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行ってくるばい (旧長崎駅と寝台特急「さくら」)


私を含め、多くの若者が旧長崎駅から寝台特急「さくら」で東京へ向かった。

2月3月は、別れの季節である。

願わくば、時間の流れが止まってほしいとさえ思う。
だからこそ、2月3月の日々は「翔ぶように」過ぎてしまった記憶ばかり。

イラストは、旧長崎駅から発車していた寝台特急「さくら」で上京する青年と見送りに来てくれた友だち(彼女?)の図。
「東京の若もんに馬鹿にされないよう、いかにも無理して新調した、いっちょうらの服(結局はダサい?)。
靴や靴下の中には、折りたたんだ千円札。
ウィークマンの中には、チューリップや松田聖子のヒット曲集。
大して飲めないのに、友だちが差し入れてくれたトリス・ウイスキー。
いろいろ言いたいこともあるが、なぜか言葉にならず、
「それじゃ、行ってくるばい」 
「うん。夏にゃ、帰ってこんね。徹マン(徹夜マージャン)ば、しようで」
そんな短い会話の後、ブルートレインは夕暮れの長崎駅を出て行った。

私自身、学生時代、北関東にあった大学から帰省する際に何度か乗ったことがあるが、高校を出て上京する際は、飛行機を使った。

それでも仲のよかった友人二人が、わざわざ空港のある大村市まで1時間以上をかけて送りに来てくれた。
今考えると、ありがたい友人たちであった。

哀しい高校生活だったが、その中で手に入れた貴重な自分の財産だったと今、しみじみと思う。


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