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2023年11月の記事一覧

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑩ 恋愛感情を人間性の昇華と結び付けて捉えている

「隠れ家」の中の8人のうち、二人の母親は、特殊な環境に中に置かれた二人のことを、いたく心配して警戒していた。 確かに「恋に恋する年頃」ではあったが、それほど単純に、或いは軽薄に恋に憧れていたというわけではなく、その感情を、自己の人間性の昇華と結び付けて捉えていたことが判る。 アンネの母、エーディトは、もちろん娘を心配してのことだったが、「子どもを子ども扱いするべきでない」という思慮が無かった為に、最後までアンネからの信頼を得ることができなかった。

太陽のように温かな母親の人柄が、チャップリンの才能を開花させた ~ 「チャップリン自伝ー若き日々」を読む ①

「チャップリン自伝」ではあるが、この書の前半部分は、ほぼ母ハンナ・チャップリンのエピソードで占められている。 私はこの書を読むまで、彼女のことを何もわかっていなかった。と言うか、まったくもって誤解したイメージを持っていた。 本を借りるという妻に付き添って入った、かつて私が幼少期を過ごした場所の古ぼけた小さな図書室。その書棚でたまたま目に付いた、一冊の擦り切れた文庫本。 この一冊の本が、それまでのイメージをすっかり覆してしまった。 私はそれまで、「チャップリンの母」と言うと、

私のオリジナル・ショートショート落語集

「パカポコ亭ひん助」のショートショート落語集。 ネタを考えるのは、散歩をしながらで、なかなか楽しいものだった。

立体アートウッドパネル/夜の都井岬と御崎馬と少女

夜の都井岬。灯台の灯。 野生馬。月。 旅の少女。 小学生の頃、九州のガイドブックでみた「旅愁をかきたてる都井岬の夜」という一枚の写真の印象が私の中に深く残っていて、そこから生まれた作品。 「自立への旅」「新しい世界への挑戦」ということも、この作品のテーマとなっている。 #都井岬 #御崎馬 #野生馬 #在来馬 #馬アート

「ハリーとトント」 ~ 昔の仕事日記より

軍艦島のツアー・ガイドとして、毎日軍艦島に通っていた頃。 大変だったけど、楽しかった。 子どももまだ幼くて、充実した日々だった。 「ハリーとトント」は、昔からお気に入りのロード・ムービー。 近頃は、私がすっかり「ハリーとトント」のようになってしまったと嫁さんから言われる。

少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑨ 人間関係と、その問題解決についてのほぼ完成された考察と提案

この日の日記は、とても示唆に富むものである。 歳のいった人間は、幼い者を非常に低く見積もってしまう。自分の子どもについて、それは顕著であるが、この日の日記を読むと、それがいかに相手の尊厳を傷つけるものであるかが判る。 アンネが述べる「愛情」の部分は「人間という存在への尊重」という言葉をあてはめてもよいだろう。 とっても考えさせられ、また反省させられるものである。

書き言葉として素晴らしい~岩波新書「高橋源一郎の飛ぶ教室ーはじまりのことば」

かつて私が作業をしながら愛聴していたのが、NHKラジオ第一放送で月から金までの午前中に放送されていた「すっぴん」という番組だった。 アンカーのアナウンサー以外に、日替わりのパーソナリティーがいて、私は木曜の川島 明が大好きだった。 翌日の金曜が高橋 源一郎だったのだが、一度もこの人のトークを「面白い」と思ったことはなかった。 むしろ金曜の高橋氏の日になるとガックリというのが正直な気持ちだった。 「すっぴん」が放送終了して久しいが、時折SNSの中で高橋氏のエピソードを目にする