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2022年の大宮アルディージャを振り返る(チーム編)

2022年は昨年より順位を下げる19位、勝ち点は1増の43でシーズン終了。2年連続監督途中交代となった2022年。3年連続の低迷によりクラブの地位は地に落ちた。様々な問題が露呈されたクラブの2022年を簡単に振り返りたい。

1.課題山積みのチーム編成


シーズンオフは馬渡・翁長・河面というDFラインのレギュラークラスが3枚抜かれ、不可解な石川俊輝のレンタル放出。攻撃陣も1人移籍し、採算に合わなかった外国人選手3名も満了となり、「選択と集中」がクラブとして掲げられたが、新体制発表で露わになったのはただの経費削減と露骨な編成の歪み。特に大ベテラン・高卒・長期離脱明けの3人で構成されたGK。そして本職ゼロの左SBは多くのサポーターも疑問を抱いた。CBは頭数は揃ったが質は不安なラインナップ。しかし比較的選手層の厚い中盤にはレギュラー級の選手を多く獲得し、特に泉澤の復帰と浦和の生え抜き矢島の獲得というサプライズが。そして1年間通して変化のなかったクラブ史上初の外国人選手0体制も明らかになった。

フロントはGK3人でも回せると判断、DF陣も特別指定の鈴木の起用も想定していたかもしれないが、結果としては本職ではない小野で1年間戦い抜き、決して盤石ではなかったCBと右SBも結局夏の移籍期間でレンタル補強。しかしながら、失敗と言わざるを得ない2022年の新体制に比べ、新体制発表後に獲得した4名の選手は実に的確な補強であった。おそらく原さんの人脈で獲得した袴田と岡庭、練習生から目利きで獲得を決めた栗本、結果論としては素晴らしい判断だったと思う。

霜田さん仕様の編成はチルドレンの三幸やリーダー気質の選手を多く獲得したのが特徴だろうが、質量共に不足しており、要望に応えられていたとはとても言えない。絶対数が足りない中で監督の交代があり、志向するサッカーは大きく方針転換し余剰人員が発生することに。獲得した選手の質に問題があったというよりは、適材適所や編成バランスに大きな問題があった。編成バランスは予算で言い訳できない。

2.降格まっしぐらの不振ー霜田監督の解任


開幕戦はコロナによる大量離脱もあったが、試合を開催するに充足する人数だったため、ユースを補充しながら開催。アンカーシステムを導入し、A横浜相手に新加入組の頑張りもあり攻撃で良い形も作れたが、ATに勿体ないファウルを与え後の昇格チームに敗戦。次節H新潟戦は勝ち試合の展開をみすみす逃す2失点で負けに等しい引き分け。イッペイに恩返しゴールを食らったのも大宮らしい。H熊本戦、A栃木戦と先制するも勝てず、A徳島戦はホーム全敗のカードらしい完敗だった。

チームを変えるきっかけとなり得たのはH岡山戦。先制するも南と上田の相次ぐアクシデントで初出場の栗本がGKを務める想定外の展開に。今季初めてチームの一体感を見ることができ、勝てばチームが変わると確信できたATに無念のゴラッソで失点。それでもチームとしてようやく目線が合ってきたと言っても過言ではないゲームの後、何も進歩が見えず敗れたA町田戦。負傷中の南を強行出場させた試合での無気力プレーに、当時のチームの限界が見えてしまった。

3分6敗で迎えるH千葉戦を前に原フットボール本部長が電撃就任。降格確率100%と言われた開幕9戦勝ち無しという結果にカンフル剤となったか、ついに初勝利。その後1敗を挟み、試合内容は芳しくないが4戦負けなしとなった。

昇格組を迎えたH盛岡戦はまたしても無気力プレーが散見し、お約束のAT被弾。今季は立場を苦しくする下位相手の取りこぼしが本当に多かった。苦手のH仙台戦は予想通り爆敗。もう後がないH琉球戦で田代の値千金のゴールで辛くも勝利したが、(おそらく事前に決まっていた)霜田監督が解任された。

今季成績は18試合で4勝5分9敗勝ち点17。降格ペースではあったが、2021年のJ2残留は霜田さんのおかげで、感謝しかない。

3.相馬監督の就任ー辛うじて死守したJ2


霜田さん一人に責任を押し付ける形の解任劇。アンカーシステムの失敗もあったが、選手の揃わない状況での解任は非情なものだった。監督解任が続きそろそろ引き受け手もいなくなるのでは?そんな中で現体制を受け入れる形で相馬監督が就任。チームは事実上残留を目標とする現実路線に大きく切り替えた。

東京V戦は引き分けながら後半に見違えるほどチームが躍動、奥抜のゴールも飛び出し今後の上積みに期待をにおわせたが、その後勝ち点は順調に積み上げられず。最終盤に河田のエゴで勝利を逃したA千葉戦や、シーズンダブルを食らったA盛岡戦、これまた終盤に失点を喫したH金沢戦、外国人らに力の差を見せつけられたA岡山戦またもATに追いつかれたH東京V戦、ATに河田がまさかのPK失敗のH秋田戦と、7月までの11試合で1勝5分5敗。下位相手の試合をことごとく落し続け、残り試合は上位相手を多く残す日程となった。

厳しい結果が予想されたH横浜FC戦、苦手のA仙台戦で攻撃陣が覚醒しまさかの2連勝となる。良い流れの中で迎えたH町田戦は新型コロナの影響で志村・小野らを欠く布陣で今季初出場の選手を3人投入。敗戦となったが、苦い経験ながら若林のスタメン出場と、山﨑はこの試合でチャンスを掴むこととなった。幸運にも次節H山形戦は相手にもコロナが出たため延期に。ベストメンバーで挑む、過去負け続けたA甲府戦ではターンオーバーを敷いた相手に確実に勝利。

H大分戦は遂にNACKに歓声が戻った。引き分けながらも好ゲーム。ようやく流れを掴めるかという所で、下位対決のA群馬戦を畑尾の恩返しゴールで落とす。昨年もA群馬戦で勝ちきれなかったことがきっかけで監督の首が飛んだが、次のH山形相手には引きずらず、終盤の小島の同点ゴールで流れを引き寄せた。そして3連戦の最後となるH山口戦、現役最後の試合となった菊地光将を執拗に狙い得点を重ね勝利、なんとか残り2試合を残し残留を決めた。

不安定な試合運びを続けた1年だったが、最後は相馬監督のやりたいことが少しずつは見えた気がする。守備は攻められながらもゴールを割らせず、攻撃はボランチも含め人数をかけ、攻撃の厚みは増した。ようやくメンバーも固定されてきた。しかし、志村・栗本・袴田・岡庭の誰かひとりが欠けても残留は成し得なかっただろうし、批判は多かったが小島や小野らアカデミー組がチームの屋台骨となった。

4.総括


キャプテン三門と奥抜の電撃移籍といった驚きのニュースもあったが、幾多の困難を乗り越え何とか残留することができた2022年。

昨シーズンに比べ明らかに選手の質はグレードダウン、外国人ゼロ体制と、厳しい条件の中で健闘したと見る向きもある。しかし、限られた予算で良い選手を獲得する、チームと融合できる外国人選手をする、果たしてこれらは今の大宮にとって不可能なことなのか?日本人の有力選手を獲得できないのはサラリーやクラブの置かれている立場上理解できる。ならば残されたのは外国籍選手。過去、マテウスはお金で連れてきたのか?ラファエルだって初めは練習生だった。外国人頼みと言われたクラブの歴史は、資金力だけでなくスタッフの目利きなしには成し得なかった。例えば、盛岡には個のある外国籍選手がいるとある選手が試合前コメントで言っていたが、モレラトやブレンネルは果たして高年俸なのか?恐らく安くてもチームの戦力になれる選手を目利きで獲得している。仮に高年俸だとしてもそれこそが「選択と集中」。質的な問題はあったが、選手の離脱に備え人数も多く確保していた。

 外国人選手を入れることによるマイナスの影響に原さんはまず触れた。大宮のFWは皆タイプは違えど突出した武器を持った選手がいない。外国人を入れることを否定するのは、クラブの過去を否定することと同じだろう。この編成で大丈夫とは振る舞ったが結果を出せなかった霜田さんは結果解任、責任を押し付けたうえバックアップできなかった佐野社長・秋元強化部長には何の責任もないのか?大宮以外に外国人選手を抱えていないのは、金沢・秋田・群馬の3チームのみと地方クラブのごく少数。新潟のように外国人選手に頼らず勝てる編成ができているなら何も文句はないが、出来てないのが問題。去年と比べ良くなった点は怪我人が減ったことだけ。分析コーチやメンタルコーチがどこまでチームに貢献したのかも検証が必要である。

組織全体としては、親会社のNTTは出向の社長を送り込んでいるにも関わらずスポンサー撤退を匂わせ、予算面でオフのチーム編成に大きな悪影響を与えた。それなのにVENTUSはさも当たり前のようにスポンサー契約し元日本代表選手も在籍。親会社のサービスも低下している中、責任企業としてのあり方も疑問しかない。最終戦後のゴール裏のNTT批判については100%賛同する。クラブは親の同意なしで全ての決裁を行えないことを忘れてはならない。

来季に向け、どれだけコーチングスタッフや選手の入れ替えがあるかはわからない。ただサポーターの思い上がりではなく、少なくともこのクラブはJ3への降格を争ってはいけないクラブ。近々3カテゴリーのチーム数が是正される。DAZN元年の格差社会が始まろうとした時に当時の森社長と松本強化部長は勝負所を見誤りJ2に降格、そしてJ2下位常連クラブまで落ちぶれた。その失敗を繰り返さないよう、2023シーズンは少なくともボトムハーフでハラハラするシーズンから脱却したい。地域に愛されるクラブを銘打ってチームの強化から目を逸らした結果、今季最終節は8000人台とただただスタンドの景色は寂しいかった。かつて見た10000人以上の観客をチーム成績とともに取り戻すことを願っている。

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