少女の日記としてではなく、一人の人格ある人間のものとして「アンネの日記 増補改訂版(文春文庫)」を読む ⑩ 恋愛感情を人間性の昇華と結び付けて捉えている 1 江島 達也/対州屋 2023年11月29日 08:45 「隠れ家」の中の8人のうち、二人の母親は、特殊な環境に中に置かれた二人のことを、いたく心配して警戒していた。確かに「恋に恋する年頃」ではあったが、それほど単純に、或いは軽薄に恋に憧れていたというわけではなく、その感情を、自己の人間性の昇華と結び付けて捉えていたことが判る。アンネの母、エーディトは、もちろん娘を心配してのことだったが、「子どもを子ども扱いするべきでない」という思慮が無かった為に、最後までアンネからの信頼を得ることができなかった。1944年2月27日、日曜日(前略)・・・まだ、彼がわたしを見つめているのを感じます。わたしは確信していますが、ペーターとわたしとは、うわべにそう見えるほどかけはなれているわけじゃないんです。そのわけをお話ししましょう。ふたりとも母親に恵まれていません。彼のおかあさんはとても軽薄で、浮気っぱく、息子の内面の考えなどにはほとんど無頓着です。わたしのおかあさんは、たしかにわたしを気づかってはくれますけど、鈍感で、気配りに欠け、真の母親らしさがありません。 ペーターもわたしも、それぞれ内面の感情と闘っています。どちらもまだ自分というものをはっきりつかんでいませんし、感受性が強すぎて、粗雑に扱われることに耐えられません。そういうことがあると、わたしはたちまち逃げだしたくなり、自分の感情を押し隠して、周囲に八つ当たりしたり、大声をあげたり、騒ぎたてたりしたあげくに、みんなから敬遠される結果になります。いっぽう彼のほうは、自分の殻にとじこもり、ほとんど口もきかず、じっと身をひそめて、自昼夢にふけります。そうすることで、ほんとうの自分をひたかくしに隠しているわけです。それにしても、わたしたちの心がついに触れあうまでになるのは、 いったいいつ、どのようにしてでしょうか?わたしの良識なるものが、いつまでこの強いあこがれをおさえておけるものか、自分でもまったくわかりません。 じゃあまた、アンネ・M・フランクよりアンネの日記増補新訂版 p342 ダウンロード copy #アンネの日記 #アンネ・フランク 1 ※「チップ」は有難く拝受させて頂きます。もし、この記事が多少でも役に立った、或いは「よかったので、多少でもお心づけを」と思われましたら、どうぞよろしくお願いいたします。贈って頂いたお金は1円たりとも無駄にせず大切に使わせて頂きます。 サポート