J-POPレビュー #7 ビーイング系の男性ボーカル曲7選(前編)

記事2本では書ききれないので、男性編に突入。

女性ボーカルのZARD・大黒摩季・倉木麻衣の3枚看板でも充分豪華だが、ビーイングをつくり、牽引したのは男性ボーカルアーティストだろう。創設者の長戸大幸は若手時代の暴威(BOOWY)に携わり、事務所の基礎を造ったのは(ビーイングを前面に押し出してはいなかったが)TUBEであった。そして30年もの間日本の音楽シーンを牽引するB'z。90年代のミリオン連発の時代はもちろんのこと、「ultra soul」「イチブトゼンブ」などのの00年代、そして代表作のなかった10年代には「兵、走る」が滑り込んだ。ビーイング誕生に関わり全盛期を支えた作曲家の織田哲郎のヒットに続き、ビーイング全盛期の93年前後には多くの男性ユニットが誕生しては、ヒットを飛ばした。
ミリオンヒット作は32作品を数えるビーイング系アーティスト。内訳は下記の通りである。

B'z 15作品「LOVE PHANTOM」「裸足の女神」他
WANDS 5作品「時の扉」他(「世界中の誰よりきっと」含む)
ZARD 3作品「負けないで」「揺れる想い」他
大黒摩季 3作品「ら・ら・ら」「あなただけ見つめてる」他
DEEN 2作品「このまま君だけを奪い去りたい」「瞳そらさないで」
B.B.QUEENS 1作品「おどるポンポコリン」
T-BOLAN 1作品「Bye for now」
FIELD OF VIEW 1作品「突然」
倉木麻衣 1作品「Love,day after tomorrow」

B'zは貫禄の15作。アイドルを除けば断トツの日本一である。うちダブルミリオンは1作。そして2位はZARDではなくWANDSである。WANDSと一緒に語られがちなT-BOLANが1作のみなのは意外だった。ちなみにアルバムもB'zが19作品で国内トップ、シングルミリオンが意外に少なかったZARDが9作品である。
織田哲郎の存在にも改めて触れなくてはならない。自身のキャリアでは12作品のミリオンヒットがあるが、ビーイング32作品のミリオンヒットのうちの10作品を作曲している。自身のソロ曲「いつまでも変わらぬ愛を」も92万枚の大ヒットであった。

そんなミリオン31作品のうち23作品を占める一大勢力である男性ボーカルアーティストの楽曲から、今回は前編として4曲を紹介する。


1.「愛したい愛せない」 BAAD(1993)

オリコン最高位23位。93年2月デビューの4人組の2ndシングル。ドラマ「ララバイ刑事'93」主題歌。バンド名は長戸氏が"最上級のBADの意"と付けたらしいが、WORSTではだめだったのか?小学生でも思い付かないテンションのバンド名である。しかしながらスラムダンクでおなじみ「君が好きだと叫びたい」はBAADを知らずとも、今でもカラオケで歌い継がれる名曲である。同時期に活躍したWANDSはボーカルが交替しているが、BAADもボーカルが変わっている。通常バンドの顔であるボーカルが変わることはまずないが、簡単に似たようなボーカルをあてがってくるビーイングはすごい。
作曲はKinki Kids「夏の王様」の羽田一郎。出世作のビーイングらしい売れ線のキャッチーさと全く不釣り合いな歌謡曲にバンドアレンジを施したような古めかしいメロディである。歌い方と曲調が相俟ってかなり暑苦しい仕上がりになっている。女性受けは非常に悪そうである。"City lights""サイドシート"って歌詞はあまり近頃の曲には出てこない気がする。

2.「抱きしめたい」 REV(1993)

オリコン最高位4位。93年4月デビューの出口雅之のソロプロジェクトの2ndシングル。ドラマ「青春オフサイド!女教師と熱血イレブン」主題歌とCMのダブルタイアップだが、口に出すのが恥ずかしいこのドラマのタイトルはどうにかならないのか。デビュー作の「甘いkiss kiss」で晴れてカメリア族の仲間入りし、その流れを汲み本作もヒットした。本人が作詞作曲を手掛ける。
BAADほどではないが、こちらも歌謡曲の気があり。節回しに織田哲郎っぽさを感じるが、特に関与はない模様。この曲といえばサビ頭の"DADA 抱きしめたい"のフレーズ。かなり前のめりに入ってくるDADA。そしてDADA部分の歌唱時の力の入れようといったら、多分カラオケで歌わせたいポイントなのだろうが文字にするとダサい。また、曲最後の畳み掛ける「と・け・て・ゆ・く・よ~」と2拍3連の狙った感がまたたまらない。更にアウトロでギュイーンと鳴るエレキの音も抜かりない。

3.「ぜったいに誰も」 ZYYG(1995)

オリコン最高位3位。93年5月デビューの2人組の5thシングル。全てビーイングのアーティストが起用された「スラムダンク」のタイアップ。全てヒットはしたものの、オープニングテーマはBAADのイメージが強く、起用された5曲の中では残念ながら地味な部類に入るだろう。ZYYGには 作曲家としておなじみの栗林誠一郎が在籍していたが、前のシングルをもって脱退している。
作曲は織田哲郎。ボーカル・サウンド共に硬派な男臭さががすごい。バスケというスポーツの異性受けするかっこよさは全く感じず、スポ根的要素のほうが強そうな雰囲気の曲である。ちなみに歌詞はメンバーの高山征輝が担当しているが、スラムダンクとは関係ない。まず、"風景"と書いて”こきゅう”と読ませる。"自由"と書いて"かぜ"と読ませる。そしてサビ終わりの"BORO BOROになるまで"という歌詞の言い回しがREV同様時代を感じるが、おそらくこちらの方がダサい。

4.「Last Good-bye」 FIELD OF VIEW(1995)

オリコン最高位3位。「世界ふしぎ発見!」のエンディングに起用される。94年2月のデビュー時は viewというグループ名だったが、改名後に大ヒット。織田哲郎が作曲したドラマ主題歌・CMソング・アニメソングとそれぞれ大ヒット。
作詞は坂井泉水、作曲は「もっと強く抱きしめたなら」「君が好きだと叫びたい」などの多々納好夫。こちらは3rdシングルで、ヒットはしたものの織田哲郎の手掛けた3曲に比べ地味な存在である。爽やかな彼らのイメージはそのままに、別れの寂しさも思い起こさせるポップサウンドに仕上がっている。特に暗めのAメロ・Bメロから、サビでメロディーが明るくなるが、ボーカル浅岡雄也作曲の5thシングルの「ドキッ」でも同じような曲の展開となっており、サビがより突き抜けて明るい。最終盤の"Just remember the Last Good-bye"の繰り返しのフレーズで転調させる所が好き。

後編に続く。


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