J-POPレビュー #2 小室プロデュース作品7選(後編)

前編記事のつづき。長きにわたり活躍した人物だけに、1980年代から2010年代まで4年代でトップアーティストに曲を提供している。小室哲哉の世に放ったプロデュース作品のうち、後編では少し年代を広げた4曲を紹介する。

4.「NO TITLIST」宮沢りえ(1990)


作詞 川村真澄 作曲 小室哲哉
オリコン最高位1位のドラマ主題歌なので紛れもないヒット曲であるものの、リアルタイムでは知らず(Santa Fe世代ではない)、30年経った今懐かしのヒット曲特集でもそこまではお目にかからない。
曲についてはまんまTM NETWORKで、サビの若干前のめりな歌い方も含めてよく出来た仕上がり。歌詞を変えてあげれば宇都宮隆のボーカルの方がしっくりくるかもしれない。
歌手としてはお世辞にも成功したとは言えないだろうが、提供された曲のクオリティの高さ、そして本作のような全盛期だったTMNの王道サウンドをあてがわれたのは一世を風靡したスターにふさわしいものだったのかもしれない。

5.「BELIEVE」渡辺美里(1986)


作詞 渡辺美里 作曲 小室哲哉
オリコン最高位2位。渡辺美里といえば、文句なしの小室初期の代表曲「My Revolution」と西武ドーム。この曲は小室提供のシングルとしては4作目。Acid Black Cherryのカバーで初めて知ることになる。
4作目にして自ら作詞を手掛けている。ABメロはは大人しく暗めだが、サビに入ると一気に前向きになる印象。代表曲同様、夢という歌詞が彼女の楽曲には合うのかもしれない。なんとここまでの4作全て歌詞に"夢"と出てくる。
ここまで挙げた中では抜群に歌唱力の高いアーティストである。あれだけのヒットを出して、息が長いのであれば当然だろうが。篠原涼子同様、小室プロデュース代表曲といえる曲を持っているが、この曲も双璧をなす名曲であることは間違いない。


6「BAD LUCK ON LOVE~BLUES ON LIFE~」トーコ(1998)


作詞 MARC 作曲 日向大介
CMのタイアップがあったが記憶なし。このシングル自体のCMは結構な頻度で流れていた。オリコン最高位14位。曲にはクレジットはないものの、小室哲哉・日向大介の共同プロデュースでデビューした当時の現役大学生。日向大介って誰なんだ。調べると松たか子の「明日、春が来たら」「I STAND ALONE」の作曲者とのことで中々のお方。
特徴的な声質でファルセットもビブラートも優しく綺麗。歌唱力にも非凡なものがあり、歌い方のメリハリも上手である。ヒットが続かなかったのが残念でやまない。後にアルファベット表記のtohkoに改名するが、CDジャケットにでかでかとトーコと書いてあったのでカタカナ名のイメージのほうが強い、というか当時は変更したの知らなかった。


7.「海とあなたの物語」未来玲可(1998)


作詞 MARC&TK 作曲 小室哲哉
月9ドラマ「じんべえ」主題歌。じんべえがあだち充の作品であることはこのタイミングで知った。オリコン最高位7位で、おそらく唯一の小室ファミリーの月9デビュー作。曲の世界観としてはただ暗く、無機質にまっすぐな歌声が特徴のボーカル。この独特の曲調とボーカルのキャラクターが上手く一致したのかもしれない。
サビはいたってシンプルに入るが、2パート目?でオケがガチャガチャしている所でもうひとヤマ作ってくる。最後の転調も比較的安心して聴ける印象。
高音やアップテンポ、ボーカルの歌唱力だけに頼らずとも世界観のよく練られた名曲であり、個人的には小室プロデュース曲のナンバーワンに推したい。彼女は1曲であっさり引退したようだが、こういった曲をもっとやりたかったのかもしれない。


最後にー小室ファミリーといえばavex?


締める前にもうひと予備知識。
小室ファミリーといえば、流行し彼も取り入れたユーロビートやトランスとの親和性の高いavexのイメージが強く、実際にglobeやTRF、安室奈美恵らが所属していた。しかし主要どころでも、例えば華原朋美とdosはパイオニアLDC、鈴木あみはソニー(当時)である。今回紹介した7曲のうちavexが小室に関与する前の時代の曲を除く5曲中、篠原涼子はソニー、円谷憂子は東芝EMI、トーコと未来玲可はポニーキャニオンと、翠玲以外はavexではないレーベルだった。
彼の関わる自主レーベルにしてもglobeはavexだったが、前述の華原朋美とdosはパイオニア、TRUE KiSS DESTiNATiON(前妻とのユニット)はソニーだった。ヒット歌手は多かったが、全体的には小室=avexではなかった。
彼の楽曲についてはとにかく数が多く、ここに挙げきれなかった曲もあるため、また別の機会に紹介したい。改めて振り返ると、彼のソングライティング能力と、表現者や脇を固めるクリエイターたちの素晴らしさを改めて感じた。

それではまた次回のテーマにて。

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