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#ハンナ・チャップリン

太陽のように温かな母親の人柄が、チャップリンの才能を開花させた ~ 「チャップリン自伝ー若き日々」を読む ④-2

生活に行き詰まり、やむなく貧民院入りを決めた母ハンナだったが、よくある話のように、子どもの世話から逃れたかったわけではなかったことがよくわかる一節。 子どもと別れた部屋に住んでから一週間で、チャップリン達が驚くほどやつれて老け込んでしまったのだ。 それでも、子どもの顔を見たとたん、顔がパッと輝き、親子で涙した後の光景は、短い文章ではあるが、どんなに心温まる素晴らしい光景であるかは、容易に想像ができる。 編み物をして、やっと手に入れた小銭で買った売店のキャンディーは、二人にとっ

太陽のように温かな母親の人柄が、チャップリンの才能を開花させた ~ 「チャップリン自伝ー若き日々」を読む ⑥

*** 自分が生活することもやっとであるが、母ハンナは、少しでもお金が入ると、チャップリンたちを引き取る為に、貧民院にやってきた。 そのことは、幼いチャップリンにとって、どんなに嬉しかっただろうか。 生計が成り立つとか、そんな問題では無い。 なりふり構わず、世間体も何も考えずに笑顔で、自分を迎えに来る母。 「母の姿は花束のように見えた」と言う言葉は、まさにその嬉しいを通り越した感情を表している。

太陽のように温かな母親の人柄が、チャップリンの才能を開花させた ~ 「チャップリン自伝ー若き日々」を読む ④

母ハンナは激しい片頭痛に襲わるようになり、針仕事もできなくなっていたが、ある日、兄のシドニィが新聞売りの途中で、財布を拾ったことで、子ども達二人に生涯消えないような最高の一日をプレゼントしている。 母は敬虔なキリスト教の信者であったが、いわゆる融通性のある人物でもあり、「子どもには、その時にしか価値(意味)の無いお金の使い方」があるということを、よく知っていた。

太陽のように温かな母親の人柄が、チャップリンの才能を開花させた ~ 「チャップリン自伝ー若き日々」を読む ③

本当に「どん底の」暮らしをしていたが、母ハンナは、心までどん底では無かった。 清貧という言葉があるが、ハンナはチャップリン兄弟に、人としての矜持を保つ尊さを教えていたことがわかる。 映画「KID」にも、捨て子であったジョンに、食事の前にちゃんとお祈りを捧げるように促すシーンが出てくるが、これもチャップリンが実体験から身についていたことだとわかる。

太陽のように温かな母親の人柄が、チャップリンの才能を開花させた ~ 「チャップリン自伝ー若き日々」を読む ②

私の幼い頃、けっして裕福ではなかったが、チャップリンの母ハンナに比べれば、遥かに恵まれていた。 私も外へゆくより家に居る方が好きだったのだが、こんなにも優しく母にしてもらって二人で過ごした記憶は残念ながら残っていない。 あらためて、「ヒトを育てるとは?」と「ヒトにとって豊かな暮らしとは?」とは、どういうことなのかについて考えさせられる。 尚、文末に気になる表現があるが、これは母ハンナが極度の栄養不足などで、精神に異常をきたしてしまうことを指している。

太陽のように温かな母親の人柄が、チャップリンの才能を開花させた ~ 「チャップリン自伝ー若き日々」を読む ①

「チャップリン自伝」ではあるが、この書の前半部分は、ほぼ母ハンナ・チャップリンのエピソードで占められている。 私はこの書を読むまで、彼女のことを何もわかっていなかった。と言うか、まったくもって誤解したイメージを持っていた。 本を借りるという妻に付き添って入った、かつて私が幼少期を過ごした場所の古ぼけた小さな図書室。その書棚でたまたま目に付いた、一冊の擦り切れた文庫本。 この一冊の本が、それまでのイメージをすっかり覆してしまった。 私はそれまで、「チャップリンの母」と言うと、