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二月の星々(140字小説コンテスト第3期)応募作 part1

part1 part2 part3 part4 part5 結果発表

月ごとに定められた文字を使った140字小説コンテスト。

今月の文字は「分」。

2月28日までご応募受付中です!
(応募方法や賞品、過去のコンテストなどは下記をご覧ください)

受賞作の速報はnoteやTwitterでお伝えするほか、星々マガジンをフォローいただくと更新のお知らせが通知されます。

応募作(2月1日〜4日)

投稿日時が新しいものから表示されます。

2月4日

山尾登 @noboru_yamao
不倫関係を二十年近く続けている。別れ話が出るどころか、関係がますます夫婦以上に深まる。その訳が分かる今日この頃。生活を共にしないことで、常に新鮮な男女関係が維持できるからだ。逆に言えば、その新鮮さを夫婦関係に導入すれば解決?でも我が夫婦は家族であり、すでに男女関係は消滅している。

井ノ口人 @matamarukuma
「熱いから気をつけて。半分こ、ね」そう言って、あなたは二つに割った大判焼きを兄と僕に渡してくれましたね。「お母さんはいらないの?」僕らはそう問いかけもせず、食べる事に夢中でした。あなたも好きだった大判焼き。今日もお供えします。たくさんいただいた愛情にもっと早く気がつくべきでした。

久保田毒虫 @dokumu44
寒い月夜の晩、俺は猫を拾った。家に入れる。湿った身体をドライヤーで乾かす。ミルクを飲ませる。ニャーと鳴く。良かった。元気になった。いつのまにか俺は寝ていた。猫と一緒に。朝目が覚める。会社へ行く。なんだか気分が良い。何故だろう。猫かな。きっとそうだ。一分一秒でも早く帰るね。

リマウチ @rIMAUCHI0420
分別のつかない子供だった。道路へ石ころを蹴飛ばしたり、カエルを入れたペットボトルを振り回してよく笑っていた。それが日常だったのだ。ある日悪ふざけで友達を沼へ突き落とした。友達は沼へ深く深く沈んでいく。私は急に怖くなって逃げ出してしまった。あの時が初めての分別だったのかもしれない。

にちと @soudasa92chi10
「あと何分!?」カップ麺ができるまでの3分が待てない貴方。「あと何分⁉」貴方が寝言でそう言ったのは、模試に忙しい受験の頃。貴方との二人暮らしは分刻みのスケジュール。明日、貴方は家を出る。私はやっと解放される。貴方が勝手に呼んだ救急車が着くまで「あと何分……」貴方と過ごす時間は、あと

チアントレン @chianthrene
開いた紙パックを真新しい水で洗う。この水道水はもちろん飲めるし、加工の手間はパックに詰まっていた生絞りのジュースに引けを取らないだろうし、正直僕は水の方が美味しくて好きだ。別に風呂の残り湯で濯いでも分別作業の質は同じかもしれないが、その手間は惜しむ。ジュースを選ぶ手間は好むのに。

酒匂晴比古 @sakoh_haruhiko
「君は僕の分身だ」鏡の中の僕が話し掛けてきた。「おかしなことを。君こそ僕の分身だ」僕は反論した。鏡の中の僕がニヤリ、唇を歪めた。「証拠はあるのか?」「ない。ただ」僕は右手を伸ばし、それとそっくり同じ形をした、鏡の中の僕の左手を掴んだ。「何をする!」僕は鏡の中に押し入り、彼は消滅。

イマムラ・コー @imamura_ko
今日は私達アンドロイドにとって大事な点検の日だ。体をすべて分解され異常がないか調べられた。幸いにも問題はなく、綺麗に元に戻されたはずだった。しかし違和感があった。乳房が右左逆だ。大きさや形は全く同じでも違いがわかる。なぜなら彼の唇や手の感触が右と左、それぞれに残っているのだから。

想田翠 @shitatamerusoda
女性は分類好きで整理整頓が得意な人が多い。
「同じ区分でまとめて、ラベルを貼っておけば安心」
日用品は手前に。使用頻度は低いが、ブランド品は捨てずにとっておく。

独身か既婚か、子持ちか子無しか、専業主婦か兼業主婦か…価値観を細分化。
ラベルだけに捉われていると中身を見落としますよ。

想田翠 @shitatamerusoda
結婚する前、貴方はよく手紙をくれた。書き損じが多い貴方はボールペンが苦手で、小学生みたいに鉛筆で。消しゴムでできた皺に思考の跡が残されていて、好きだった。
今は電子メールで、手紙というより連絡事項。味気なく…感じないかな。
何日の何時何分に貴方の頭の中に私が居た証拠みたいで、好き。

大殿篭 猫之介 (おおとのごもりねこのすけ) @ponkotsu_mt
熱された舗装に堕ちたアイスクリームが輪郭を失っていく。関係性が断ち切られ、分類不能な物質になる。
お兄ちゃんが分けてくれる冷たい甘味を喉の奥に溜飲するたび、悲しみが波のように打ち寄せて涙が出ちゃう。弟くんの気持ちもまた堕ちたアイスクリームだった。
働き蟻たちが宝物に群がりはじめる。

黒野綯路 @High_Delight
分度器と顕微鏡が合体したような器具を、そっと持ち上げる。これが六分儀という名で、昔船乗りが自分たちの位置を知るために用いたものだと、教えてくれたのは祖父だった。海の仕事に興味を抱いたのはそれからだ。あの日が、私の航海のはじまりだった。六分儀を覗き込む。先達の背中は、まだまだ遠い。

2月3日

春島傑郎 @KeturoHarushima
貴族とは名ばかりの粗暴な連中に、賓客として迎えられた。
なんでも邪気を祓う儀式だそうだ。
奴隷を足蹴に、ご満悦な様子で豆を投げ、彼らは騒いでいる。
私は祓うのではなく、呼び寄せる術を用いた。
類は友を呼ぶと言う。
“節”度の“分”からぬお前たちには、丁度良い。

巻柄ぽん @iNFEuOxmHtIg2gV
全ての物質は分子レベルで振動しているらしい。振動が見えるとしたら、目の前のこの人はどう映っているのだろう。座り込んで肩を震わせ、時おり鼻をすする音が聞こえる。
背中合わせに座り込む。自分の振動と熱が伝わるようにぴったりとくっつく。どうかまた貴方の笑顔が見られますように。

もよりいと @moyoriito
あと階段を登れば改札、というところで時計も指輪もイヤホンも忘れたことに気がついた。今頃、忘れ物たちは玄関の飾り棚の上でいい子にお留守番しているだろう。電車に乗り、リュックの奥底に眠っていた分厚い本を取り出して膝に置いてみる。一呼吸おいて1ページ目を開く。『会うの 久しぶりね』

さく @saku_sakura394
運命的に出会い恋に落ち、結婚し子を産み育てあげる。再び恋人同士のように夫婦仲良く慈しみ日々を送る。それが普通だと思っていたのにどこの分岐点で違う道を選んでしまったのだろう。今日、昼の社食で隣りに座った男性が同じ文庫本を読んでいた。同期の独身男性だった。分岐点は、今かもしれない。

 @AoinoHanataba
節分の日、外で豆を投げようとしたが、寒さに震えている小さな鬼が立っていた。
「一晩泊めさせろ」
 僕は迷ったけど、家に招き入れた。一晩明けたら、鬼の姿は何処にもいなかった。変わりに手紙が置いてあった。
 
『お人好し』
 ただそれだけ書いてあった。
 ……まだ鬼に成りきれてないんだね。

葱之葉さら(サイトからの投稿)
 十年前の高校の卒業式、いつも一緒に帰っていたあの子に思いを伝えなかった。先日、彼女が結婚するという知らせがあった。式への招待状も届いた。分水嶺を流れ落ちた水が元に戻ることはない。私は招待状を何度も破いて捨てた。式に私の姿はなく、携帯電話には彼女からの不在着信が一件あった。

桐島ちゃん(サイトからの投稿)
――「言語が世界を分節するんだって」
ある何でもない休日の午後。怠惰な私の隣。物知りな貴方は、辞書を閉じながら、無邪気に私の頬を撫でた。

最近映画化が決まった恋愛小説。まだ折り目の乏しいページに栞を差し込み、立ち上がる。
きっと貴方よりもぼやけた視界の中、明日も暮らしていく。

永津わか @nagatsu21_26
花が枯れてしまった。聞くに水のやり過ぎらしい。ため息をついて寝転がるとだんだん意識がぼやけてーーぴちょん。目を覚ますと、鉢の中が海になっていた。鮫や鰻、蛸に蟹。皮や層を啄む者、管を分解する者。腐った根を真ん中にして新しい世界が生まれている。じっと見つめる私に群集はぷかぷか笑った。

葱之葉さら(サイトからの投稿)
就活の面接帰りにスーパーに寄った。鮮魚売場に並べられた魚が、濁りきった眼で私に買ってもらおうと目くばせする。だが私は買い物かごに入れなかった。献立のレシピに合わなかったからだ。そいつはこのまま誰にも買われず腐るかもしれない。帰宅して、豚肉を包丁で二分したとき、私は魚だ、と思った。

雨琴 @ukin66
節分らしいこと何かしてやりたかったから、歳の数だけ豆を食べよう。お前はいくつ食べるのかと思ったら、まだ生後半年経っていないのか。一つも食べられないじゃん。膝に抱いた温もりが「にゃあ」と鳴いた。こんなに鼓動が速いなんてもったいないよ。もっとゆっくり生きていきなよ。おいていかないで。

玄冬 @takeyabu69
久方の光回線分け入って、春夜の喧騒胸を震わす。エンジニアは無造作に束ねられたケーブルを見て愕然とした。その大蛇とおぼしきうねりと格闘し時間は過ぎていくばかりだ。胸ポケットのスマホは催促の通知で震えている。散々だ。エンジニアは虚空を見上げ、そこに先達の啓示を発見する。サンガツ!

滴一滴 @teki1teki
学校のトイレで鏡を覗くと、前髪の分け目から、小さな植物の根が生えていることに気がついた。脳に根を張って頭から花が咲く、なら分かるけど、なぜ脳から外? 逆じゃない? という疑問に、担任の先生は「現実を養分として吸い、想像の世界に花を咲かせるから、それで正しいよ」と答えた。成る程ね。

怪夜 @kaiyo0813
「廃病院なんて嫌だぜ。10分、いいや5分。5分だけだ」金の亡者と化した男から、嘗ての強い霊力は感じない。だが、私にはそれで充分だった。「もう少し先を歩いてちょうだい」渋る男を私は好物をちらつかせて誘導する。男が薄暗い角に姿を消した瞬間だった。情けない悲鳴がひつこく廊下に木霊した。

春島傑郎 @KeturoHarushima
度胸のない私は、自身の代わりに影を細かく切り分けた。
もぞもぞと動いて人の形になった彼らは、暫く私を見上げた後、どこかへ行ってしまった。

その晩、枕元に亡き彼女の貌が現れた。
私の分身達も彼女が恋しいのかと、その頭を撫で付けて、眠りについた。

翌朝、追従する影に、ポツリと詫びた。

若林明良(サイトからの投稿)
タカシの一家が来てるのか。……ジングルベルなんか歌うな!下手糞!……ドタバタうるせぇクソガキがぁ……てか、いつまでいるんだ!?我慢できねえ。叫ぼうとしたその時、ドアがノックされた。「おにいちゃんの分、ここに置いとくね」。足音が去ってからドアを開けた。ケーキにはサンタが乗っていた。

若林明良(サイトからの投稿)
上流水を泥ごと遠心分離器にかけ、沈殿物を顕微鏡で観察する。めぼしい貴金属はないか。友人の作業場を借りて行う鉱物コレクターの楽しみ。長い夕日が差し込む。飯も食わずひたすら操作し26度目。遠心力により金属板が割れ、あらわになった断面。そこにはモナリザそっくりの女が俺をみて笑っていた。

イマムラ・コー @imamura_ko
節分の日。彼女が僕に甘えてくる。「ねえ、キスして。だって今日は接吻の日でしょ?」見せたことのない艶かしい声、そして妖しげな表情。「今日は2023年2月3日。2、3、にぃ、さん…そしてあなたは私の…実の兄さん…」その誘惑に抗えず、僕は妹と唇を重ねた。節分の日は僕たち兄妹の接吻の日となった。

黒野綯路 @High_Delight
今日は近所の山に住んでる鬼ぃさんをおうちにごしょうたいしました。鬼は外なんて言いません。外は寒いです。一緒におこたに入って納豆巻きを食べました。ぼくも巻くの手伝ったんだよって言ったら、ほめてくれました。うれしい。そのあとみんなで桃鉄しました。今年の節分も、とっても楽しかったです。

さく @saku_sakura394
思い出を分別する。これはのこす。これは捨てる。分けていくのは今までの彼氏達にもらったもの。「明日結婚するんだから『捨てる』の一択でしょ」呆れ顔で妹が言う。…そんなことないんだよ。その選択が正しいのかわからない。夫になる人には、ずっと付き合っている彼女がいる。私にも、いるけれど。

2月2日

うたがわきしみ @arai_chi2
流れ星だけで作られたという星に辿り着いた。思いのほか青くにじんだ星だ。零れ落ちた空の涙で出来た星とも言われているらしい。
ここには宇宙の流れ者達が長い間降ろすに降ろせなかった傷を埋めにやって来る。その傷を養分にして育った樹が青く輝き、星の道を照らして次なる巡礼者を呼び寄せるのだ。

うたがわきしみ @arai_chi2
その日、別れた妻が十歳になる娘を連れてきた。会うのは二年ぶりだ。娘の好きなケーキを駅前で買い二人で誕生日を祝った。甘さ控えめの上品なケーキを器用に切り分け、大胆に頬張る娘。感想を求めると娘は小さな喉仏をこくりと弾ませ、私の目をまっすぐ見据えながらこう答えた。
「罪と罰の味がする」

うたがわきしみ @arai_chi2
ふいに野性に返り咲いた犬歯が濃い口の表面をがっと穿つと氷砕船の如き荒々しさで容赦なく分け入り、あられもない香ばしき大陸を粉々に打ち砕いた。睦み合う謂れを失った醤油色の瓦礫が未だ独立性を懇願しながらも後続の歯牙共に矢継ぎ早に噛み砕かれ、憐れな藻屑と化していく。歯が煎餅を襲ったのだ。

うたがわきしみ @arai_chi2
分家の肩身の狭さを生涯背負ったのだと思う。何の権限も与えられず、さりとて自由もない人生。父はそれを全うした。

庭先を眺めながら、よく降るな、と父が言った。
降りますね、と僕が答えた。
それきり会話は続かなかった。
ただ打ちつける雨音に耳をすまし、雨の匂いをかいだ。
それで十分だった。

巻柄ぽん @iNFEuOxmHtIg2gV
分度器は角度を測る器具だ。でも家には分度器をもってしても測れないものがある。慎重に、寸分の狂いも許されない気持ちで望む。しかもやり方を間違えると距離を置いてはからせてくれなくなる難敵だ。
「今日はご機嫌斜め?」
「実は……」
顔に出ない彼の心の角度をはかることが出来るのは私だけ。

TAKA001 @001TAKA
1分が60秒で60分が1時間である事を理解できなくて、コンガラガッタ頭の中が痒くて痒くて喜怒哀楽がメマグルシク変わる先生の表情を見ています。
ゴメンナサイ、先生の時間を奪っているのは気付いています。でも1日が60時間ではなく24時間なのかが、私はフシギに思って壁掛時計の秒針を目で追うのです。

英令目野ピイ @lmnopdesu
「分身の術が使えたらな」スマホを見ながら妻が漏らした。その時は何とも思わなかったが、後々、気になってきた。あいつ、まさか分身して浮気でもしようとしているんじゃないか。一度取り憑いた疑念は消え去ってくれず、妻のスマホを盗み見てしまった。検索履歴を見て驚いた。【夫 殺害 アリバイ工作】

犬塚我区 @kanpanella
今夜も、たぶん私は死ぬだろう。消しゴムを強くかけた帳面や、書き損じた原稿用紙の様に。くしゃりと先生に殺されるのだ。先生が悪い訳じゃなくて、私が失敗作だから殺される。何度も何度も。先生は、懸命に私の物語を綴ってくれているから。激痛を堪えて、私は微笑む。「次はどこを分断しますか?」

犬塚我区 @kanpanella
不意にアリスが恋しくなった。アリス、と呟いた声は、思ったより掠れて、風呂場で微かに、痛いくらいに反響した。だから俺は、俺が悲しみに暮れているんだと、気付いた。何故忘れていたんだろう。俺が、彼女を綴らねば。早く、早く書き留めなければ。濡れ鼠のまま俺は急ぐ。ここが、物語の分かれ道。

淀川大 @yodo_hiro
私は分かれた彼の寝顔をじっと見て、その瞼の上をそっとなでた。
眉にかかる前髪を指先で梳き、綺麗に整えてあげる。
なんて可愛らしい寝顔。
思わず笑んだ私は、彼の口元から涎をすくい取ると、彼の唇に自分の唇を合わせた。

嗚呼、いつも一緒にいたい。

だから彼の首を分けたの、重い胴体から。

うたがわきしみ @arai_chi2
またモンブラン味の玄関だった。
「そこで溶けてろ」
そう言い捨てられて、気泡がひとつ気絶した。

クリームみたいな人生を夢見ていたと思う。だってマーブル模様は分かちがたい。家族みたいに。

絶望するケーキの名前はホイップ?
それともイソップ?

氷のおむすびを頬張って涙を見せない誕生日。

淀川大 @yodo_hiro
自分時。侍と町人と下人が揉めている。
「士分の身なら、それで十分では」
「自分勝手な。お主は分限者であろう。按分するのが筋じゃ」
「山分けでしょ。こっちは親分の使いだ。分けねえなら、分捕るぞ!」
 三人は分別なくそれを奪い合う。
 御多分に洩れず、羊羹は四分五裂に千切れ地面に落ちた。

橘 静樹 @chiasunroof
分別のない男のせいで会議が紛糾している。フンフンと鼻息の荒いその男は、いつ噴火してもおかしくない雰囲気だ。
ハトに餌をあげたい男vsフン害に悩む住民。
男が憤慨したためさらに会議は紛糾し、12分休憩となった。
もう全員が、ふぅん、と鼻からため息をついている。不運、というより他はない。

 @tatami_tatami_m
分け入っても分け入っても青すぎる山だった。全てにまるで「不思議の国のアリス」みたいにペンキがぶちまけられていた。草も木も土も真っ青(カラーコード#0000FF)だった。全部青色なので物体の境目がよくよく目を凝らさずには認識できない。だからつまづいたり木にぶつかったりして血まみれだった。

牧原加奈 @makihara_kana
彼氏が熱を出したらしい
お粥をもっていこう
鍋の蓋を開けると、小さな鍋奉行がいた
「何を作るのじゃ」
「お粥を」
「馬鹿者! 鍋を作れ」
「ははー」
私は二人分の鍋を作り、彼氏の家に持っていった。
ん? 何で玄関にハイヒール?
お奉行、お沙汰は?
アウトじゃ!!
私は彼氏に鍋を投げつけた

りみっと(サイトからの投稿)
「あー、なんで分数の割り算する時、ひっくり返して掛け算するんだろう?意味わかんねー」教わった気はするけれど、正直理屈ではなく手順として身につけた感じだ。「でも、約分していつの間にか分母とか簡単な数字になった時、マジ最高の気分になるし」そんな訳で分数の計算は、意外と楽しいし好きだ。

モサク @mosaku_kansui
目の前で、白肌が水をはじいている。ころころとこぼれ落ちる滴に「若さが素晴らしいのは、その自覚がないからだろう」と考えた。与えられるものを、すべて吸収しようとする瑞々しい肢体。私は妬ましい気持ちを押しこめ、二股に分かれたそれに包丁をいれる。「さあ、今日のおでんは美味しくできそうね」

牧原加奈 @makihara_kana
「鬼は外 福はうち」
妻が節分の豆まきをしている。
競馬新聞を見ながら横目で見ていると、
足がムズムズしてきた。
「鬼は外」
何だ? 足が勝手に動き、庭に放りだされた。‥家に入れない
妻がガラス越しに冷たく言った。
「鬼さん博打やめる?」
「‥やめ、ます」
そう誓わされた節分の夜のお話

今村スイ @tsuduru_0716
りんごを山ほど頂いたら、まずそのまま。次はアップルパイ、その次はジャムに。皮はゴミ箱ではなく、畑の堆肥にと。まったくもって、母の料理には余分というものがない。ジャムの瓶詰め作業を手伝いながら、私は窓の外を見て微笑む。たぬきたちがりんごの皮を食べに来た。里山にももうすぐ、春が来る。

牧原加奈 @makihara_kana
「鬼は外 福はうち」
私は泣きながら節分の豆をまいた
失業し、恋人にはフラれ、散々な一年だった
今年こそは幸せになりたいっ!
『ピンポーン』
扉を開くといつもの配達のお兄さんが立っていた
「あれ? なんか呼ばれた気がして」
頭をかく仕草が可愛い
「お茶でもどう?」
私は福を招き入れた

藤和 @towa49666
バニラアイスを買ってきた。小さなカップに入ったちょっといいやつだ。これを恋人と半分ずつに分けて、メロンソーダに浮かべる。さくらんぼがないから申し訳程度にみかんなんかを添えてみて、こたつに入ってふたりで食べる。とってもあったかくておいしい夜中の悪いこと。たまにはこんなのもいいよね。

はぼちゆり @habochiyuri0202
「アイタタタ…」頭痛と喉の渇き、二日酔いだ。「昨夜は…ダメだ、覚えてない」散乱した部屋。フラフラとなんとか台所へ辿り着き、水を飲む。すると幾分記憶が戻った。「そうだ、昨日は彼女と呑んで…」そこで血を流して倒れている女が目に入った。「これは、もう水を飲まない方がいいな。いや、酒か」

MOTOM(サイトからの投稿)
 また女子アナウンサーが『玉の輿』らしい。結婚するのは簡単だけど、やめるのは財産分与とか大変だよな。R国のように戦争するのは簡単だけど、やめるのは領土分配とか賠償金とか大問題。結婚と戦争は実によく似ている。原稿を読み始めた女子アナ、戦死者の名前で突然泣き出してしまった。

MOTOM(サイトからの投稿)
 学生時代、結婚して専業主婦になり、夫の海外赴任に付いていくのが夢でした。しかし、ノーベル賞作家の『分断国家』を読んで、自分の足で生きることを学びました。自分の中にある力と美貌を無駄にせず、夢を実現するために努力すべきだと気づきました。誰から何と言われようと玉の輿は狙いません。

彩田青(サイトからの投稿)
「カフェオレ熱めでお願いします。」「めずらしいですね、猫舌でいつもぬるめにしてるのに。」「いや、今日寒いじゃないですか。」「分かります。寒いですよね。」本当によく見てる、私、いやお客さん、を。少しでもあなたと同じ空間にいたいからなんて言えるわけなくて冬のせいにする

彩田青(サイトからの投稿)
熱めにしたコーヒー1杯だけでもう何十分滞在してる?何をやってるんだと自分に呆れながら、バレないようにレジで接客をしているあなたを見ている。アクリル板越しに、あなたと目が合った。笑って手を振ってくれるあなたに、私も笑い返せばいいのに、なぜだか泣きそうになってしまって、目を泳がせた。

さちこ(サイトからの投稿)
美人ママとイケメンパパから産まれた私は、どちらにも似ていない。
本当に二人の子なのだろうか。遺伝子という物は、何処で何をどう分けるのか。
ある日ママが目を腫らしながら
「整形した所が痛むの」バツが悪そうに言ってきた。
え?だから親子で似てないのか。驚きと共に腑に落ちた。

黒野綯路 @High_Delight
七三分け一択と語る、昭和に魂を置いてきた男、父。あなたはセンター分けのほうが似合うと熱弁する、夫に恋する乙女、母。四十過ぎても仲良しなのは結構だが、そろそろ時間を気にしてほしい。ここは娘の私が勝敗を決めてあげよう。
「オールバックが一番似合うと思う」
引き分け。いってらっしゃい。

pokazo @pokapoka_pokazo
君とは身分が違う。己は士族の長男として育った。しかしながら君だけが、己の草花にのみ愛を注ぐことを知っている。父に隠れ書に学んだが、ついぞ君の知識には敵わなかった。ただ、この墓に並ぶ花たちの名を呼ぶことは出来よう。君ではない者と結ぶ前に命を散らせたことを、悔いる理由がないのである。

さく @saku_sakura394
俺の友達は頭がいい。「教科書読んでるだけ」本当にそうらしい。教科書は1回読めば分かると言う。だけどクラスメイトの名前は覚えない。「あれ誰だ?」何回も聞いてくる。なのに俺の幼馴染の名前はすぐにでてきた。「お前とよく話してる浅見さんだろ?」…あいつのチョコの行方が急に気になりだす。

さく @saku_sakura394
学年10位以内の彼。中の上がせいぜいの私とは頭の身分が違う。休み時間も読書か居眠りで「近寄るなオーラ」を纏い話しかけることもできない。けれど幸運にも私の幼馴染が彼の唯一の友達。そのツテで彼にチョコを渡したい。「俺にもチョコくれ」…急に言わないで。『チョコ苦手』昔私に言ったくせに。

今村スイ @tsuduru_0716
彼女は、一人暮らしの部屋にいくつものカップを持っている。紅茶用、コーヒー用、ホットミルク用。ひとつのマグカップでいいのにと私が言うと、なんだか味が違う気がして、と彼女は首を傾げた。ほら、あなたの分も作ったから。苦笑いして私は、ココアを飲むための、ぽってりしたマグカップを受け取る。

玄冬 @takeyabu69
驟雨が止んで鳥の声が遠くから聞こえる。一台の空色のバンに乗った男は、漆黒のカードを手渡すと鳥使いと名乗った。葬礼に白鳩を飛ばし、思慮分別ある顔を喪主の耳元に近づけて囁く。するとハッとして誰もが、男と一羽の鳥を従えて故人のもとを訪れる。「鸚鵡返し」死者の言葉を紡ぎ代弁し羽ばたく心。

2月1日

山尾登 @noboru_yamao
部屋が片付いていないと機嫌が悪くなる妻の性分。結婚当初は、痘痕もエクボと愛情で丸め込んできた私なのに。分陰を惜しむ心の狭き了見の私に、今ではいい顔をしない妻。分別盛りのこの齢になっても、お互い様だねと許し合えないなんて。清々しい朝だというのに、離婚を考える自分が、分からなくなる。

メイファマオ @molmol299
砂時計が怖い。
砂の落ちる速度は時の流れ、凄く早いから。
夫は仕事中毒。
一緒にいられるのは一緒に眠ってる間だけ。
分刻みの予定表に私との時間は減って最早お婆さんよ?と鼻を抓むと夫が唐突に起きて『暇人になるぞ!』と叫んだ。
今更?と囁くと夫が久々に私を見た。
『老けたな』
殴るわよ?

久保田毒虫 @dokumu44
「次の方どうぞ」私は部屋に入る。「おいくつですか」「28です」「ご結婚は?」「独身です」初老の男は私に延々と質問を続けた。40分が経った。「最後の質問です。あなたは何故生きるのですか?」何故生きる……? 何故だろう。「兎角誰かを幸せにする為ですかね」そんなところだろう、人生は。

mm @Mm41897717Mm
ルービックキューブは一度も解けたことはないがデザインに惹かれた。一捻り一捻り毎に様相を変える面。それは分かり合えなかったあいつの複雑な性格を思わせた。あれは一生かけて解いていく、解けない可能性もあるパズルだったんだ。ゆっくり時間をかけよう。そう決心した瞬間カチャリと全面が揃った。

mm @Mm41897717Mm
淡々と日々の課題をこなし、仕事を金を稼ぐためと割り切った。それが周囲からは気に入られなかった。彼らは作業に託けてお喋りし、実質遊びに来ていた。仕事外に愉しみを見出していた涼太は集中し早めに終わらせたい。終わらせたくない人々の間では分が悪い。自己の時間により一層のめり込んでいった。

 @tatami_tatami_m
三角柱の形である分光器から緑や紫や黄色の光が放たれている。それを子供たちが取り囲み、見つめている(2つの目×30人)。教室の後ろには水槽があって中でザリガニがじっとしている(真上から蛍光灯の光)。ザリガニの殻は模型のように赤くゴツゴツしている。子供が教室の電気を点け、模型は隠れる。

mm @Mm41897717Mm
第二水晶王国の探検家、研究者、好事家たちが世界を巡り作り上げたギャラリー兼ラボラトリーは収蔵品同士が美しく分類され、響き合う森羅万象の音楽を奏でていた。訪れるものには沢山の好奇心の種が生じた。その種は世界の至る所で芽を出し、さらに新たな発見と未知への情熱を掻き立てたのであった。

 @AoinoHanataba
魂と身体が分離した。俺の身体が目の前で横たわっている。早く戻らないと、あの世に行くことになる。身体に近寄ると、ふいにそれは起き上がった。なんでだ? まだ俺は中に入ってないぞ。混乱する俺に、身体は歓喜の声を上げた。

「自害して良かった! おかげで奪われていた元の身体に戻ったぞ!」

mm @Mm41897717Mm
「ごめんあと10分遅れる。」
連絡が来た。待ち合わせでは久美はいつも待つ方だ。到着予定はスマホの時計で11時10分。ふと駅の時計を見た。11時2分。腕につけている時計は11時5分。誤差だ。そして向こうが見ている時間。どの時間を目安にして生きているのか、時の数字の間に自分の影が落ち込んでいく。

mm @Mm41897717Mm
袂を分かった人々が山のようにいる。他の人は気にしないような些細なことで嫌いになったり、積もり積もったことが爆発したりして二度と顔を合わせたくないほど険悪になってしまう。ふと晴菜は虚を見つめながら今までに作った敵を振り返った。頭には箱に無造作に詰めた大量のフィギュアが浮かんでいた。

冨原睦菜 @kachirinfactory
昨日はサラダ、今日は海老。明日は胡麻と海苔のどっちがいいかい?おまえが苦手でいつも、1人で食べていいわよって言った一味はな、俺も食わなくなったなぁ…。おやつの時間になるとじいちゃんは必ず、仏壇にばあちゃんが大好物のお煎餅を1枚お供えする。その後、ぼくとお煎餅を半分こして食べるんだ。

凌我 @sironekokuro283
「分子よ!こっちに来い」
「いやいや、分子は呼んでも集まらんでしょう」
「いやいや、お前に挨拶させんと分子!こっちに来い!」
「いや、来ても見えませんて」
「さっきから何を言っている!私の息子の名前が(ぶんし)と言うのだよ!」

凌我 @sironekokuro283
いやいやどうしてこいつはしゃべりつづけているのだろう。
こんなにも世間話をし続けているのだろう。
もう俺は相槌を打つのもやめたのに。
携帯の機種変の話だろう。
どう考えても説明不十分だろう。
お手元の説明書をお読みくださいでは。
今相撲の話はいらないだろう。
説明書も貰ってないよ。

凌我 @sironekokuro283
「そんなことできないですよ!」
「いやいや、気にするなって」
「気にしますよ!そんなことしたら、親不孝者じゃないですか!」
「いやいや、そんなことにはならんから、気にするな」
「そんな、俺たち子と親じゃないですか!」
たしかに、親分と子分だが

にちと @soudasa92chi10
断捨離を思い立ち、散らかる部屋を片付ける。燃える、燃えない、資源ごみと捨てるものを分別する。これは別れた〇〇から贈られたもの、これは母からあの時押し付けられたもの。物にまつわる様々な記憶も執着も共に捨ててしまいたい。どうすれば、一人暮らしのこの家で、自分は自由になれるのだろうか。

凌我 @sironekokuro283
「あなたは誰ですか?」
「あなたこそ誰ですか?」
「誰でもいいじゃないですか?」
「そんなこと言わないで、誰なんですか?」
そちらこそ、そちらこそとお互い身分をあかせない。
((貴方の息子の彼女なんてまだ言えない))
「そちらこそ」
「そちらこそ」

凌我 @sironekokuro283
「その料理の成分は何ですか?」
「えっ?成分ですか?えっと、たくさんあると思うんですけどたくさんあるのはタンパク質と炭水化物とビタミンとあと脂質もたくさん入ってると思いますよ?」
「えっ?そこから作るんですか?」
「もしかして、成分じゃなくて、食材では?」
「えっ」
「えっ?」

和泉瑠璃 @wordworldwork
分をわきまえろよ、と吐き捨てられた言葉と、同時に連れ去られた恋人の涙が、心から離れない。
分相応が邪魔するなら、そんな自分など捨てればいい。
世を憎み、見返すために成り上がり、ついに奪い返したのに貴女はいっそう悲しげに泣いて言う。
「ああ、あの日の貴方こそを愛していたのに……!」

彩田青(サイトからの投稿)
ダストボックスの分別がうまくできないフリをして、レジにいる君のことを見ていた。誰にでも向けてる笑顔。私だけ、だなんて思い上がっていた。半年も通っているから仕分けなんて慣れているはずなのに、店から離れたくなくてわざと手を泳がせた。一線を越えようと思えば、越えられたけれど。

たつきち @TatsukichiNo3
使う予定もないのに急に分度器が欲しくなった。中学時代の分度器を思い出す。アレが欲しい。
店先のモノはアレと随分と違った。線が違う。数字が違う。
家に戻り、昔使っていた机の抽斗を開けた。煤けて目盛の薄れた分度器があった。なんだ。こいつに呼ばれたか。
丁寧に拭いて、今の机に置いた。

 @tatami_tatami_m
いまは18時41分だ。白い文字盤の上で長針が「Ⅷ」と「Ⅸ」の間を短針が「Ⅶ」と「Ⅵ」の間をそれぞれ指している。いま、長針が6°だけ回転して42分となった(もしかすると43分かもしれない)。外は既に薄暗い。空のかなり遠いところが濃い橙色になっている。テレビや話し声がどこからか聞こえてくる。

葉山みとと @mitotomapo
こちらへどうぞ、と。案内された部屋では原子たちが、こいつと手を繋ぐんだったかあいつと手を繋ぐんだったかと思案していた。いくつかは分子になっていたものの、大抵は羅列しているだけ。とにかく混沌としていたが、「合格!」の号令を合図にぶわっと逃げ出し、電子の世界へリスポーンした。

メイファマオ @molmol299
分刻みで追い立てられるように仕事をして家と会社の往復しかしていないと気付いたのは定年後に乞われて嘱託職員としてまだ働き体を寝台に横たえた時で、家族と真面に会話したのが何時だったかも忘れていたという恐怖に跳ね起き明日から俺は暇人になるぞと叫ぶと『今更?』と隣から呆れた妻が囁いた。

彩田青(サイトからの投稿)
もう何十分も君の背中を見て歩いている。君はきっと気づいてる。心臓の鼓動が聞こえそうで聞こえない。君は振り向かない。振り向いたら私を愛している顔をしないといけないから、知らないふりをして、走り出そうとした。そのジャケット目掛けて突き立てる。真っ赤に染まった君の背中、美しい。

モサク @mosaku_kansui
縫って解いてをくりかえした私の分身は、140枚のつぎはぎ姿。絆創膏を巻いた指で不揃いな縫い目をなぞると、くすぐったいと身をよじる。私はそれを窓辺に並べた。「良い出来ですね」見かけた人が声をかける。別の人は「貴方に似ていますね」と言う。可愛いのは親の欲目。私は笑い、次のはぎれを探す。

 @tatami_tatami_m
「分別をわきまえる」という言葉がありますが、皆さん、頑張ってちゃんと「わきまえる」人間になりましょうね。はいそこのあなたいまフォークを音を立てて噛みましたよね、それはマナー違反です噛むときはもっともっと大きな音を立てて噛みましょういいですかいま手本を見せますからねガリッガリッガリ

 @tatami_tatami_m
これから、このケーキを37個に分けたいと思います。聞き間違いではなく37個です。なぜならこの部屋の中に37人、これを食べたい人がいるからです。しかもこのケーキはホールでなく普通の小さいやつなので1人分は小匙1杯というところです。ところでやっぱり切るのでなく1匙ずつ掬うことに今決めました

糸遊羅船 @ark25BASALA
無限に注がれる瀧水が分かたれたのは、神剣を携えた若武者が彼の地へ訪れた時のこと。末広がりの袖にたすき掛けをして気合いをいれた佇まい。少し前のめりに上半身を傾けたかと思いきや一筋の閃光があたりをほとばしったという。今尚、彼の秘境では、八頭派の頭領クマリが愛刀、双竜の剣が眠っている。

にちと @soudasa92chi10
先輩が、ふと路端で立ち止まり、夜空を見上げた。「今日は星がよく見える」。僕もつられて星を探す。「どれが何の星か分かりません。昔、習ったのにな」と言えば、先輩が「オリオン座と大三角が見えてる。あと、火星と月」。「流石に後の2つは分かります」と言って二人で笑い合い、一緒に帰る冬の晩。

雨琴 @ukin66
お腹がすいてラーメン茹でようと思ったのは覚えています。鍋で湯を沸かしている間に何を考えていたかは言いたくありません。沸騰して麺を入れてタイマーかけて、ことことことこと音がして、共感できないことがたくさん頭に浮かんで、鍋に手を突っ込みました。私は多分、理解して欲しいのだと思います。

雨琴 @ukin66
出会い頭に恋をした。目的なんてあるはずもなくて。今でも初恋を覚えてる。「あなたなしでは生きていけない」と、流行歌の歌詞みたいなことを言ってくれたっけ。病めるときも健やかなるときも、いつか分断されてしまうなら死ぬときだと。久しぶりじゃない。元気そうね。どうしてあなたは生きているの。

藤和 @towa49666
あの人は分け隔てない人だ。だれにでもやさしくて、誰にでも誠実で、だれにでも平等に接してくれる。きっとあの人の特別になるんだと誰もが思った。けれどもあの人はそんなことを知って知らずか、特別は作ろうとしなかった。あの人は分け隔てない人だ。だれにでもやさしくて、誠実で、とても残酷な人。

一見 才 @SI_hitOmi_NoveL
節分。今年も俺は鬼になり、家族の投げる豆を喰らう。「何でもかんでも甘やかさないで!」痛い。「私だって甘やかしたいの!でも時には鬼になって怒らないといけないの!」痛い。だが、妻の顔を見て本当に痛い思いをしていたのが誰かくらいは直ぐに分かった。息子は妻に驚き指差す。「鬼の目にも涙だ」

チアントレン @chianthrene
末の子の生まれる朝に野分訪れ、末の二人を残し一族郎党滅び去る。この予言は曰くとなって流浪の兄弟の身を守り、家伝となって我が血筋を固めた。私の時代に至ったならば、記録の力は先祖の誕生日も追い出された村もあっさりと示し出す。弟が打ち切った物語の兄は、激流に今も架かる橋に埋まっていた。

黒野綯路 @High_Delight
名付けとは、世界を分解する行為だ。光と影、天と地、虹の色、木の種類、人の在り方。名を得た瞬間から『それ』は『それ以外』から切り離され、特別になる。つまり君は、君を分解したのだ。君は君の中に私を見つけ、名を与えた。だから私は私となり、君は私でなくなり、そして私は今から君になるのだ。

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