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北欧ウォーク 10 ストックホルムの再開発地区 5分間の無料クルーズ

小さいハンマルビィ湖を渡るフェリー

スウェーデンの首都ストックホルムには、いくつかのユニークな交通機関があります。そのひとつ、ハンマルビィショースタッドのフェリーはわたしのお気に入りです。
ハンマルビィショースタッドは、かつては中小企業の工場が立ち並ぶ工業地帯でした。20世紀末に多くの工場が、人件費が安いポーランドやトルコなどに移転しました。その跡地が再開発されて、中流のしゃれた住宅地として人気を得ています。建設はとどまることなくいまも続き、隣接するナッカ自治体の新しい住宅地区ともつながろうとしています。次世代型路面電車LRTが導入され、さらに最近は第二の都市イエーテボリと結ぶ幹線道路のE20の出入り口もでき、インフラも整備されました。

船内のようす

この地域の北側は小さい湖と運河で、その向こうはセーデルマルム島。南の島という名前の、かつての労働者居住地区で、水辺には集合住宅やシニアハウス、高校や福祉施設などが並んでいます。

向かって左がセーデルマルム島、右奥の集合住宅が隣接のナッカ自治体の地域

再開発計画がたてられたときには、この運河には橋が架けられることになっていました。住民たちはこの案に多くの反対意見を出しました。「聞く耳を持つ」市は計画を練り直し、市民提案のフェリー運航を実現しました。

フェリーは2000年から運航しており、年間100万人以上が利用しています。利用は無料で、所要5分の短い船旅ですが、カンムリカイツブリやマガモ、オオバンなどの野鳥の姿が楽しめて、乗り甲斐があります。見たとおりの小さいフェリーなので自動車は乗れず、人と自転車、乳母車、車いす専用です。船の名前のEMELIEは、ストックホルムの労働者たちを描いた小説『シティ・オブ・マイ・ドリームス』から採用されました。

10分おきに出港する

スウェーデンの民主主義が運河を往復しているような気がして、よく乗りにいきます。


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