「かわいそうランキング」って、「おっさん差別」なんですか?
いわゆる「かわいそうリスト」または「かわいそうランキング」
最近は、「かわいそうリスト」または「かわいそうランキング」という言葉(ネットスラング?)が割と使われるようになっています。これは事件・事故や社会的な不正などの被害を受ける立場の人間の中でも、世間一般に(主としてメディアの取り上げ方で)同情のされ方に違いがあるということです。例えば「小さな子どもが何かの被害者になると同情されやすい」などと言われています。
「おっさん」が最下位で差別されているのか?
論者によって違いはあるでしょうが、一般には「子ども」「女性」が上位で、「中高年男性」=「おっさん」が下位(「おっさんが最下位だ」という人もいます)とされているようです。
さらには「おっさんが事件や事故の被害を受けても、誰も騒がない。おっさん差別が行われている」と主張する意見も見受けられます。果たしてどうなのでしょうか。具体的に考えてみることにしましょう。
「子ども」の場合
犯罪や事故の被害のニュースの取り上げ方を思い出してみると、確かに「子ども」が被害を受けた場合、メディアが非常に大きく取り上げることが多いのは、誰もが心当たりのあるところでしょう。
これは新聞雑誌の読者やテレビの視聴者の立場(つまりニュースの受け手)の側から見ても、一般的に、子どもは「かわいい」ものであり、また将来があるから、悲惨な出来事で同情や共感を集めやすいなどの理由で、説明は可能だと思います。
「女性」の場合 - 中高年なら男女差はない?
次に「女性」ですが、これは「若い女性」と「中高年女性」(「おっさん」に対比させるなら「おばさん」)とで分けた方が良いでしょう。
まず「おっさん」と「おばさん」は、メディアの取り上げ方にそれほど有意な差はないように思われます。(具体的な統計を取っているわけではないので、ひょっとしたら何かの差があるかも知れませんが。)
例えば50歳の女性が事故に遭ったニュースと、50歳の男性が事故に遭ったニュースでは、一般的に取り上げ方、つまり被害者への同情的なニュースでの表現に大きな差はないのではないでしょうか。
「若い女性」の場合
「若い女性」となると、これは明らかに「おっさん」よりは扱いが大きく、同情的な表現の度合いが強いように感じられます。
例えば10代や20代の女性が事故や事件の被害者になった場合は、50歳の男性が同様の被害者になった事件よりも遥かに派手に、また同情的に取り上げられていると言えるでしょう。
「おっさん差別」と言えるのかどうか - 需要の問題
さて、このような「若い女性」への同情的な取り上げ方が強いという現象は「おっさん差別」なのでしょうか。
「女子大生○○事件」が「中年男性会社員○○事件」よりも派手に報道されるとしたら、それは前者の方が、派手に報道されるだけの需要があるということであり、またそういう新聞・雑誌を買ったり番組を見たりする人が多いということを意味します。それはいったいどういう視聴者・読者なのでしょうか。
「若い女性」の派手な報道を望むのは誰なのか?
結論からいうと、「女子大生の事件」の番組や記事を「おっさんの事件」よりも見たがるのは、他ならぬ「おっさん」だということになるでしょう。男性一般といっても良いのでしょうが、やはり新聞雑誌やテレビの視聴者の中で大きな影響力を持っているのは、若い男性よりは中高年の男性と考えられます。
中高年男性=おっさん自身が、「おっさん」の事件・事故よりも「女子大生」や「少女」の事件・事故の方に興味を持つとするならば、後者が派手に取り上げられるようになるのは、自然な成り行きということになるでしょう。
「美少女コンテスト」と事件・事故の報道の構造は同じ
身も蓋もないことを言えば、「美少女コンテスト」があっても「中高年美男性コンテスト」が(ほとんど)ないのと同じような理由で、「少女」の事件・事故の報道は「おっさん」の事件・事故よりも派手になっているのです。
「若い女の子の事件や事故の方が、おっさんの事件や事故よりも大きく取り上げられるのは、おっさん差別だ」と主張するのは、「少女コンテストがあるのに、おっさんコンテストがないのは、おっさん差別だ」と主張するようなものでしょう。
「おっさん」自身が「おっさん」より「若い女性」の報道を求めている
コンテストだろうと、事件や事故だろうと、若い女性に関する物事を中高年男性のそれより大きく取り上げたがるのは、まさに男性の観点からの需要がそうなっているからとしか言いようがないわけで、これを「おっさん差別」だというなら、「おっさんを差別しているのは、おっさん(男性)自身」ということになるでしょう。
よろしければお買い上げいただければ幸いです。面白く参考になる作品をこれからも発表していきたいと思います。