「中途」とは、中途半端なのか。

経団連の会長、十倉雅和さんの記者会見が少し話題を集めている。

いわく「中途採用」を「経験者採用」と表記見直しを実施するとのこと。

(YouTubeでは、15:30あたりから言及されている)

前職で人事責任者を務めていたときは、「キャリア採用」という言葉をウェブサイトでは使っていた。

一方、社員同士のコミュニケーションでは「新卒採用」「中途採用」という言葉を用いていた。

その違いに、特に意図があったわけではない。ただ人事仲間の間では「キャリア採用」「経験者採用」という言葉は通じるが、事業部の社員には通じない。というか「中途採用」という言葉を用いた方が、間違いなく、コミュニケーションコストは発生しない。楽に、確実に伝わる方を選ぶべきだと本能的に感じていたのかもしれない。

十倉さんは、会見では笑いながら、「中途採用ってのは、なんか中途半端みたいな感じのイメージ湧きますんでね」と話していた。時折笑みを浮かべながらの記者会見だったので、これが通常のトーンなのか、冗談なのかは判別がつかなかった。だが、いずれにせよ、「中途」という言葉に、中途半端という意味が込められているというのは、俄に納得はできないものだった。

中途とは、道中の半ばを意味する言葉だ。

中途に「半端」という言葉を添えて、初めて中途半端という「不完全で、どっちつかず」という意味になると僕は認識している。

では、どうして十倉さんは、中途採用=中途半端だとイメージを持っていたのだろうか。内心で「新卒>中途」だと思っているのか、中途採用で入社する社員は長く勤続することができない人物だと思っているのか、その辺りの深層心理は分からないものの、中途採用という言葉に対してネガティブなイメージを、おそらく相対的に高く持っていることが窺えた。

別に、僕は「キャリア採用」「経験者採用」という言葉が不適切だと思っているわけではない。会社が求めるポジションやジョブに対して、必ずしも社会人経験のある求職者に、「その経験」があるかどうかは定かではない。中には学校を卒業して、しばらく定職につかなかった可能性もある(もちろん悪いことではない)。そういった意味で、経験者採用という言葉は、わりと範囲をギュッと小さくしてしまうものではないか?という懸念はある。だけど、運用に支障が出るレベルのことではないはずだ。

だから僕は、どっちでも良い。

ただ、中途採用=中途半端だとイメージがいかに築かれたのかには関心がある。十倉さんに限らず、その年代やクラスターの方々にとっても同様のイメージなのだろうか。

このことは、経団連がまとめている「2023年報告書案」にも盛り込まれているらしい。その背景や思惑を、もうちょっと追ってみようと思う。

でもやっぱり、新卒採用と経験者採用では、MECE感がないよなあ。経験者採用という言葉を使うならば、一緒に使うべきは「未経験者採用」だろう。新卒も、社会人未経験者も一緒くたにして。

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