②麻雀強くなるには?技術編
雀傑・雀豪→雀聖3程度
(先に、『麻雀強くなるには?マインドセット編』を読むことを推奨。)
○はじめに
そもそも、雀力向上に興味のない人には、つまらない内容かもしれない。それに、ハリーポッターと炎のゴブレットくらい長い。
(さすがにちょっと、盛ったかもしれない。実際には、15分程度で読み切れるだろう。東風戦一回分よりは、たぶん短い。)
強くなるために、多少の労力は払っても良いと言う人にだけ、のんびり読んでもらえたらと思う。
その代わり、僕の麻雀観の根幹となる部分を、伝わりやすいように全力で晒したつもりだ。
読んでくれた人に、何か少しでも持ち帰ってもらえるものがあれば、幸いである。
○おさらい
段位🟰技術✖️マインドセット✖️試行回数
優先順位
マインドセット
試行回数
技術
○効率よく強くなる方法
効率=成果÷時間
短い時間で成果を上げるには、重心を見極める必要がある。
ここでは、麻雀技術の構成と、効率よく上達する方法(=重心はどこか)について伝えようと思う。
○雀力とは?
雀力とは、麻雀における知識や技術を、どれだけ実践で使いこなせるか、である。
(文中で、「技術=雀力」のような表現をしている部分があるが、これらは本質的には別の言葉であることに、注意しておいてほしい。知っているだけでは意味が無く、実践で活かせるかどうかのほうが大事、ということ。)
雀力=一人麻雀力+対人麻雀力
まず、麻雀における技術を上のように2つに分類する。
その上で、効率よく上達するためには、一人麻雀力をとことん磨くことをオススメする。
理由は、一人麻雀には、常に最善手が存在するからである。
勉強した分だけ確実に成長するし、教材の質も高い。勉強するには、とても良い時代だ。
麻雀という、運の要素が大きいゲームにおいて、やればやるだけ成長するというのがどれだけ心の支えになるか、体感したことのある人ならわかるだろう。
(それだけ、麻雀が運に振り回される理不尽なゲームだとも言えるが…。)
対人麻雀力とは、読みや駆け引き、着順操作など、対戦相手の挙動に大きく影響を受けるもの全般を指すが、上級者向けのため、ここでは説明は省く。
ある程度、一人麻雀力がついてきたと思った時に、好きな麻雀プロの戦術書を読んでみるのが良いだろう。(オススメは『魔術の麻雀/園田賢』)
○一人麻雀力=牌効率+ベタオリ力
牌効率は攻撃力、ベタオリ力は守備力である。
麻雀に伸び悩む多くの人は、このどちらか(あるいは両方)が不足しており、しかもそのことに気づかないまま、めくりあいの結果に一喜一憂しているように思われる。
一人麻雀力は、ごまかしが効かない。
これは、人によっては、受け止めたくない事実だろう。
とはいえ、効率良く上達する方法は確かに存在する。あなたが今まで一人麻雀力を意識的に磨いてこなかったのだとしても、落ち込まないでほしい。これは、決して、気合いの問題などではない。
むしろ、あなたが麻雀を楽しみながら学んできた何よりの証拠であり、誇るべきことである。しかし、より高いレベルに進むには、努力という対価を支払う必要がある、というだけだ。
そして、努力するだけの価値はある、と体感してきた僕は思う。麻雀で言うところの、「見合う」というやつだ。
ただし、努力に割ける時間やエネルギーは有限だ。人間には、寿命があるからだ。できるだけ、効率良く学ぶ方法があるなら、そうすべきだろう。
だからこそ、何か勉強してみようと思ったら、まずは「何切る」問題を一問解くことから始めてみてほしいと、ここでは強くオススメする。
○牌効率を鍛える「何切る」問題
次の牌姿を見て、あなたなら何を切るだろう?
答えを見る前に、画面をスクロールする手を止めて、一度じっくり考えてみてほしい。
▫︎例題
678889m45赤579p33s ツモ8p
このとき、受け入れ枚数が最も多くなる打牌は何か答えよ。(答えは後述)
また、その打牌後の、受け入れ枚数を答えよ。
もし、普段無意識に打牌選択をしているのなら、是非この機会に一度、打牌後の受け入れ枚数も数えてみてほしい。
受け入れ枚数を意識することは、普段無意識に行なっている"選択の理由"を、確認する作業だ。
「なんとなく、これを切りたい」という直感を、「こういう理由で、これを切る」という論理に変換する。
この作業をすることで、あなたは、上級者の脳内にグッと近づくことができるだろう。
麻雀プロやトッププレイヤーたちは、何を基準に、どういう理由で選択をしているのか。
麻雀の打牌選択における、最も重要な基礎の部分が、この"受け入れ枚数"なのだ。
受け入れ枚数とは、シャンテン数の進む牌の枚数のことであり、ここでは、「ツモったときにテンパイになる牌の枚数」のことである。
先程の牌姿で言えば、なんとなく、8m9m5pあたりが打牌の候補に上がったのではないだろうか?
その直感は、正しい。(もし今、この感覚が分からなくても、麻雀を続けていれば、自然とわかるようになってくる。)
では、最善手はどれだろう?
この例題の答えは打5pだ。
合っていただろうか?
ちなみに、打5pの受け入れは18枚、
打9mの受け入れは17枚、
打8mの受け入れは15枚である。
打8mよりは打9mのほうが優れているのは、感覚としてわかりやすいと思う。
では、打9mと打5pの比較ではどうか?
0.1秒で打5pが受け入れ最大であると、自信を持って答えることができただろうか?
(打5pのメリットとして、平和のなりやすさ(=打点)という要素もあるが、今は考慮しない。それがあってもなくても、受け入れ面で打5p>打9mである事実に変わりはない。)
強者たちは皆、驚くほどこの正解率が高い。そして、答えに辿り着くスピードが圧倒的に早い。
なぜなら、彼らは既に基本的な牌効率を、身体に覚え込ませてしまっているからだ。
このパターンの時はこう、このパターンの時はこう…。もはや条件反射と言ってもいい。
考えているのは、「その上で、もっといい選択肢は無いか?」ということだけだ。
対局中、思考のために使える時間は限られている。押し引き、読み、守備などに思考のリソースを割くためには、まずは時間をかけて、徹底的に牌効率を身につけることが肝要だ。
○麻雀もスポーツも、基礎が大事
麻雀における牌効率とは、スポーツでいうところの言わば"走り込み"だ。
メジャーリーグで活躍したイチロー選手も、日頃のからスーパープレイの練習をしていたわけではない。
基礎を疎かにしなかったからこそ、高いパフォーマンスを維持できたのだし、ここぞという場面でスーパープレイができたのだ。
牌効率の勉強は、単調で、つまらなく感じるかもしれないが、身につければ必ず役に立つ。
あなたがこれからも麻雀を愛していくつもりならば、一度向き合ってみて、損はないだろう。
オススメは『定石「何切る」301』、通常ウザク本赤。
現時点で、これ以上シンプルかつ上質な何切る本は存在しないと言っていい。
(ちなみに、さっきの例題も、ウザク本赤p.9の4問目である。ウザク本青は上級者版。ウザク本緑は、考え方を体系的に学ぶための参考書だ。)
ポイントは、選択の理由に、他家の捨て牌や点数状況が、全く関係ない点である。
それらの情報はあくまで、打牌選択のための一要素でしかない。
麻雀プロが、対戦相手の手牌をじっくり読んだりしているのは、それくらいしないと差がつけられないからだ。それほどまでに、牌効率をマスターした人同士の闘いであるということだ。
まずは、何よりも、自分の手牌の受け入れ枚数を、じっくり数える練習をしてみてほしい。
強者たちに共通する打牌選択のルールが、思っていたよりずっとシンプルだったと、気づくことができるだろう。
(しかし、ある程度学んでいくと、思っていたよりさらにずっと難しいことに気づく日が来る。麻雀は本当に奥が深い。)
「難しい」「面白くない」というのなら、無理して学ぶ必要はない。
ただ、そうしている間に、牌効率を学んでいる人との溝が、深まっていくだけである。
むしろ、「ここは他人と差をつけるチャンスだ」と思うくらいの気持ちが、上達の秘訣と言えるのかもしれない。
○攻撃力の重心は、一向聴の受け入れ枚数にあり
牌効率を学ぶ、受け入れ枚数を意識する、とは言っても、何から学べばいいかわからないだろう。
ズバリ言おう。「牌効率の勉強は、"一向聴の受け入れ枚数"を学ぶことが最優先である。」(=攻撃力の重心)
なぜ一向聴の受け入れが最優先なのか?
テンパイ時の打牌選択は、そもそもミスをしにくい。取れる選択肢が限られているためである。
残り8枚の両面待ちと残り4枚のシャンポン待ちで、打点などの条件が同じなら、迷わず両面待ちを選べるだろう。(例344s→打4sリーチ)
逆に、2シャンテン以上は、多少の受け入れ枚数差は、そこまで大きく勝負に影響しない。理由は主に2つ。
・2シャンテン→1シャンテンの枚数は、1シャンテン→テンパイの枚数より圧倒的に多いこと
・打点、最終形の良さ、安全度などの、他の要素で補えること
つまり、最も重要かつミスしやすいのが、1シャンテン時の選択なのである。
○麻雀とうまく付き合っていくために
ここで注意してほしいのは、「ミスは、0にしなくていい」ということ。
全てを完璧にマスターしようとすると、むしろ、その前に麻雀のことを嫌いになって辞めてしまう可能性が高い。
前述のウザク本であれば、
「5問に1問しか正解しなかったのが、4問に1問正解できるようになった」
「前は30秒近く考えて出した結論が、今は10秒で出せた」
こういう小さな成功体験を積み重ねていけば良いのである。
というより、他に上達の道はない。
ちなみに、どれだけ正解できたか、よりも、「なぜその選択が正解なのか?」を知ることに、何切る問題の真の価値がある。ウザク本の解説はわかりやすく、効率良く牌効率のエッセンスを学ぶのに適している。
そもそも、人間であれば誰でもミスはする。魂天や麻雀プロでも、間違えることは当然ある。あの麻雀サイボーグこと小林剛プロでさえ、ミスはするものだと言っていたくらいだから、僕たちは「ミスして当然。ただ、少ないに越したことはない」くらいのスタンスで臨むのが良いだろう。
例えば、雀聖レベルのプレイヤーが1回重大なミスする間に、雀豪レベルのプレイヤーは3〜4回、重大なミスをする。しかも、運の要素が強すぎるこのゲームでは、ほとんど誰も、そのことに気づかない。(上の数字は適当なので、信用しないように。あくまでイメージ。)
こういう差が積み重なって、大きな差が生まれているのである。
麻雀というゲームは、長い目で見ると、強い人が勝つようにできている。
しかし、短期的には、勝敗の多くは運で決まる。
だからこそ、面白いし、多くの人に愛され続けているのだ。
○麻雀からあなたへの、挑戦状
苦労してでも長い目で勝ち続けたいか、それとも、自分の幸運を信じて無策で挑み続けるか。
どちらを選ぶかは、あなたの自由だ。そのどちらも、麻雀の素晴らしい楽しみ方だと言えるだろう。しかし、最終的にこの選択の結果を引き受けることになるのは、あなた自身だということを忘れてはいけない。
この問いかけは、「麻雀というゲームをあなたはどこまで愛せるか?」という、麻雀からの挑戦状のようなものだと思う。
報われるとは限らない努力に、多くのエネルギーを割くのは辛いかもしれない。しかし、このゲームに魅了されてしまった時点で、既に我々の負けとも言える。それくらい、麻雀とは、魅力的なゲームなのだ。
ならばいっそ、開き直ってみるのはどうだろうか。
もし、「楽しみながら努力を続けたい」と思うのであれば、『成長マインドセット』について、学んでみることをオススメする。
麻雀とうまく付き合っていくヒントが、きっと得られるだろう。
○ネット麻雀の肝は、ベタオリ力!
牌効率の他に、どうしても身につけておいてほしい技術がもう一つある。それは、ベタオリ力である。
ネット麻雀(ここでは雀魂)は、ラスに重いペナルティが課せられるルールである。
つまり、段位ポイントを増やす上では、頑張って和了率を上げる努力より、放銃率を下げる努力のほうが、効果的である場合が多い。
これは、ラス回避戦略と呼ばれる、ネット麻雀の基本戦略の一つである。
(※あくまで、ネット麻雀でポイントを増やしやすい戦略であり、麻雀の基本が牌効率であることには変わりない。)
もしあなたが、不安を感じやすい、繊細な心の持ち主で、毎試合のポイントの増減に感情を揺り動かされやすいのであれば、その特性は攻撃より守備において強力な武器となる。これを活かさない手はない。麻雀の上達において、危険な気配を察知する能力(=不安を感じる力)は、むしろ強みだ。
もちろん、あなたが細かなポイントの増減なんて気にしない、図太い神経の持ち主であっても、守備力の強化は非常に有効だ。
必殺のパンチを繰り出すために、機をうかがう力を身につけるようなものだ。
強者は、むやみやたらにパンチを繰り出したりはしない。隙を見せずに、力を温存して、ここぞというときに一気に解放するのだ。
そのために必要なのが、ここでいうベタオリ力である。
(オススメの戦術本は『絶対にラスを引かない麻雀 ラス回避35の技術/平澤元気』)
まず、自分の放銃はポイント減に直結しやすい、と強く自覚すること。
麻雀において、局が進むとき、点棒のやりとりが発生する。自分のアガリ、他家のツモアガリ、他家への放銃、横移動、ノーテン罰符など。
このうち、最も自分のラス率に影響を与えるのは、放銃による失点である。
ラス回避において、他家のツモアガリと横移動は、そこまで悪いことではない。
満貫をアガるためにする努力より、満貫を放銃しないための努力が昇段への近道かもしれない、ということだ。
そして、勘違いされやすいが、ベタオリ力とは、「安全な牌を選ぶ技術」ではない。
ベタオリ力とは、「この局はベタオリしよう」「さあ、撤退だ」と決断する、"大局観"のことである。(=守備力の重心)
○孫子も認める、逃げる力
古くから伝わる戦略書『孫子の兵法』には、次のようなことが延々書いてある。
「勝てない戦はするな」
「敵を知り己を知れ」
「逃げるべきときは全力で逃げよ」
そう、孫子は、ベタオリの達人なのである(?)。
では、どういうときに、ベタオリすると決断すれば良いか。
それは、「明確に、後手を踏んでいる」と感じたときである。
具体的には、他家の先制リーチ、ドラポン、混一色2副露に対して、自分が2シャンテン以上のときなどだ。
対戦相手は、明確にサインを出してくれている。そして、自分の手がまだテンパイすらしていない、次に何を引いてもテンパイしない、"しょうもない手"であることは、冷静なあなたなら、とっくに理解できているだろう。
ここから、自己都合で放銃するようなことは、段位戦ではまずあってはならない。
麻雀は「何を切りたいか」を考えるゲームではなく、「何を切るのが得か」を考えるゲームである。目的を忘れないように。
段位戦における目的とは、「ポイントの期待値を最大化すること」であり、明確に後手を踏んでいる今は、アガリに向かうための打牌より、安全にオリる打牌を選ぶべきである。
ただし、友人と楽しい時間を過ごすことが目的の場合は、話が変わってくる。「安全牌は無いけど、とりあえずカンにゃ!」が最善の選択となることも、ときにはある、ということだ。
(その結果、友人と喧嘩になったとしても、自己責任で。僕は悪くないにゃ。)
○小さなことならコツコツと
初めはとにかく、"シンプルなルールを決めて、それを守る練習"をすると良いだろう。目標が達成できたがどうかが、チェックしやすいからだ。
(例:「対先制リーチには、ノーテンから押さない。」など。)
あなたの尊敬する麻雀プロも、「攻守共に優れた至極の一手」を選択できるようになるまでに、きっと途方もない基礎の勉強や、試行錯誤、そして、数えきれないほどの失敗の山があったはずだ。焦らず、少しずつ、できることを増やしていくのが、憧れへ近づく最短ルートなのだ。
とはいえ、リーチを受けても、自分がテンパイしていたら、たいていは、押したほうが得である。
相手のアガリを潰して、自分が加点する可能性があるからだ。結局は、失点を回避することに繋がる。ここでは、逃げる(=オリる)ことが損になる。
1シャンテンのときは、これはもうどちらでも良い。どちらを選んでもOKだ。
ここは複雑すぎてパターンを分解するだけで本が1冊書けてしまいそうなので、「いけそう」なら真っ直ぐ進める。「無理そう」ならオリる。くらいに捉えておいて、たくさん経験を積むしかないだろう。
(先に危険になりそうな余剰牌を切ってしまう"スリム化"の技術も、ここに含まれる。)
仮に、直感で選択して、悪い結果になったとしても、気にする必要はない。自分の直感力を鍛えることができた、良い経験になったと思おう。
こういう経験が増えれば増えるほど、「なんとなく、後手かもな」「まだギリギリ、戦えるかもな」という"目"(=大局観)が養われていくのである。
1シャンテンからの放銃は、初めのうちは毎回じっくり反省するより、「あぁ、今回は良かったな」「いけると思ったけど、ダメだったな」と受け入れて、とにかく数をこなした方がいい。
雀聖タッチレベルなら、他家の先制リーチに対しては、自分がノーテンなら無筋は全部オリる、と決めてしまっても良いかもしれない。
それくらい、段位戦においてノーテンからの放銃が罪だということを、覚えておくと良いだろう。
○じっくり考えた90点より、パッと見の60点!
ベタオリのコツは、現物、字牌、スジ19牌、複数枚ある牌(他家が手詰まって放銃する確率が上がるため)から選ぶことだ。選択肢が複数あるときは、まずは現物、なければパッと見で安全そうなものを選ぶ。そして、後で牌譜を見て振り返り、もっと良い選択肢があれば、反省して次に活かす。
第三者のフィードバックがあればさらに良いだろう。
NAGAやMortalといったAIの牌譜検討サービスを活用するのもオススメだ。
ミスなく最も安全な牌を選ぶ能力において、AIの打牌はかなり信用できる。
とはいえ、短い持ち時間で毎回最善手を考えるのは疲れるし、結局ミスが増えてしまっては、本末転倒だ。
(時間切れで飛んでいってしまった赤5pに、あなたも、見覚えがあるのではないだろうか?「あっ」「ロンにゃ!(シュピーン)」)
楽できるのなら、楽していい。とりあえず通りそうな牌を切っておいて、脳を省エネモードにするというのも、戦略の一つだ。
その結果、うっかり放銃してしまって、「よく考えればもっといいのがあったじゃないか!」なんて言いながら、気長に成長していくくらいのほうが、ある意味ではずっと良いのかもしれない。
その代わり、集中して振り返る、反省する時間を作ること。
対局中、楽をするために、他で努力する。
コツコツと積み重ねたことが、未来の自分に返ってくるのである。
「仕方ない。コツコツやるか。」
と、言うことだ。
○待ち読みは、しなくていい
無理に、相手の待ちを読もうとする必要はない。待ち読みは難しい上に、そこまで役に立たない。
そんなことより、牌効率のミスを減らすことと、ベタオリすべき局面を見極めるほうが、ずっと優先度が高い。
それに、ベタオリ力を向上させれば、自然と思考のリソースに余裕ができるようになる。するとそのうち、他家の捨て牌を見たり、手配を想像したりすることが可能になる。
まずは、「リーチを受けたし、自分はノーテンだし、この局はベタオリだ!」と宣言する練習から、始めてみるのが良いだろう。
そこで安全牌を適当に切りながら、「あの人の打点は高そうだな」とか、「この捨て牌は、もしかしてチートイツかな」なんてことをぼんやり考えるのが、ネット麻雀をのんびり楽しむコツである。
(より詳しく知りたければ、『麻雀守備技術の教科書/井出陽介・小林剛』がオススメ。
待ち・打点による押し引きの上達には、『「統計学」のマージャン戦術/みーにん』がわかりやすい。)
○頭の良さより冷静さ
「ベタオリする」と決めて、仮に放銃してしまっても、怒ったり、落ち込んだりする必要はない。
大切なのは、正しく反省することだ。
どれだけ頭が良くても、知識があっても、感情的になっては良い判断はできない。
求められるのは、頭の良さより、冷静さだ。
まずは深呼吸をして、目の前の対局に集中する。そして、対戦が終わったら、こう問いかける。
「自分は最善を尽くせていただろうか?」
今できる、最善を尽くす。いつだって自分にできることは、これしかない。
怒りに任せて次の対戦の予約ボタンを押すことが、あなたにとって最善だと思うのなら、そうすればいい。負けたのは全て運が悪かったからで、本当の実力では勝っていると思い込んだまま布団に入るのが最善だと思うのなら、そうすればいい。
誰もそれを、止めはしない。
その選択は、短期的にはあなたを楽にし、長期的にはあなたを苦しめることになるだろう。
この葛藤は、「健康のために痩せたい自分」と「目の前のポテチを食べたい自分」の戦いに似ている。
どの視野での最善を選択するか、という問題だからだ。
「強くなりたい」と思うのなら、長期的な視点での最善を、選択する力を身につけることだ。
(これらの能力を身につけるには、瞑想やマインドフルネスの知識が役立つ。)
○ピンチの時ほど、真の雀力が試される
放銃することも、ラスを引くことも、決して悪いことではない。これらのリスクを承知で、危険地帯に踏み込む勇気が、麻雀には不可欠だ。もしあなたがたくさん負けたとしても、それだけたくさん戦いに挑んだ証拠だ。本当に強い人は、そのことを良く知っている。だから、他者への敬意を忘れない。
それより辛いのは、集中力低下によるミスや時間切れなどの、避けられたかもしれない失敗だ。明らかな牌効率上のミスや、ベタオリすると決めてからのオリ打ちほど、自分を責めたくなる気持ちが湧いてくるものだ。
「何をやってるんだオレは…」
「こんなんじゃダメだ」
気持ちは痛いほどわかる。
しかし、こんな時こそ、あなたの本当の雀力が試される時なのである。
「さぁ、切り替えて、ここからどう勝つかに集中しよう」
「もっといい打牌が無かったか、対局が終わったら振り返ってみよう」
あなたは、どれくらい素早く、この切り替えができているだろうか。
怒りや悲しみの感情を感じるなと言っているのではない。人間である以上、さまざまな感情が湧いてくるのは当然だ。
大切なのは、そこから切り替えること。逆に問題なのは、感情に支配され、非合理的な思考・行動をしてしまうことだ。
感情はコントロールできなくとも、行動はコントロールできる。(詳しく知りたければ、"認知行動療法"について調べてみるといいだろう。)
ミスをしてうっかり放銃しても、次の局に最善を尽くすことはできるし、どうしようもないラスを引いたときでも、気分転換に好きな曲を聴くことはできる。
このように、素早く冷静さを取り戻す技術は、身につけておくに越したことはない。
またこうして、遊びながら心が鍛えられるのも、麻雀の大きな魅力と言えるかもしれない。(千羽師匠曰く、「麻雀は"心を育むゲーム"」。)
ときには、休むことが最善なこともある。
健康であることは、何より大切だ。
とはいえ、段位戦のポイントを増やすための最適な戦略が、「自分は強い」と思い込んで、反省しないことであると、まさか本気で信じている人はいないだろう。
ただいっとき、冷静さを失っているだけだ。そういう僕も、理不尽に負けて、麻雀をやめようと思った経験が、何度もある。というより、心が折れた回数など、もうキリがなくて数えていない。(今も月に1〜2回ペースで「もう麻雀やめるにゃ」などと言っている。)
ミスは誰にでもあるし、ミスしなくても負けるときは負ける。最初からそういうゲームなのだ。
負けた理由をあれこれと探すより、さっさと切り替えて、「今日の晩ご飯は何にしよう?」と考えるほうが、よっぽど有意義である。
もし、これを読んでいるあなたが今Mリーガーで、「次の試合の結果で、人生が変わるんです」というなら、話は別だが。(だとしたら、この文章に答えを求めるのは、間違っている。)
たかがネット麻雀の1回のミスで、長い麻雀人生に活かせる学びが得られたのだ。
決して、損ということはないだろう。
というより、こうした理不尽すらも楽しめるようになることこそが、麻雀の醍醐味だと思うのだが…。どうだろうか?
勝っても、負けても、結局、麻雀は楽しい。
○インプットとアウトプット
知識を得た後で大切なのは、実行することだ。これを読んで満足しただけでは、現実は何も変わらない。
まずは、ウザク本赤の何切るを1問解いてみること。もしくは、「こういう時はベタオリしよう」と方針を定め、そのルールを守って一局打ち、振り返ってみること。
あとはいつも通り、対局を楽しめば良い。
そのうちに、自然と、次に学びたいことが見つかるだろう。この学びのループに入ってしまえばもう、こっちのものだ。
(インプット→アウトプット→フィードバック→インプット→…)
やりだしてみたら、面白くなって止められない、なんてことは、よくあることだろう。
難しいのは、最初の1ループ目を、クリアすることだ。
これを読んでくれたあなたが、目の前のポイントの増減に振り回されて、「オレはなんて麻雀が下手なんだ…」「やっぱりオレは生まれつきの天才なんだ…」などと、麻雀の技術を学ぶことをやめてしまわないでほしいと、願うばかりである。
無理のないペースで構わない。どうか、麻雀を楽しむ心を、忘れないでいてほしい。
麻雀は本来、楽しいものだ。
そして、学ぶことは、楽しいことだ。
ただ、より大きな楽しみを味わうためには、目の前の小さな苦痛を受け入れる必要がある。
こんな長い文章を、ここまで熱心に読んでくれたあなたなら、もう最初の大きな一歩を踏み出したも同然だろう。
あなたの脳は、既に新しい知識を学ぶ快感に、ワクワクしているのではないだろうか?
あなたの近くにも、同じ志を持つ仲間がいるかもしれない。一人では辛いのなら、彼らと一緒に、楽しみながら、進んでいくといい。
仲間との会話は、インプット、アウトプット、フィードバックの連続だ。それ自体が、遊びであり、学びである。
もちろん、これを書いている僕も、志を同じくする一人だ。画面の向こうで、あなたと戦える日を、楽しみに待っている。
もし、どこかで出会えたら、そのときはどうぞ、お手柔らかに。
麻雀を長く楽しむために、牌効率とベタオリ力は、是非磨いておいてほしい。きっとこの先、おそらくは一生、役に立つだろう。
○まとめ
一人麻雀力を身につけて、効率良く雀力を磨こう。
一人麻雀力=牌効率+ベタオリ力
・1シャンテンの「何切る」を解く
・ベタオリすべき局を見極める
・大切なのは"基礎"と"冷静さ"
何よりやっぱり、楽しく打つ!
2023年11月21日 horiwo128
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