砂に抗えるか。(安部公房『砂の女』を読んで)
久しぶりに安部公房『砂の女』を読んだ。
砂丘へ昆虫採集に出掛けた学校教師・仁木順平が、砂まみれの村に軟禁されてしまう物語。1962年に刊行され、「自由とは何か?」「何のために生きるのか?」といった普遍的なテーマが、“現実にはあり得ない”ような寓話小説として描かれた作品だ。20数か国語に翻訳された安部公房の代表作だ。
物語はほとんど、男自身の葛藤と、男と女のやり取りのみで構成されている。砂の穴奥深くに幽閉された主人公(男)が、どうかにして脱走を試みる。「一晩だけ宿を借りただ