J-POPレビュー #5 ビーイング系の女性ボーカル曲7選(前編)

今回は、90年代のCDバブル期に一世を風靡したビーインググループに所属するアーティスト。

高視聴率ドラマ主題歌がミリオンヒットを連発した90年代初頭、プロデューサーブームを巻き起こしJ-POPそのものを変えてしまった小室哲哉の時代の90年代中盤。丁度その間のおよそ2年間がピークとなったのがビーイング系のアーティストたちである。
創設者にして実業家の長戸大幸の手腕により、織田哲郎や栗林誠一郎、大野愛果ら名うての作曲家陣か集まった。TUBEやB'zが先駆けとなり、ZARDや大黒摩季などの女性アーティスト、WANDSやT-BOLANなどの男性アーティストらのミリオンアーティストを筆頭に勢力を拡大していった。
タイアップはポカリスエット等の大手企業のCMソングや、高視聴率まではいかないがキー局のドラマ主題歌をコンスタントに獲得。特にCMソングについてはサビ頭にタイトルが出てきて覚えやすく、かつCMの限られた尺で視聴者にキャッチーさを訴える"CM映え"する曲を量産した。
遂には1993年、オリコン18週連続1位・週間チャート1~6位独占という記録を打ち立て(詳細は下記リンクから)、ビーイングはその時代の音楽業界を牽引したのである。

しかし、たくさんのアーティストがデビューしては消えていく。小室ブームの到来により勢いは衰え、1995年のFIELD OF VIEWを最後にミリオンアーティストは途絶え、ブームは終焉する。その後はアニメタイアップ中心にトップ10入りはするものの、1999年の倉木麻衣を除き、稼ぎ頭であるB'z以外の大きなヒットには恵まれなくなった。
そんな音楽業界に大きな爪痕を残したビーイングの楽曲。基本的にアーティストのメディア露出も戦略上少なかったため、チャート上位にランクインしなかったり、タイアップが大きくないと曲を認知される機会も自ずと少なくなる。ビーイングの楽曲と一括りにするとあまりに母数が多すぎるので、今回は女性アーティストの曲に限定して紹介する。

1.「I FEEL DOWN」PAMELAH(1995)


オリコン最高位30位。代表曲は「SPIRIT」、ぬ~べ~世代としては、EDのゆきめが印象的。こんな偉そうな記事を書いておきながら、ビーイング系の女性ボーカルアーティストで唯一CDを買ったのがPAMELAHである。このグループは曲の外部提供がない。小澤真澄の作るキャッチーなメロディに、水原由貴が書いた少々過激な歌詞をさらっと歌い上げるところにある。ビーイング系にはサビ頭の歌詞にタイトルを持ってくるお約束があるが、PAMELAHは非常に少ない。
2ndシングルながらノンタイアップなのが、どれだけレコード会社に売る気があったか疑問符が付く。この曲の歌詞は大好きな彼氏の浮気の悲しさから、他の男に抱かれた女性の後悔の歌と解釈している。サウンドはこの2枚目のシングルで一気に洗練された感がある。


2.「この一瞬という永遠の中で」MANISH(1996)


オリコン最高位12位。作曲はキーボードの西本麻里。「NBA FAST BREAK」オープニングテーマで、WANDSやZYYGなど、ビーイング系御用達のタイアップに起用されている。MANISHはスラムダンクEDテーマの「煌めく瞬間に捕われて」でおなじみの女性2人組。だいたいどのシングルもこんなタイトルの長さであり、このあたりは他アーティストにも共通するビーイングらしさだろう。
そしてこの曲はまずタイトルに目を引かれる。一瞬なのか?永遠なのか?禅問答のようなタイトルである。作詞は「碧いうさぎ」等を手掛けた牧穂エミという方。君との一瞬を永遠と思えるほどに愛おしいという意味なのか?歌詞の考察は難しい。爽やかで疾走感のある曲が多いMANISHの曲において、御多分に漏れずまっすぐな王道ポップチューンである。

3.「酸素をちょうだい!」BA-JI(1996)


2ndアルバム「バジの素」収録。当時のCMで流れていた記憶があるので、おそらくリードトラックと思われるアルバム曲。レゲエ風味を感じる音楽性だが、メンバーの出で立ちからはそんなにレゲエ感はない。メンバーが入れ替わっていてもわからないぐらい類似グループが存在していたビーイングにおいて、BA-JIは似たジャンルのグループがおらず、最近ビーイングであることを知ったぐらい。この曲はメンバーが作っているが、何曲か作曲には織田哲郎が参加している。
前述の通りレゲエ的要素は僅かにあるものの、当時のJ-POPの範疇は抜け出せておらず、チープな出来になっている感が否めないがそれが時代らしさでもあり、だからこそ当時の記憶にこのアルバム曲が残っていたのかもしれない。なお、この後にBAJI-Rに改名しレコード会社を移籍した。


前編は以上3曲となる。前述の通りビーイングの曲は作家陣が様々なアーティストを手掛けており、自前の曲は少なくなっているが、上記3アーティストは比較的自前の曲が多い。PAMELAHの小澤真澄については、ユニット解散後は楽曲提供を中心に活動している。
なお、ZARDが元々グループ編成だったのがソロになったりと、ビーイングはメディア露出が少ないことをいいことに、初期の設定をあっさり無かったことにしてしまうパターンがある。PAMELAHについてもデビュー時は2人組ユニット2組を掛け合わせた4人組という設定だったが(作曲でおなじみの徳永暁人が在籍)、すぐに無かったことにされた模様。
全盛期はSNSもネットも無く、もしかしたら記録が残ってない知られざる設定が他にもあったのかもしれない。

残り4曲は後編につづく。


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