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生存記録その3~一筋の希望~

1993年夏。ある日の朝

ハッ!!うっかり眠ってしまった!
僕はゾンビに追われて逃げ込んだ家で、疲労と睡魔に耐えかね眠ってしまったことを思い出した。
ゾンビ!ゾンビはどうなった!?確か向こうの部屋にドアをドンドン叩くゾンビが……!!!

ゾンビが死体になっていた。

一瞬何が起こったか理解できなかった。
部屋には煌々と電気の灯りがつき、家中のドアは全て開け放たれていた。静かな部屋に立ち尽くす僕と、転がるゾンビの死体。
とりあえず気分が悪くなりそうなので、死体を担いで外に出るとその辺に放り投げ、家に戻った。
眠る前と明らかに何かが違う。そういえば小腹が空いてきたので、何か食べ物はないかと台所の棚を明けると、そこには缶詰がぎっしり詰まっていた。
他の部屋を回ってみる。ガレージの棚には見たことのない銃器や弾薬、工具や資材がぎっしり。ダンボールは武器庫になっており、バットや木を削って作った手製の槍まで入っていた。洗面所の棚には応急処置ができる医薬品。

誰か生存者がこの家に来たのだ。そして食料や資材を置いていった。
そのとき電話が鳴った。こんな状況で電話をかけてくるのはこの家の住人の知り合いだろうか。僕は受話器を取る。
「もしもしホロさん?しおやきです!」
隣町・ウエストポイントに住む友人のしおやきさんだ!!生きてたんだ!!

「無事でよかった!こっちも大変なことになってて…。頑張ってゾンビ駆除して、そこそこ暮らせるようになったし結構物資もたまったから、車飛ばしてリバーサイドに駆けつけたんだよ。」
天の助け!!
「街外れの家に入ったらホロさんが眠っててびっくりしちゃたよ。ゾンビはあらかた始末しといたから、置いてある物資は自由に使ってね」
「うおおんありがてえ!!!」
「もうちょい東側の家のガレージに、動く自動車置いてるからそれも使っ…あっごめん!電話切れそう…」
通信状態がよくないのか、ブツッと電話が切れてしまった。
とにかく良かった。しおやきさんも無事で、僕も数日は生き延びられる食料にありつける。

タンスにデジタル腕時計が入っていたので、着用して今の日時を確認する。8月31日。なんてことだ。ノックス事件から2ヶ月近く経ってたのか。その2ヶ月の間に例の感染症は都市部から郊外まで広がり、リバーサイドも死の街になっていた。
とはいえわずかでも自分以外の生存者がいることは、一筋の希望だった。このだだっ広い世界で、生きてる人間が自分しかいないのは、とても寂しく辛すぎる。

缶詰をあけ、ボロネーゼパスタや野菜スープをかきこみ、久しぶりにまともな食事を取った。
日が落ちたので、外からゾンビに見つからないようカーテンを締め、部屋の電気も消し、テレビをつける。
チャンネルを変えても何の番組も映らなかった。世界は本当に終わってしまったんだろうか?

棚に入っていたビデオテープをセットし、気晴らしに映画を鑑賞した。娯楽なんて生きていく上では必要ないかもしれないけど、それでもこの絶望的な世界で漫画や映画といった気晴らしは、生きる力になるような気がする。

映画を見ていると、外からドンドンと窓を叩く音が聞こえた。ゾンビのお客様だ。テレビの音が外に漏れて寄ってきたらしい。
僕は用意された木製の槍を構え外に出ると、窓を叩くゾンビを一突きにして葬った。武器があるとはこんなにも心強いもなのか。しおやきさんのウーバーに感謝しなければ。

外のゾンビを始末し、部屋に戻りテレビを切る。安心して過ごせる静かな夜が再びやってきた。明日からどうやって生き延びようか。やることは山積みだけど、用意された資材や武器の山のおかげで出来ることが一気に増えそうだ。
少し生きる希望が湧いてきた。

※この日記はフィクションですが、登場する生存者様は一部実在します。いつもマルチで助けていただきありがとうございます!
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