『ひとり空間の都市論』を読む
『ひとり空間の都市論』
南後由和 緒
ちくま新書 (2018.01.10)
この本を知った切っ掛けは、(2020年)1月12日(日曜)の読売新聞の特集記事「シングルスタイル」だった。
はじめに
2011年の東日本大震災以降「つながり」「コミュニティ」「分かち合い」などの議論が溢れるようになってきた。
同時に 2000年以降の「おひとりさま」「単身者」の是非についても論じられている。
特集記事より
カプセルホテル、ネットカフェ、漫画喫茶、ひとり○○○店など、都市の「ひとり空間」で、間仕切りで仕切られた有料商業空間について論じられている。
アメリカの文化人類学者 エドワード・ホールは「日本人は他人の視線に敏感で 音には鈍感」と指摘しています。
視線を遮るモノ(装置・設備の)として間仕切りがあることになる。
一方で、日本人には昔から「狭小の美学」がある。
その代表的なモノに 茶室 がある。
狭くて小さいことは貧しいことではなく、精神的な広がりを感じ「ひとり空間」も居心地が良い。
「ひとり空間」の将来像
ひとりの居場所と言えば「ワンルーム」の個室と云うイメージですが、今後は「シェアハウス」のような「みんなと、ひとりで居る」新しいライフスタイルがイメージされる。
新書本より
「ひとり空間」のマトリックス
(読売新聞/2020.01.12/特集シングル)
▷ 商業空間・有料/間仕切りあり
カプセルホテル
インターネットカフェ
漫画喫茶 など
▷ 商業空間・無料/間仕切りなし
カフェ
ファーストフード店 など
▷ 公共空間/間仕切りあり
トイレ など
▷ 公共空間/間仕切りなし
図書館 など
個 ✕ 個 のプラットフォーム
官の時代:1960年代 西新宿の超高層ビル群
民の時代:1980年代 渋谷の民間主導による大型商業施設の開発
↓
1990年代後半から2000年代初めの「個室をモデルにした趣都の誕生」
アニメ・キャラクター文化
秋葉原をIT産業の世界的拠点に
「秋葉原クロスフィールド」
シェアリングエコノミー
ひとりの時間のみならず、空間・モノ・スキルなど、ネットワーク化することにより「ひとり」から「ひとり同士」と云う関係に あり方を変えつつあります。
【シェアリングエコノミー】
総務省ホームページ
『平成27年版 情報通信白書』より
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242110.html
都市の「ひとり空間」の行方
P2P:対等な者 同士
Peer to Peer
個々の端末が分散したまま対等に通信を行う
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/Peer_to_Peer
IoT:モノのインターネット
Internet of Things
製品と部屋など、あらゆるモノがインターネットに接続され、リアルタイムで把握することが出来る。
離散的なネットワークは「空間の商品化」を徹底するでしょう。
【参考】
『建築雑誌』日本建築学会
2015年1月号
特集:日本の おひとりさま空間
http://jabs.aij.or.jp/backnumber/1666.php
南後由和さんのウエブサイト
2020.01.21
2020.01.27 加筆
2020.02.04 掲載紙挿入