なんということだ。私のケーキだけ少し大きい。彼は私に気があるのかも知れない。その日から私は、彼を意識するようになった。

巻柄ぽん @iNFEuOxmHtIg2gV
「キュウリは触ってトゲが痛かったら新鮮な証だよ」母が私の頭を撫でながら教えてくれた時を思い出す。今、母が亡くなったと連絡が届いた。見舞いした後に容体が急変したらしい。母は私の前では気丈に振る舞っていたのだろう。人の死に目の見分け方は教えてもらってないよ。唇から血の味が広がった。

若林明良(サイトからの投稿)
【分度器の意外な使用法】①ホールケーキを7等分する(51.4度で切り分ける)②パン作りのスケッパー代わりに③絵柄の疑似日の出を眺め気分をリフレッシュさせる④ハイレグの角度を測る⑤犬猫を半円の部分でなでる、又は角でツボ押しすると喜びます⑥事故にみせかけて角の部分で苛めっ子の目を潰す

宮元修(サイトからの投稿)
分度器をしばらく使っていない。最後に使ったのはいつだったろうか。もう覚えていない。まだ子供だった頃。いつか分度器を使わなくなる日が来る等と、少しも想像していなかった。こうして生きてきて、僕もとりあえずは大人になった。いくつかの分岐する道を乗り越えてきた。この先も、いまだ分からず。

瀬口利幸 @sikouniki
取り調べが始まって30分。
「お前がやった事は分かってるんだぞ」
「・・・」
容疑者は、ずっと何もしゃべらなかった。
「いい加減白状したらどうだ」
「俺は、何もしゃべらない」
「・・・やっと、白状したな」
「どういう事だよ ?」
「やはり、お前が無言電話の犯人だったか」

粟生深泥 @ao_midoro_97
2月中旬、その気配が近づくと無意識に涙が溢れてくる。
子孫を増やすって本能的な行動なのは分かってたし、風任せの誰かの恋路なんてどうでもいいけど。
どこか他所でやってほしいし、毎年恒例のイベント化してるのも嫌だった。
おい花粉、お前らの受粉で鬱憤溜まってんだよ。ぎゃふんと言わせんぞ。

猫とひまわり @orange_tomatoo
次のひらがなを漢字に直しなさい。
(1)ぶんごう、夏目漱石
「ぶんごう、ぶん、ごう……」
テストが始まる寸前まで、ノートを見ていたのに、肝心な時に答えが出てこない。
「分号…いや、違うな。分郷、分合、え、分……」
『分』から抜け出せないまま、時間だけが過ぎていった。

リマウチ @rIMAUCHI0420
「なぁ、国って何をもって国って言うんだ?」友は続ける。「ほら、国同士が川とかで境を区切っているわけじゃないだろ?言語も殆ど同じ国もあったりさ。そんなのなんでわざわざ国を分けるんだ?」「さあな。そんなの俺らを出兵させた馬鹿なお偉いさんしか解らないさ」銃撃音が鼓膜をまた揺らす。

猫とひまわり @orange_tomatoo
二十三年、捨てられずにいる物がある。虹色のアフロヘアが特徴の犬のポーチ。初めて好きな人に「それいいな」とおねだりして貰えた戦利品。とうの昔にチャックは壊れた。それをずっと捨てられずにいる私の分岐点は、どこにあったのか。ずっとあなたが一番で、ずっとあれから恋できずにいる。

あまくに みか @ten1092ten
「1分30秒!」
声が飛び込んできた。
「いけるぞ!」
遠ざかる沿道の声。
硬い奥歯をすり抜け、飛び出した咆哮。
襷を握りしめる。
「がんばれ」「頼む」「勝つぞ」
聞こえない声が、背をぐんと押した。
前をいくランナーとの差は、1分30秒。
追いつける。いや、追い抜くんだ。

此糸桜樺 @Konoito_Ouka
一定のリズムを刻み続ける秒針。部屋に響き渡る無機質な音。その音は徐々に大きくなっていく。部屋の中が秒針の音でいっぱいになり、はち切れんばかりに膨れ上がるが、尚もその音は止まらない。
突如、一瞬の静寂が襲った。その一瞬は永遠のように思えた。
分針が動く。そしてまた秒針が動き始めた。

箱の中の猫(サイトからの投稿)
野分嵐は小5の2学期に転校してきた。アラシは女子の人気者だった。アイドルグループと名前が同じだけなのに。僕が台風一過を台風一家と間違えて覚え、恥をかいた一因はあの姓にある。転勤族の一家はバレンタインデーの直前、風のように街を去った。胸を撫で下ろした男子は僕だけではなかったはずだ。

宮元修(サイトからの投稿)
手応えは不充分なものだった。電話を切り、30分ほど街を歩いた。彼は初めて分かった気がした。彼女の言葉を改めて頭の中で分析する。「分別のない恋などするものではないわ。さよなら」その言葉は、まるで彼女の分身が言っているかの様に、彼に冷たく響いた。自分の一部だった彼女はもういないのだ。

しまモク @mokutanpen
「もう寝た?」と、少し湿り気を含んだ声で貴方は私に触れた。まな裏に輪郭を描いてみる。ふ、と息を吐く音がして指先は移動していく。顎先、頬、目尻、瞼、睫毛に到達した時、数分前の熱が蘇り、つ、と涙が流れた。涙の意味も知るくせに、こんなに優しく拭くなんて。ホントにズルい人、なのに。

尾津 乃月(サイトからの投稿)
入れた瞬間から始まっている。針が逃げるように僕を見る。僕はただじっとそこに居るしかない。この時間が、どうしようもなくもどかしいだけであろうとも、離れることは許されない。もしもそんなことをしたら、どうなるかって?そんなの決まりきってる。僕はただこの3分という限られた時間を守るだけ。

瀬口利幸 @sikouniki
「瞬間移動できるようになったぞ」
友人は自慢げに言うと、その能力を見せようと念じ始めた。
すると、一瞬、友人が消えたようにも見えたけど、全く動いていなかった。
「一ミリも動いてないけど」
「そうなんだよ。瞬間移動は出来るんだけど、ちょうど地球一周分の距離しか移動できないんだよ」

すーこ(サイトからの投稿)
「ただいま」「おかえり」手洗いうがいを済ませて食卓に向かうと、鍋からほかほかの湯気が立っていた。お椀にお味噌汁をついでくれる間に、ごはんを2人分よそう。「いただきます」「はいどうぞ」お味噌汁を飲むと、冷えた体に染み渡る。具沢山で少し塩分控えめの優しい味が、体も心も満たしてくれた。

すーこ(サイトからの投稿)
「寒いね~。あ、コンビニ!入ろうよ!」手を引く君についていく。「肉まん買って!」仕方ないなぁと1つ注文し、彼女に手渡す。「あったか~い!はい、半分こ」半分の肉まんを受け取るやいなや、彼女は頬張って目を輝かせる。いつまで半分こしてくれるだろうと小学生の娘を見つめながら、帰路につく。

東方 健太郎 @thethomas3
もう少し、待たれと言われた。このまま、何をして待たれよと言うのであろうか。もう少しとは、それは、どのくらいの時間であろう。ややもすると、己の時間軸を生きることになりがちな暮らしぶりのなか、誰のことを思えると言うのだろうか。あと、五分、いや、二分だけでもいい。話を聞いてくれないか。

すーこ(サイトからの投稿)
分不相応だと思いつつ、母がくれた真珠のネックレスをつける。華やかな母と純朴な父の間に生まれた私。自信のない私を母は着飾り、笑顔でいれば大丈夫とにっこり笑う。父は慈愛に満ちた表情で見守った。「行こうか」父と手を繋ぎ、一歩踏み出す。扉を開けた先には、少し緊張した最愛の人が待っていた。

梅吉 @tmk2bay
病室に男は音もなく入った。ベッドには痩せた女性が眠っている。男は死神だ。彼女の魂を迎えに来た。決められた時間まで、あと5分。男は女を見つめた。実はこれが初仕事だ。胸がざわつくのは、そのせいだろうか。時間だ。鎌を振りかぶる。その勢いで倒れた写真立てには、彼の写真が飾られていた。

すーこ(サイトからの投稿)
後3分で今日が終わる。救急車のサイレンが聞こえる。部屋に1人、寒くて心細い。賑やかな1日の終わりほど、余計に虚しい。もう布団に入ってしまおうか。いや、でも。時計の短針が1周、2周。ガチャガチャッ。「遅くなってごめん!お誕生日おめでとう!」抱きつく間に、長針はてっぺんを通りすぎた。

すーこ(サイトからの投稿)
「先輩、これお裾分けです」「クリームシチューじゃん!」「先輩、お店でなかなか見かけなくて食べたいって言ってたから。ちょうど昨日作りすぎちゃって」「やったー!ありがとな。タッパー洗って返すわ」本当は、先輩と少しでも話したくて、はりきって作ったんだけど、それは内緒。感想が楽しみだな。

ニコニコひまわり♪(サイトからの投稿)
4人なら大丈夫!8人ならまあ大丈夫。3人は難しい。慎重に、慎重に。よーく見て!公平に切り分けないとね。ホールケーキ切り分けの緊張感にはこの歳になっても今も慣れない。切り終えた時の全員の安堵の表情。笑ってしまうね。

せらひかり @hswelt
ケーキを切り分ける時、こねずみが現れた。いちごの一切れを分けてください。訳は聞かないで、大きないちごをまるまるあげた。こねずみは、あまりにつやつやしたまなこで、白い毛皮をふるわせて礼を言った。それから戸棚のすみの隙間に消えた。白い生クリームの平原に残されたいちごは、少し酸っぱい。

ニコニコひまわり♪(サイトからの投稿)
1分経った5分経った、10分経過…。あと少しだけ、本当にあとちょっと!えっ?!もう20分も経ったんだけど!大丈夫、いっそあと10分だけ。気づけば50分も経っている!!焦る、今日も後悔の私。学習しない。毎日同じ反省をしているや(笑)

宮元修(サイトからの投稿)
「修ちゃんにも分けてあげなさい」友達のお姉さんは弟に言った。書道塾からの帰り道。二人が肉屋で買ったコロッケ。僕は買えなかった。彼は揚げたてのそれを半分に、少し悔しそうな顔で僕に渡した。ありがとう。なのに僕は、熱々のそれを口に入れた途端、落としてしまった。コロッケが道で泣いている。

メイファマオ @molmol299
もう充分だ…と目を閉じて長い1日の終わりの安らかな眠りに身を委ねる。
しかし無情にも朝はやってくる。
目を覚ますと残酷な現実があり、私は声をあげて泣く。
「よしよし、どうしたの?」
今世の母は優しく美しい。
愚図る私を抱き上げあやす。
前世の記憶があるまま赤子からリトライとか聞いてない。

はぼちゆり @habochiyuri0202
「彼女に手を出すな」私を暴漢から救ってくれた人の言葉。夢での話だ。私は彼に恋をしてしまい、「馬鹿げてる」鏡に映る自分に呟く。そこで目が覚める。この夢をよく見る。俺は夢の中で私であり、そして今、俺の目の前に私がいる。俺が包丁を取り出した途端、男が私の前に現れた。「彼女に手を出すな」

晃ゆみ @kouyumi23
我が百貨店時計売場に中年男性が来た。キッチリ3分計りたいから、ストップウォッチが欲しいとの事。
「よし!これでうまい三分粥が作れるぞ!」
「三分粥ですか?」
「そう!1秒の狂いもなく3分煮る!」
男性は得意顔で退店。
私はその背中に向かって訴えたい!
3分煮れば三分粥になるわけじゃありませんよ-!

きり。 @kotonohanooto_
彼は精密機械のような人で、たとえばホールケーキを五等分するなんてことを、いつも完璧にやりとげた。わたしはお店にいる気分で、そのケーキを口にしたものだ。そして、いま。ひとりのわたしの前にホールケーキがある。さて、どうやって分けよう? わたしは迷わずフォークを持って、ケーキに刺した。

2月10日

あいうら @Aiura719799501
「分割払いできるの?」
「よくそんな言葉知ってるな。でもクレジットカード持ってないだろ?現金は1回払いだけだ」
ルビーの指輪越しに、顔馴染の少年は目を潤ませた。
「お医者さんが言うには明日がママの最後の誕生日になるかもしれないんだ。おじさん、お願いだよ」
「仕方ねえな。出世払いだ」

青垣宝(サイトからの投稿)
地球時計の中心から北に十キロ。眼下の岩場に巨大な針が映る数千年に一回の現象を見ようと、展望台には人があふれていた。まず人の歩く速さで動く短針の影が岩に映る。それを分針の影が車の走る速さで追いかける。正午に二つの影が重なり万雷の拍手が起こった瞬間、地鳴りが轟き歓声は悲鳴に変わった。

MOTOM(サイトからの投稿)
 「あなたは美しい? それともおブス?」 最近は、AIで顔の美しさ分析診断ができるそうです。私は、3分で終わると期待して挑戦しましたが、結果は「ウェブカメラ・エラー」。本当は美人なのに、サイトバグでハズレてしまいました。次回は、鏡で自分の顔を見ながら、笑顔を作って挑戦してみます。

猫とひまわり @orange_tomatoo
「はぁ、マジ死ね」友人が携帯を見ながら呟いた。相手はどうやらゲームらしい。その隣で私は小説を取り出す。自分が言われていなくても、鋭い言葉は容赦なく心を傷つける。「相変わらず、その本好きだねー」傷つくことに慣れないための私の武器。「まぁね」そう言って栞を挟んでいたページを開いた。

箱の中の猫(サイトからの投稿)
右、左、センター。鏡に向かい髪の分け目を試す。美容室は先日行ったばかり。白髪探しではない。身支度を楽しんでいるのだ。職場に20代の方が入った。スルンとしたロングヘアに、控えめなラメのアイシャドウ。ドキリとした。美しさへの純粋な憧れは、中年女子の朝をときめく時間に一変してしまった。

こたろう @tDdKt587KklMAWJ
博士が天秤に21グラムの分銅を乗せた。すると均衡を保った。もう一方には何も乗っていない。
私は「マジックですか?」と聞くと博士は「いや自然の摂理だよ」と答えた。納得しないまま私は天秤を眺め続けた。「うっ」という言葉を絞り出すようにして博士は倒れた。私は駆け寄ったが既に事切れていた。

ダニー @5FUmQge6xskyxmC
お屋敷の御嬢様に恋をした。私の育てた薔薇の香を嗅ぐ横顔にやられてしまったのだ。あの日から泥に塗れた私がいつも以上に見窄らしく思えた。しがない庭師と貴族の令嬢なんて身分違いの恋だとわかっている。だからせめて、私の育てた花壇だけは御嬢様に相応しいものにしよう。鋏を持つ手が少し震えた。

もよりいと @moyoriito
1分1秒たりとも見逃したくなかった。息を吸って吐いて、ミネラルウォーターを飲んで、吸って吐いて。砂浜の砂のようにさらさらと手からこぼれ落ちてはまた掴む。その動作を繰り返していくうちに無色透明なほどまでに透き通っていく。僕たちは、その姿を片時も見逃したくなかったんだ。

りみっと(サイトからの投稿)
「ごめん、君の気持ちに気がつけなくて…」初めてチョコを贈った人から、電話をもらった。「いいんです。先輩は、私のこと妹分みたいに思っていたんだとわかってますから。」精一杯の強がり。「それもあるけれど、彼女ができたんだ。」それ以上は言わないで!耐えられるほど、私はまだ分別ついてない。

弓原 あき(サイトからの投稿)
ウイスキーの甘い優しい匂い。「樽の中のウイスキーは気づけばゆっくり減ってるんだ。天使がこっそり飲むから。」そう笑ってキスするあなた。知ってるよ。天使の分け前。おいしいウイスキーには天使がいる。なら、あなたは天使だね。喜んで私をさしだそう。

弓原 あき(サイトからの投稿)
「前からかわいいと思ってたよ。」ドラマみたいだ。「えっ」と言って、見つめ合いたいが、現実は机から顔を上げることもできない。顔をふるふる小刻みに揺らして、前髪の分け目を崩す。少しでも真っ赤な顔が隠れるように。綺麗になりたくて眼鏡を外した日。友達じゃなくなった日。

晃ゆみ @kouyumi23
我が百貨店は、開店5分前の朝礼中。
本日、雪女が来店予定との事。
「雪女様へ、どこの売場をご案内しますか?」上司が聞いてきた。
雪女は来ないよ、と思いながらも私は答える。
「雪女様は、メイクの崩れを一番気にされると思います。まずパウダールームをご案内します」
10:00開店。えっ?本当に来た!

いまえだななこ @na2na1ko6
ダンス動画を観る。高校の部活だろうか、群舞で、寸分違わぬ動き。
あ、いま曲調が変わったな。
身体の躍動で、表情で、彼らは曲の世界を表現している。私はその世界を自由に想像する。
ああ、いいな。ダンス、素敵だな。

音の聴こえない私にも、音楽を楽しませてくれる。

箱の中の猫(サイトからの投稿)
饒舌で大胆に突っ走るアクセル型。鬱々と不安なブレーキタイプ。二人に為す術のない私。一つの体に三つの極端な個性が棲む。病だ。出現は一人ずつ。願いが叶い三人に分離した。三者会談する。個性の補完による生き辛さの軽減で合意する。スクラムを組む頬を伝う、あたたかい涙。薬でまどろむひととき。

モサク @mosaku_kansui
分が悪くなると黙りこむ癖は直したほうがいいよ、とは言えなくて。いつも裏返しの靴下や、少しだけ残った飲み物とか、取るに足らないひと手間が私の心に残した断面図。愛しさや煩わしさが交互に積もるその中に、飲みこんだ言葉の化石が埋まっている。口にできなかった欠片が手の中でほろほろと崩れた。

洋海(サイトからの投稿)
「ワトソン君、制限時間は20分。今日こそは必ずクリアだ。」

「これモールス信号?」
残り10分

「ホームズは左、俺右やる。」
残り5分

キーンコーンカーンコーン…
「ワトソン君、今日も失敗だ。」
「このゲームいつになったらコンプできんだよ!」
高らかな笑い声が教室に響いた。

大殿篭 猫之介 (おおとのごもりねこのすけ) @ponkotsu_mt
たい焼きはたこ焼きのことが許せなかった。腹の内の餡を晒し、鋳型を拝み合わせて誠実に焼かれる我らに対し、彼奴らときたら、単に凹半球を並べた鉄板の上でころころ回っているうちに一丁前に球体っぽくなりやがる。実体は半分でしかないはずだ。詐欺ではないか。名が似てるのがなによりも気に食わぬ。

ほたほた(サイトからの投稿)
そこにはミルククラウンを頭にのせた小さな男の子がいた。一滴のミルクが落下した瞬間、彼は素早く王冠状のミルクを切り取る。
上気した赤い頬は、彼の達成感を伝えるのに十分であった。ミルクは凍りついた金属のように男の子のおでこにひっつく。そして男の子は大きなあくびをして目を瞬いた。

2月9日

巻柄ぽん @iNFEuOxmHtIg2gV
仕事でミスをし外回りと称して街に出た。厚い雲に覆われた空を背負いある場所へ。
「おう。来たなにーちゃん」
おじさんが不適な笑顔を浮かべて待っていた。無言で背中を向ける。
「今日もあと少し!気張ってけ」
背中を叩かれ憂鬱な気分が飛散した。
見上げると雲が風で散って青い空が覗いていた。

あいうら @Aiura719799501
「分岐を右方向です」
「ここを右なんて絶対おかしいよ」
パパはカーナビを無視して直進した。
「この先、分岐を右方向です」
「そんなわけない」
また、パパは直進する。
「そろそろ遅れちゃうよ」
「……。わかったよ」
上京のため地元を発つ日、パパは私をなかなか空港に送り届けてくれなかった。

あいうら @Aiura719799501
「大きな困難に直面したら因数分解をして考えるんだ。所詮、大きな問題は小さな問題の寄せ集めでしかないのさ」
数学教師をしていた父が生前よく言っていたことだ。
「で、どうすりゃいいの?」
スカイダイビング中にパラシュートが開かなくなった俺は、天国の父に問いかけた。
今のところ返事はない。

井上幸 @megumi_140moji
溺れるほどの活字を浴びる。足りない、もっと。飢えを満たすように追い求めた。朦朧とし始めた意識の中、ぽわりと浮かぶ一文にきゅっと心を掴まれる。きらきらと輝く言葉に引き込まれるまま、想像の海に深くゆっくり沈んでいった。現実逃避と分かっていても、この感覚に幸福を知ってしまえば戻れない。

ハセ @zoooo0617
今年の新人はやれる子だ。口数は少ないものの淡々と事務をこなす。自分が彼女の年齢の頃はここまでできなかった。
思い出すのは入社当時、毎晩涙を流して濡らした枕。指導係の立場にいる今の私を見て、あの頃の私はきっとこう言うーー…
『比べた時点で負けてるよ』
そう考えたら何だか胸を張れた。

しお しいろ @shio_shiiro
目が合った人を呪い殺す能力があった。人々は恐れて近寄らず、王様は僕を「呪いの刑の処刑人」とした。地位が与えられるだけましだ。ある日、罪人の女と目を合わせるが死ななかった。1分5分10分経っても死なない。「何故死なないのか」と焦っていると彼女は答えた。「だって超タイプなんですもの!」

ダニー @5FUmQge6xskyxmC
洗面台の鏡に写る男と向かい合って垂れ下がった前髪を左右に分ける。起き抜けで半分閉じた目を擦ると、気付いてしまった。何十年と見てきたおでこが記憶より広くなっていたのだ。慌てて妻に報告したら、何を今更と笑われた。
「お前、俺が禿げてもいいのか?」
「貴方は私が太ったら嫌いになるの?」

矢口 てる @yaguteruss
「喜びは二倍に、悲しみは半分に。」ありふれた言葉だけれど、二人ならきっとそんな人生が送っていけると思ったから、私はあなたと結婚したのよ。でも些細なすれ違いが繰り返されて、二人の関係はいつの間にか水と油のように分離してしまった。私がしたかった半分こは、こんな二層じゃなかったのにね。

山尾登 @noboru_yamao
分析にあたり分担を決め分業する。余分の時間を排除し、分陰を惜しみ、通常かかる半分の時間で、成分を明かすつもりだ。事前に成分の分布を推測しておくことがポイントだ。化学分解させ、養分だけを抽出し残滓を処分する。再検分する時間配分も考慮すべきで、沈着冷静に職分を全うするのが本分である。

瑞季 @mizki_aida
弟が「ミルは尻尾が分かれることがある」と言ったけど、そんなわけがない。老猫ではあるけど普通の猫だ。「見間違いだよ。影とか」「怒ったらなるんだよ」「怒ったら?」「うん。やってみようか?」「やめなさい」尻尾がどうなるかより、わざと怒らせるほうが問題だ。

カピちゃん(サイトからの投稿)
僕はカピバラ。癒し系と言われて人気者だが、生物学上の分類は鼠だ。しかも、世界最大の。和名は鬼天竺鼠。この厳かな名前は僕の可愛いらしいイメージには合わない。さらに中国語では水豚と書くそうだ。僕、豚じゃないのに。そこにイルカがやってきて、君の気持ちが痛いほど分かると言う。共に泣いた。

睡蓮(サイトからの投稿)
「こんなに暖かくなるんだね」僕のポケットに手を潜り込ませて彼女は笑った。白い息のずっと向こうには、くっきりした星空。「温もりを分け合えるからね」「でも、分け合うのに2倍になるって不思議」無邪気な瞳を見つめながら、僕は空に誓った。暖かさも寒さも、喜びも悲しみも全部分け合ってゆこう。

夜世瑠李 @yoruserui
ギリギリで釣り合う分母と分子の限界は近く世界の崩壊は目前だった。最期に食べたいのはエビマヨおにぎりだけど終末には手に入れづらいだろうから今のうちに沢山買っておこうとコンビニへ行く。会計のお釣りは666円で、その不吉な偶然が視界を歪ませた。綱渡りで足が竦む、まるで私は可哀想なピエロ。

怪夜 @kaiyo0813
身に覚えがない訳ではないが、どやされるほどの事でもないだろう。私は怒りに机をバンッと叩いた。皆の視線が私に一瞬集中し、やがて霧散していくのが分かる。「やっちゃった…」と心の中で呟いた。怒りの感情は容易に伝播する。私のせいで宿題をやらない誰かの子が、必要以上に怒られるかもしれない。

旅人 。 @ryoi44
何で、と僕は思う。彼女は恋人ではない。友人の一人だった。真冬の朝、公園で出会い、唐突に言われた言葉。表情と声音から悪戯とは思えない。彼女は噴水を指差して、その指で僕達の間を線で分けた。わかるかな。僕にはわからない。別れましょう。繰り返された言葉は白い息となって、僕の前で消えた。

旅人 。 @ryoi44
母が終わったか、と違人は思った。一分の海が種に入り込み、母親は身を挺して娘を守った。触れた海と共に光の玉となり、母親は消えた。最後まで私を守るか。偉人は冷めた目で消えた母と失った右腕があった空間を見た。そこには光の玉が浮かんでいる。痛みはなかった。彼女は種の隅で静かに目を閉じた。

アスパラ山脈 @yamaasupara
「言われなくても分かってるよ!」何回目の喧嘩だろうか。反抗期といえばそれまでだが、でも貴司は何もわかっていない。来月の二日で貴司も16歳そしたら独り立ちだ。その意味を何もわっかっていない。また一から教えなければ。道具の使い方、息のひそめ方、皮の剥ぎ方、人の殺し方。

藤和 @towa49666
友人とチェスを指す。長い付き合いの友人とは何度もこうやって対戦しているけれども、正直言えばこっちが勝てることは稀だ。今やってる勝負も、どうにもこっちの分が悪い。一発逆転を狙いたい所だけれども、うまくいくだろうか。そう思って大胆に駒を動かしたらチェックメイト。いつも通りの負け方だ。

こたろう @tDdKt587KklMAWJ
しんしんと雪が降っていた。それを窓から眺めながら君のことを想った。最寄りのコンビニまで徒歩3分だから往復6分。買い物に3分。合計9分のはず。俺は彼女が出て6分のジャストなタイミングでお湯を注いだ。「早く帰ってこいよ!麺が伸びてしまうじゃないか!」カップ麺の上の箸を見ながら俺は叫んだ。

2月8日

星降る夜(サイトからの投稿)
くんくん、くんくん。
甘い香りのする貴方へ。
思わず抱きしめてしまってごめんなさい。
気分が高まってしまったの。
でもね?
好きなのは貴方に染み付いたケーキの香り。
貴方自身じゃなくてごめんなさい。
期待させた?

水原月 @mizootikyuubi
ヒトゲノムはすっかりデジタルに分解されて、現実は虚像の世界の中に収まった。
役所に申請すれば、理想の人間をいくらでも作れる。性別や年齢も自由自在だ。
しかし、虚像の理想郷には、まだまだ遠い。
創造主に忘れ去られた人格データを渡り歩きながら、私は第二の虚像世界を作り続ける。

秋助 @akisuke0
「アイスケーキを二つに分けてさ、小さな方にイチゴを、大きな方にチョコプレートを乗っけたら、どっちに価値が──」「ねぇ、」命だったご馳走を前に、私達には今日があることを祝う。「溶けちゃうよ」「そうだね」ろうそくの火を吹き消す。リビングに暗闇が灯る。「誕生日おめでとう」「ありがとう」

にみ(サイトからの投稿)
「初高座だってのに散々だぜありゃ」普段分け隔てなく接してくれる師匠が他人に毒を吐く姿を初めて見た。影の薄い新人とすれ違い、自分の番がやってくる。座布団の上で客席に深々と頭を下げる。冷たく張り詰める空気。そのときアタシは思い出す。さっきのあの新人は、生きていた頃のアタシじゃないか。

玄冬 @takeyabu69
まず道具から吟味することだ。そう男は言って、試奏の為の羽根ペンを振るった。墨色の文字列の一群へあらゆる意味が隠されている。
分筆したいと懇願されても、その文字の風景を変える事は出来ない。
遠くに聞こえる軍靴は、更なる死地へ向かう分隊のせめぎ合い、新大陸への願望である。

亜来輝 @Tellalie_TRBY
ステージに立った先で見えたのは、皆の涙だった。
鬱になって自殺しないか…思案顔の母に「最後まで生きるよ」と返す。
泣く弟や友人には笑顔を見せた。

不安で流れた涙が、静寂な夜に溶ける。
吐血で汚れた手を洗い、鎮痛剤を服用した。

ステージ4に立つ自分にはもう、笑顔で過ごせる時間は無い。

ikue.m @ikue_mini
「『血を分けた云々』っていうのは、どこまで遡るんだろうな?親とか親戚とかさ。でも元をたどればアダムとイヴだよな」と友人に聞かれたので「イザナミとイザナギじゃないのか?」と言ったら、もう一人の友人が「いや、単細胞生物だろう」と言ったので、なんだか平和な気持ちになった。人類みな兄弟。

神鍋 実 @kannabe_140
完璧を求める自分が嫌いだ。プライドだけの完璧主義なんて消えてしまえばいい。
そう思いながらも自分の殻を破れていないことに癇癪を起こしては、布団の中で声を押し殺して泣くことを繰り返している。
投げ捨てたティッシュは、既に鼻紙でいっぱいになっているゴミ箱の縁にあたって床に落ちた。

陽向 未 @himukai_imada
「はい、どうぞ」
 残っていた蜜柑を剥いて、半分にしてあなたに渡す。
「ありがとう」
 ふたりで、森に覆われた都市の残骸を眺めながらそれを食べる。
 1つの食べ物をふたりで分け合うのが難しい時代もあったそうだが、それは今は昔。
 世界が滅びても、こうして誰かと何かを分け合える幸せ。

陽向 未 @himukai_imada
化け物退治は引き付け役とぶっ倒す役に分かれる、いわゆる役割分担制である。
 しかし同時に襲われるのは、想定していなかった。
「どうしよう食べられる!」
「泣いてないで撹乱しなさい!」
 結果、相方がいつも通り逃げ回ったお陰で化け物は二匹とも目を回し、その隙をついて倒せたのだった。

晃ゆみ @kouyumi23
百貨店インフォメーション勤務の私。迷子の女の子のアナウンスをする。
「七分袖の赤いセーターを着た2歳の女の子がママをお待ちです」
恥ずかしそうにママが来た。私は声をかける。
「セーター可愛いですね」
「これ、七分袖じゃないんです。洗濯したら縮んじゃって」
ママの顔が一段と赤くなった…。

イマムラ・コー @imamura_ko
私の名前は分子。わかこと読む。数学者である両親がつけてくれた。母は「私は分母だね」と笑う。父も笑いながら母と一緒に分母で私を支えてくれた。やがて父が亡くなり1/2が1/1となった。そして母も亡くなった後私は結婚しお腹に新たな分子が宿った。今度は私が分母になる。母のような立派な分母に。

藤和 @towa49666
リングノートのリングだけがすごくある。使い終わって捨てるときに、分別のために外したはいいものの、なんとなくもったいなくて捨てられないのだ。困ったなと思いながら、PDFの論文を刷る。刷った論文もどうまとめたものか。ふと目の端にゲージパンチが目に入る。そうだ、このふたつを合わせれば。

やん @yanyanyaaaaa
A「幽霊の婚活が流行ってるらしいよ。」
Bは無視した。
A「分からない事を拒絶するのはよくないよ。」
B「俺が拒絶するのは、分からないんじゃなくて、おまえの話がいつも胡散臭いからだ。」
A「君の世界の話をしてあげてるのに(笑)」

ほたほた(サイトからの投稿)
机の引き出しに何かが引っかかっている。隙間に手を入れて取り出してみると、手のひらほどの分度器だった。。プラスチックが白っぽく古ぼけていた。見ていると小学校の黒板の下にぶら下げられた木の大きな分度器を思い出す。先生はチョークで線をひくためパタっと黒板におくのがかっこよかった。

2月7日

へいた @heita4th
冬の夜、男が囲炉裏の火を見つめていました。ごうごうと吹雪の音がしています。「夜分すいません」声がしました。強盗かもしれない。男は思います。ひょっとしたら雪女かも。戸を開けると小さな狸でした。寒さで毛が逆立っています。入れてやりました。さっきよりほんの少し、部屋が暖かくなりました。

 @Z9hmdBIPGCSspEx
「あと何分?」「30分位だよ」
サドルに跨り思いきりペダルを踏み込む。
母さん。もうすぐ地球が終わるよ。神様がそう言ってた。あの日のごめんねと今日までのありがとうを伝えに行くから、絶対そこにいて。向かい風に負けない強さは母さん譲り。時計の針より早く進んで、もう一度親子になりに行く。

千振 藍晶 @10002riranshou
「馬鹿に分かるように説明してもそもそも馬鹿は説明を聞いていない」それだけ書かれた看板の画像に♡する。今朝作った麦茶を飲もうと職場の冷蔵庫を開けると空になった麦茶ポットがサイドポケットに入ってた。冷えた虚無を片手に扉を閉めると「空の麦茶ポットは出して」の張り紙が虚しく靡いた。

TAKA001 @001TAKA
大切な人の死とか、取り返しのつかない事をやっちまった時にモヤァっと広がるアレは何なんだろう。カラダん中の何処からか生あたたかいのかナイフのような冷たさなのか分からねぇのが駆け巡るだろ。なぁ今まさに俺の全身が総毛立ってアンタの顔が歪んで見えるぜ。どっちかが、あの世に行くんだろうな。

千振 藍晶 @10002riranshou
「物分りが良すぎると後々生きづらいですからこれくらいにしておきましょうか」と博士が言い、母親候補が「出来る限り高めに設定してください」と注文した。「幼少期に親の知能を超えてしまうと家庭内に軋轢が生じやすいですし、人格形成に影響します」と博士が言うと母親候補は眉を顰めて沈黙した。

明日香 @asukahuka
さよならの欠片を集めていた。届かなかったさよなら、言葉にしなかったさよなら。それらをビンに詰めて青い満月の光を充分に浴びせると、紺碧に輝く魔法薬ができあがる。ことさら冷たい風の吹く夜。僕はあなたの墓の前でビンの中身を飲み干し、十年間いえなかった言葉をようやく呟いた。さよなら。

へちゃ @gogoyubari39
温度2.7Kの真空を星間物質を食べ進む
疑似巨大生物、半径100km位の
あらゆる卵、種を真空に暴露されてる器官に保存し
近くの恒星系には早い速度で行ければ、
相対論的に時間が縮むので
巨大生物の寿命には間に合うという計算。
但し、人類の卵は載ってない。
それが人類の最後の分別だったらしい

なみ @goo31Hlz
枯れ葉が一枚、風もないのに地面から舞い上がった。そのうえ空へと向かって飛んでいくものだから、見開いた目をぎゅうっと凝らせば、それは枯れ葉ではなくてスズメだった。あぁあ、いつの間やらこんな、枯れ葉とスズメの見分けもつかないくらいに、視力が悪くなってたんだなあ。

なみ @goo31Hlz
「ぜったい月だよ」「いや分度器だよ」だらだらと言い合っている間にも、夜になっていく。今夜は半月。月と分度器と、果たしてどっちが真の半円だろう。

山尾登 @noboru_yamao
あなたは私のことが、分からなくなったとぼやいた。あの時、私こそと言い返さなかったのは、まだ愛情の欠片があったからだ。無神経で、自己中で、不器用で、分からず屋で、不仲なあなたと、今だに一緒にいる私。赤い糸というのも烏滸がましい夫婦関係。私の方こそ自己中の分からず屋なのかもしれない。

陽向 未 @himukai_imada
分刻みのスケジュールの中、婚約者となってくれたあなたに会う時が楽しみで仕方がない。
 膨大な仕事を今日もきっちり終わらせお決まりの場所のお決まりの時間、鐘がなる時計塔の下で、私達は抱き締め合うのだ。
「会いたかったわ」
「私もよ」
 さぁ、今日はどんな夜にしようか?

いまえだななこ @na2na1ko6
水が絶えず汲み上がり、直径6mの円筒を満たす。音を立て溢れる水は等間隔に空いた穴から出ると、行儀よく水路を通り均一に田へ注ぐ。
農地の水争いを解消したのは、この円筒分水の機能美だった。先人の創った平和を今日もありがたく享受する。

ぼちぼちやりなあ

水音に紛れ、死んだ祖父の声がした。

たつきち @TatsukichiNo3
生まれた時からずっといる街。もう60年も住んでいる。今分かれ道を前にして初めて選ぶ道を行く。いつもは右、今日は左。するとどうだろう。今まで見たことがなかった景色が広がった。通学路、通勤路。商店街へ続く道。複雑に別れている道の同じ道を選んできた。自分はこの街の何割を見てきたのだろう?

陽向 未 @himukai_imada
一分一秒でも長く、あなたといたかった。
「手をつながない?」
 徐に聞いた私に、あなたはうなずいて私の手を握ってくれた。
 愛する友達との、久しぶりのお出かけだったのに。
 互いの温度を分け合うことが出来るのは、あとどれ程なのだろう。
 バスが来て、私は涙を堪えて手を離した。

松浦照葉(サイトからの投稿)
「嫌、離れたくない。一分でも嫌よ。ましてやこの大分から出て行くなんて」「そんな分からないこと言うなよ。分不相応な目立つような事はしないさ」女は大分空港で男にすがりつき大声で叫んでいた。男は警察に追われる身だった。分別の無い大声は男の逮捕につながる分水嶺となった。女は隣で微笑んだ。

晃ゆみ @kouyumi23
百貨店楽器売場勤務の私は今、昇給テストの真っ最中。音楽好きの私は満点を目指すぞ!
しかし『四分音符を1とした場合の二分音符の長さは?』がわからない。う-ん…。あっ!3だ。
翌日、正解は2だと判明。
3は“付点二分音符“だった。
嗚呼!何たることだ。私としたことが。
お点(汚点)がついてしまった!!

へちゃ @gogoyubari39
朝、烏達が分別済のゴミ袋をつつく。生態系が破壊された街、人間の巣。そこで僕は働いて食べ死んでいく。森の中、足元の木の葉。見上げると浮かぶ惑星。40日の命しか残っていない少女、物体のように横たわっている。破られた手紙。頭の上、核爆発。虚ろな目で始発電車に乗り込むモノクロームな僕。

藤和 @towa49666
大分県に単身赴任することになった。これからお世話になる職場にお土産を持って行ったほうがいいのだろうけれど、何を持って行ったら良いのかわからない。いろいろと考えたあげく、お父さんの言葉を思い出す。九州の人にお土産で芋ようかんを持っていったらよろこばれてね。私は一路浅草へと向かった。

冨原睦菜 @kachirinfactory
差し出した手にそっと渡されたのは小さな鈴。はい、お福分け。財布や鍵につけるには音が小さい…今の時代、こんな鈴をつける人はいないな。かすかにチリンと鳴るだけでは猫につけても意味がなさそうだ。違うよ、頭かたいなぁ。この鈴はね、優しい記憶で心を満たすためのもの。眠る前に鳴らしてみてね。

2月6日

牧原加奈 @makihara_kana
『はたしてを使った短文を作れ』
国語の問題。
隣の畑くんの解答をみて驚いた。
『はたしてを使った短文を作れ』と書いてある。
「違うよ畑くん、はたしてを使った短文を作るんだよ」
「『はたしてを使った短文を作れ』は、はたしてを使った短文でしょう?」
うー大分混乱してきた。
○か×か、はたして

すもも(サイトからの投稿)
故郷から桃が届きましてね。お裾分けですが、どうぞ。白い肌の真ん中だけが赤く色づいている。白桃だ。未だその人の手元から離れていないというに、甘い香りが鼻腔をつく。薄いヴェールを一枚脱いだ瑞々しい果肉に歯を突き立てる愉悦を反芻しながら「これはこれは。お福分けをどうも」と目尻を下げた。

ほたほた(サイトからの投稿)
声が大きくて、親分気取りのおばさんが
「仕事が遅いわよ、間違ってるし!」
 とぼくのパソコンをぐいっと覗く。作業に集中していて聞こえないふりをする。
「ちゃっちゃとやってくれないと困るの!」
『ウルセエ、アッチニイケ。」とおでこに文字が表示され、手の甲で隠したがさらにおこられた。

糸井翼 @04200420s
私は1分後の未来がわかる。だから、今から君が言おうとしていることもわかるし、それを言う君がどんなに嬉しそうかも知ってる。でもどれほど私が戸惑ってるか、君はわからないんだろう。私だってなぜこんな気持ちになるかわからないもの。思いをぐるぐるして1分経ったらしい。
「俺、彼女ができたわ」

兎野しっぽ @sippo_usagino
恋人らしい男と歩く幼馴染を見かけた。子どもの頃から一緒に過ごす彼女が、今まで見たことのない表情で笑っている。
男と別れた彼女が僕を見て照れたように手を振ったけど、気づかなかったふりをして立ち去った。今彼女に声をかけてしまったら最後、幼馴染には戻れない。
わずか数分の距離が恨めしい。

矢口 てる @yaguteruss
「別荘の周りには、色とりどりの花が咲きますよ。」「プライベートビーチもあります。」「少し先にはマツタケが採れる山も。」「本を読むにも静かな場所ですが、温泉で雪見酒を楽しむのも乙なものですよ。」ここは不動産屋お勧めの物件。この魅力的な別荘のプレゼンは、各季節が分担して行なっている。

松浦照葉(サイトからの投稿)
三人の強盗が銀行から現金5億円を強奪してきていた。警察の追跡を振り切り倉庫街に逃げ込み、三人の取り分を決めてそれぞれが分け前を持ってバラバラに逃げる予定だ。だが分配する金額で揉め始め仲間割れし始めた。諦めた二人は1億ずつ持って逃げた。残った一人は3億を手にし笑顔とともに捕まった。

あやこあにぃ @ayako_annie
私は家政婦ロボット。家主の娘に禁断の恋をしたら処分されてしまった。スラム街に佇めば、同じく捨てられたロボットが近づいてきて、元気出せよと錆びついた腕を差し伸べ言った。「せめて笑い飛ばそうぜ。これぞホントの身から出た錆ってさ」思わずギシギシ笑う。ようやくここで生きる決心がついた。

松浦照葉(サイトからの投稿)
我が家には十五年以上一緒に暮らしているワンコがいる。とってもかわいい仕草で甘えてくれる。まだまだ元気なので一緒に散歩も行くし食欲もある。私が仕事をリタイヤした後はずっと一緒にいるようになった。そのせいか、私から片時も離れなくなってしまった。どうやら分離不安になってしまったようだ。

リツ @ritsu46390630
僕は君に直接触れることができない。君はとても繊細だから。触れてしまうと君が君でなくなってしまう。そうなったら僕は苦しい。じれったいけどこうするしかないんだ。深夜の実験室で一人。ゼミの発表は明後日。僕は不器用な手でピンセットを使い、分銅を天秤に乗せる。ああ時間がないのにもどかしい。

もよりいと @moyoriito
気づけば分量を間違えていたようだ。しょっぱくて甘くて苦い塊が目の前にある。半年ほど前から少しずつきゅっきゅっと、大事に押し固めてきた。どこから間違えてしまったのか見当もつかない。始まりはもどかしく、次第に甘くなり苦くなった。いま、わたしはこの塊を粉々に砕けるまで叩きたい。

モサク @mosaku_kansui
冬の最後の日。その鳥は、夜も明けきらない時刻に人々めがけてやってきた。ある者は嘴に、ある者はその爪に掴まれ、次々と連れ去られた。命運を分けたのは何だったのか。「氷室に閉じ込められているらしい」賢者の言葉に、恐怖で顔を歪めた人々が手を合わせる。大切な人を、素晴らしい絆をもう一度と。

へちゃ(サイトからの投稿)
音楽でしか伝えられないことがある。
文字でしか伝えられないことがある。
映像でしか伝えられないことがある。
脳と脳を直接接続したとしても
果たしてそれらは
君に正しく伝わるのだろうか。
だけど、僕はそれでも伝えたくてはならない。
それが幻想だと薄々分かっていても。

牧原加奈 @makihara_kana
落ちきった砂時計を見ながら思う
自分の人生は砂時計とおなじ
娘のために身を削り、全てを彼女に注ぎ、空っぽ
娘が嫁いだ今どう生きればいい?
カタン
砂時計がひっくり返された
「また一から注げばいいんだよ」一郎
「そうさ、母さんには僕らがいるよ」二郎
「晩飯まだ?」三郎
‥もう嫌だこんな人生

探偵とホットケーキ(サイトからの投稿)
「分割払い手数料無料」。僕はこの一文を見て、噛みつくような勢いで購入した。僕のような年収200万円を少し超える程度のサラリーマンでは、到底手に入らないものだ、「恋人」だなんて。今の世の中、恋人アンドロイドを持てるのは、高給取りだけで、他はずっと独身。やった、僕も夢の既婚者だ。

明里水也 @m_iya_o
彼女の言い分を信じてはいけないのだとわかっている。もう帰らなくては、自慢のフリルがしおれてしまう。朝から頑張って巻いた髪は、ゆるくとろけてわたしの心みたいだ。彼女を信じたいきもち。だけど土は掘れないし、泥舟にも乗りたくない。わたしは汚れ仕事が嫌いなのだ。さよならと、言えないまま。

明里水也 @m_iya_o
隣の席の彼に恋人ができたそうだ。朴訥として穏やかな人柄の彼は恋人として悪くない人選だろう。真面目で優しい、なのに物足りないなんてひどい言い草だ。どうしてこんなことを思うのかって、彼の恋人が話している声を聞いたから。憤るほどにはどちらとも親しくはない。遊び半分、なんだろうなきっと。

明日香 @asukahuka
女は恋人にお守りを渡した。自分のを二つに分けて、片方を託したのだ。三日後、恋人の船は嵐で砕けた。二年後、女の島は海に沈んだ。十年後、海を漂っていた二つのお守りは再び出会い、カチリとはまった。百年後、浜に埋もれたお守りを少女が拾い太陽にかざした。色とりどりの光が少女の笑顔を照らす。

久保田毒虫 @dokumu44
バリ島で宇宙人にさらわれた、「あなた方の文明についていろいろと知りたいのです。ご協力をお願いします。普段は何をされているのですか」「何をって……学校へ行く人もいれば仕事に行く人もいる。家事をしている人もいるよ。誰も皆一分一秒、一生懸命生きてるんだ。凄いだろ? ざまあみろ……」

山尾登 @noboru_yamao
部長から企画書を突き返され、コメントを受けた。このプロジェクトの成否の分水嶺が、ボクには見えてないとか。でもその真意が、皆目分からない。分からない時には、分けることで大抵のことは分かると、部長に教わったことがある。事象の細分化が解決への近道だとか。でも、その細分方法が分からない。

イマムラ・コー @imamura_ko
「朝9時に渋谷ハチ公前に集合。原宿、表参道を散策した後早めのランチにしましょう。その後私は見たい服があるので退屈でしょうから一旦別行動。14時にいつもの円山町のラブホ前に集合、120分過ごした後渋谷駅に移動して解散。こんな感じでいいですか」彼女から連絡が来たがこんなデートプランは嫌だ。

小鳥遊 @ritsu_t25
気が付くと僕達の部屋にいた。君は僕の写真を見つめて泣いていて、僕は君に声をかける事も、触れる事も、泣いている君を抱きしめる事すらも出来ずにいる。君を愛しているのに、悲しませたく無いのに。まだ若い君を遺して先に逝ってごめんね。大好きだよ。君と僕を分け隔てるこの世界がとても悲しいよ。

松浦照葉(サイトからの投稿)
死期を悟っている一人の老人がいた。老人は財産を三人の子供達に平等に分け与えたいと考え、遺言書を金庫に入れた。「これで死んでも喧嘩することなく財産を分けてくれるだろう」その時が訪れた。金庫は壁の中に隠されていた。遺言書は誰にも見つけられることなく、財産分与を巡り骨肉の争いになった。

いまえだななこ @na2na1ko6
分娩室にデスメタルが響く。好きな曲の中でも大人しめを選んだなと思いながら彼女の手を握る。
助産師さんが「頭出てる、もうちょっと!」と励ます声と、妻の必死で息む声と、デスヴォイス。啜り泣くしかできない僕。そこに突如命の叫びが加わる。
君の声はアリッサに勝ってた。
いつか話そうと思う。

アスパラ山脈 @yamaasupara
月並みな言葉だが人の一生には、その後の人生を変えるターニングポイントがいくつかある。試験であったり、出会いであったり、目の前を歩く猫だったりする。さてここに一つのロープと鋏がある。目の前にあるのは僕の分かれ目か、はたまた下にいる彼の分かれ目か。

水沢ながる @mizunagaru
恋人が二人に分裂してしまった。
僕のことを好きな彼女と、僕のことが嫌いな彼女。他は同じものが好きなのに、僕への感情だけが違う。
嫌いな方の彼女は僕の元を去ってしまい、好きな方の彼女が僕のそばにいる。
……でも、思うんだ。どうやら僕が好きなのは、僕を嫌いな方の彼女なんじゃないかって。

巻柄ぽん @iNFEuOxmHtIg2gV
「私の心を細分化して下さい」
どんなものでも細かく分けることができる仕分け屋になって数年。本当の気持ちがわからないから助けて欲しいと依頼が絶えない。生きるために自分に嘘をつき過ぎて把握できなくなるとは、人間は不器用だ。かく言う自身も、本音の細分化は間に合っていない。

2月5日

五十嵐彪太 @tugihagi_gourd
恋人の舌は深く裂けている。「ひいじいちゃんが同じ舌だったんだって。会ったことないけど」「もし会えたらどうする?」と問う。分かれた舌をあべこべに動かしながら「あっかんべー!で挨拶する!」と元気のよい答えが返ってきた。あっかんべーのままの顔が近づいてくる。今はまだ、くすぐったいだけ。

 @AoinoHanataba
友人が森に入って行く姿を見た。確か彼処は猫が沢山いるという噂の森だ。猫に会いに行ったのか。俺も行こう。俺は森の中に入った。友人は、開けた場所で猫に囲まれていた。どの猫も尻尾が二つに分かれている。ふと友人が此方を振り返ると悪戯に笑った。

「ナイショ」
 友人の頭に猫耳が生えていた。

大殿篭 猫之介 (おおとのごもりねこのすけ) @ponkotsu_mt
学校からの帰り道、友達二人が使い捨てカイロを互いの頬にあてながらはしゃいでいる。数歩後ろで私は両手をポケットに入れたまま、首をすくめ意味もなく笑う。その白い発熱体を羨ましがってはいけない。
家に帰ると母親は私に温もりを分け与えようとするが、包みこむ手のひらは私より更に冷たかった。

東方 健太郎 @thethomas3
あの人は、どう思うだろうか。私は、もうかれこれ、聞こえない声を聞いている。有識者の意見では、精神の分裂する病に侵されている、とのこと。精神医学では、もうわたしを解析することなどできようもない。それすらも、私の思い込みである。簡単に症例に分類され、診断される。それだけの人生である。

せらひかり @hswelt
貴方にあいた穴を塞ぐ。ぴったり閉じると、貴方は息ができずに苦しむから、少しだけ開ける。空気が出入りして、貴方は春の風を吸ってくしゃみをする。この作業は分不相応だと分かっていた。自分で埋めないと、永遠に何かを引きずりこむ。それでも応急処置で塞げば、貴方は美しい声で喜びを伝えるのだ。

イマムラ・コー @imamura_ko
付き合い始めた頃から何でもかんでも「半分こしよう」と言うのが彼女の口癖だった。デートで食事に行くと食べ物も飲み物も全部半分こした。結婚した後の生活費も全部半分こだ。やがて子供ができた。彼女はこれも半分こしようと言い、2つに切って首から上は彼女、首から下は僕というふうに半分こした。

文庫 太郎 @Fzowx_x_o
分をわきまえろ。特にどんな状況で誰から放たれた言葉なのかすら遠い霧の中だ。それでも聴こえる自分のプライドが折れた音。私と同じ土俵にたてたものではない、格が違う。君はこの一言で片付く言葉を持ち合わせているのに自分にはこの気持ちの言葉が十分にない。今日も思う。ああ、いつでも空は青い。

温水空 @soranukumizu
「大変!あと一分しかない!」
厨房の中は大騒ぎだった。「麺を茹でろ!」「肉を刻め!」小人たちは、大忙し。
ピピ―!
一分後、タイマーが鳴る。
「いただきます!」
私は、小人たちの頑張りも知らず、カップラーメンを啜った。

かぼすサワー @BDJklv0wXT3eC6y
呼び鈴の音が聞こえ、ドアを押し開ける。正体は分かっていた。幸せを運ぶ配達員。お金を出せば買える物ではなく、今回は抽選の結果、無事購入出来た限定カラーのスニーカー。
「あとこれも」
スニーカーにハマったのは元彼の影響。手渡されたそれにその名前。しかもこれは結婚式の招待状。なんなの。

黒野綯路 @High_Delight
ミントは人類に似ている。ひとたび根を下ろせば他種を押しのけながら領分を拡大し続け、抜かれようが枯れ果てようが、根が残ってさえいれば再起する。雑草魂とはよく言ったものだ。などと、益体もない考えを弄んでいる場合ではない。現実逃避もそこそこに、私は庭を侵略するミントどもに立ち向かった。

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