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熱量を忘れないために、メモ絵を描く。

ポンチ絵ほどちゃんとしていないけれど、僕はノートでメモをとるとき、ちょっとした絵を描くことがある。(とりあえず「メモ絵」と呼ぶ)

少し前に参加したイベントで、席が隣だった方に「堀さん、ノートに何の絵を描いているんですか?」と聞かれた。

まさかノートを見られているとは思わなかったし、僕もあまり意識せずにメモをとっている。なのでその質問自体が驚きだったのだけど、そういえば僕は何の絵を描いているのだろうか。

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そのイベントでは、アメリカンフットボール選手のコリン・キャパニックさんを起用したNIKE30周年広告が紹介されていた。

2016年8月。試合前に、人種差別に抗議して国歌斉唱を拒否したキャパニックさん。彼の行動は非難され、結果的にチームを解雇されてしまう。そして、いまに至るまでNFLでプレーができていない。そんな彼をNIKEはCMに起用したという……。

プレゼンターが言及したCMについて、僕は全く知らなかった。だが"Believe in something. Even if it means sacrificing everything.(何かを信じろ、それがたとえ全てを犠牲にするとしても)"というコピーとともに、キャパニックさんの顔が大写しされたビジュアルのクリエイティブはものすごく印象的で。僕は、とっさにスライドのクリエイティブをメモ絵に残した。

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僕はけっこうノートを書く方だ。

プレゼンを聴きながらメモを取るのだが、スライドには書いていないがプレゼンターが口にしたことを速記することが多い。プレゼンターが殊に強調していることをしっかり印象に残したいからだ。後日配布されるスライドと共に、メモを読み直す。それだけで理解はグッと深まると僕は思う。

しかし残念ながら、人間の記憶というのは曖昧なものだ。

メモをとったとはいえ、そのときにプレゼンターが話したことの多くは忘れてしまっている。記憶していても、そのときのプレゼンターの熱量までは汲み取れていないことが多い。

それを恐れて、僕はメモ絵を描くのだ。

キャパニックさんの行動や、NIKEのクリエイティブは、僕にとってはものすごく衝撃的だった。こういったキャンペーンを、NIKEのような大手企業が毅然と行なうことは、アメリカという社会の寛容度を象徴しているなあとも思う。(日本で同じようなことをやれる胆力と教養と意思のある会社が、どれだけあるだろうか)

正直いって、僕のメモ絵なんて大した出来ではない。絵を描くのは苦手だ。

だけどノートを読み返したとき、メモ絵には、僕がそのときに感じた衝撃や熱量が反映されている。正確に描く必要はない。雑で構わない。

衝撃や熱量を、高い解像度のまま維持したい。そのために「メモ絵」は絶対に欠かせない表現なのだ。

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