見出し画像

柴舟 香盒 ~宇治川と柴舟

朝日焼は宇治川の畔、世界遺産平等院と宇治川を挟んで向かい合うような位置にあり、宇治川、平等院、朝日焼はとても深いつながりがあります。
宇治川は朝日焼の陶土を古来、運んでくれた川であり、水、薪も宇治川の恵みによって容易に手に入れることができました。

平等院の浄土院には、朝日焼初代の作と伝えられる柴舟の香炉が所蔵されています。
柴舟は、柳や水車、宇治橋とともに宇治川をあらわす情景に描かれたものです。宇治川上流の山で刈られた柴を、束ねて舟で下流へと運ぶのですが、初代の香炉では、その柴の一つ一つが細かく作られており、とても風情のあるものです。
初代は後陽成天皇に香炉を献上したと伝えられ、もしかするとこの柴舟の香炉はそれを下賜されたものかもしれません。

朝日焼では、各代の当主が様々に柴舟をモチーフにした作品を作っておりますが
私も襲名して一番最初に作った香盒が、この柴舟の香盒です。束ねた柴や、苫葺きの屋根の風情がとても侘びたものですので、晩秋のイメージがありますが柴舟そのものは、春の雪解けのあとに一番往来するものだったそうです。
新古今和歌集に寂連法師の歌で
「暮れて行く 春のみなとは知らねども 霞に落つる宇治の しば舟」
というものがあります。
この香盒から、春の宇治川を下っていく柴舟の情景を思い浮かべていただけると嬉しく思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?