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平田良介の想いを、文字は伝えられるのか。

中日ドラゴンズから自由契約となった平田良介さんが、YouTubeで現在の心境を語っている。

もともとInstagramで、10月30日に「重要なお知らせ」を予告していた。

平田さんは、ここ数年間はピーク時のような活躍ができていない。来シーズンは最下位からの巻き返しを狙う中日ドラゴンズにとって、功労者的な存在である平田さんの自由契約は「悲しいけれど、やむなし」というのが大勢を占めていた。しかしながら自由契約になってからの会見が物議を醸してしまい、ただでさえ他球団への移籍が心配される中で、不安材料が増すような事態になっていた。

それゆえ「重要なお知らせ」は、現役引退の決断なのでは?という憶測が飛び交った。だが結果的に杞憂で、ファンへの想いを静かに語るような動画だった。プレー中は明るく元気いっぱいの平田さんが、スーツを着て神妙な面持ちの姿はこちらも心苦しくなってしまったが、現役続行が叶うよう心から応援している。

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10月30日正午に公開された動画を、僕が観たのは2日後だった。

その間に、色々なメディアで動画についての記事が書かれていた。それをだいたい読んでいたので、動画の内容自体は知っていた。知っていただけでなく、どちらかといえば平田さんの発信について「なぜ、このタイミングでそんな内容の動画を発信するのだろうか?」と疑念を抱いたのが正直なところだった。

だけど、動画を観て、そういった疑念は吹き飛んだ。

前述した通り、神妙な面持ちで、言葉を選びながら現役続行を望んだ平田さん。その姿を見ると、ピーク時の活躍を思い出してしまうし、最後まで頑張ってほしいという想いに駆られる。

ただ、自分の思考プロセスを省みたときに、

・テキストの記事だと平田さんの想いを汲み取ることができなかった
・実際に動画を観て、ようやく平田さんに対して応援したいと思えた

という感じで、テキストと動画で、だいぶ自分の印象に差が出ていることを自覚した。(もちろんオウンドメディアか否かの違いはあるけれど)

動画全盛期とはいえ、広い範囲でリーチする力はテキストメディアの方が大きい。動画よりも効率的に情報をインプットすることができるからだ。だが、テキストによって発信された平田さんの情報に、平田さんの想いは組み込まれていなかった。「何を言ったか」という事実が中心で、良くも悪くも言葉足らずな平田さんの想いは誤読されて伝わってしまっているのではないだろうか

動画を観ると、「ああ、平田はこんなふうに思っていたのか」と、思い直す人が続出するだろう。平田さんの言葉は、平田さんの感情をまっすぐ投影しておらず、ちょっとだけ行間を拾わないと真意が伝わらないのだ。野球選手として絶好調のときは良いキャラクターなのだが、窮地に立たされたときのコミュニケーションはやや後手に回ってしまう。

文字を繋ぎ、文章を紡ぐ書き手として、編集者として、この状況(ギャップ)は考えものだと感じた。世の中には、言葉を発するのが得意な人ばかりではない。そうしたときに、意図や想いが正しく伝わるような手段を、文字が担うことができるのか。

言葉を扱う者として、じっくりと考えてみようと思う。

#平田良介
#中日
#中日ドラゴンズ
#BASEBALLTALK
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