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不平等約束

「ここはね、車が通るかもしれないから走っちゃダメだよ。お約束ね」
「ご飯食べるときは、ちゃんと椅子に座ってね。お約束だよ」

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息子と、このような約束を毎日交わしている。でも、約束はたいてい破られる。守られないたびに頭を抱えてしまっていたのだけれど、息子側にメリットが少ないからでは?と考え至った。

そりゃ交通事故になんて誰だって遭いたくない。日々を無事に暮らせることは息子にもメリット(というか生きる上での最低条件)ではあるけれど、それ以上にほとばしる「走りたい!身体を動かしたい!」という欲求は満たせなくなる。

お腹も空いたけれど、目の前のオモチャに気が移ってしまうのは、息子なりの判断なわけで。「確かに腹は減るけれど、それに目を瞑ってでも遊びたい!」という思いであれば、その意思はある程度汲んであげないといけないのではないか。

まだ4歳だから、大人のように上手く言葉を紡ぐことはできない。「だって遊びたいんだもん」という言い訳じみた言葉は駄々のように聞こえるから、ワガママ認定して、大人の都合を優先させてしまう。

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かつて日本は、欧米に不平等条約を強いられていた。

代表例が、江戸時代末期に結ばれた日米修好通商条約だ。治外法権を認め、関税自主権を放棄させられるというもの。国同士のパワーゲームが今よりも露骨だった時代、「黒船」という強大な力を見せつけられた日本はアメリカに怯え、ろくに交渉することなく条約を締結してしまった。(拒否すれば、当時の清国のように戦争を仕掛けられてしまっただろう)

同じように、僕も息子に対して「黒服」的な何かをチラつかせているのかもしれない。

冗談でなく、彼らの生命は僕の手にかかっている。両親がご飯を作らなければ彼らは飢え死にするし、クーラーをかけなければ熱中症で死に至る。だから息子は、大人の言うことに従うしかない。そんなパワーバランスが前提であることを忘れてはいけない。

子どもにだって権利はある。遊んだり、走ったり。ご飯が食べたくないときだってあるだろう。そのまま子どもの言い分を認めるかどうかは別にして、子どもの意思を尊重しなくてはならない。

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幸いなことに、ふたりの息子は、毎日元気いっぱいである。

権利とか義務とか、そんなことどこ吹く風で、灼熱の真夏を楽しんでいる。ちょっとした約束を日々交わしてしまうけれど、「この約束は本当に必要だろうか?」と立ち止まって考えるようにしたいと思う。

彼らが、毎日を楽しく過ごせますように。それだけで、いまは十分だろう。

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