荒癪人、
何となく、親友だなんて思っていたのにな。
ベットに俯き、左手に握る取り替えたばかりの制服の、古い方のボタンが、どうにもむかつく。
とっかえっこに持って行かれた僕のボタンは、今、あいつの家のどの辺にあるんだろうか。
ベットに腰掛け、机にその五つを並べてみる。
あいつ以外にボタンを渡せる、もらってくれる友達なんていない。いなかった。
だから、僕のボタンは全部あいつが持っている。
それはあいつも同じで、あったはずだった。
うん、
もちろん、いや分かっていると言えば傲慢になるだろうし、仕方のないことにするしかないと言うのも、
何というか。
途端ごとり、と机から何かが落ちた。
何だろうと顔を上げ、その音の主人を探す。
が、見当たらない。
気のせい、か。
またベットに仰向けになって考える。
………。
また蟠る。
横を向き、積まれた段ボールを見る。
「マジに、名古屋行っちゃうんだけどな」
それがあいつにとってどうでもいいことなら、そうしておくことしか僕には出来ない。
そうすべきなんだと思う。
ただ、欲を言えば、
最後くらい、なんて、
ぱきり
気が付いたら、ボタンはすべてさんざん投げ出され、音を立て跳ね返り、割れた。
部屋はまたしんとした。
こんなことをしてもスッキリすることでもないことはもう何度も分かっている。
割れたボタンに近づいて、拾うと、その破片に何か黒いくすみのようなものが見えた。
それはくすみではなく、あいつの書いた字だった。
『絶対に忘れんなよ』
忘れたくても忘れんねぇよ。
僕は、新しい生活なんて何にも気が付かないまま、死のうと思う。
まだ中学生です