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『豊かさの条件』を読む

『豊かさの条件』
暉峻淑子(てるおかいつこ)著
岩波新書 (2003.05.20)

「はじめに」より(抜粋)

戦後 営々と築いてきた人権と民主主義の社会が まるごと悪いとでも云うように、そしてそれが不況の原因だとでも云うように扱われている。
そして、差別をなくそうとする平等への努力は嫌われ、競争社会の格差を広げる事が社会の活性化だと信じられている。
(略)
連合白書は、人々が抱く不安を「雇用不安」「生活不安」「将来不安」と名づけている。

【追記】

『2003連合白書』(2002.12.25 発行)

〇 P7:Ⅰ.情勢認識と基本的考え方→「雇用不安」「将来不安」「賃金不安」「社会不安」の解消にむけて

〇P56 :こうした企業行動が、雇用不安・生活不安→個人消費の低迷→需要減・市場低迷 →企業業績悪化というマクロの悪循環をつくりだしている。

終章より

【互恵互助】

もともと市場経済は【互恵互助】の原理を持っていた。
相手の資源(物)を「物々交換」と云う方法で交換しあっていた。
交換ルールを決めた「市場」の発達によって人々は より豊かな生活資源を 手に入れる事が出来るようになった。

いつの頃からか?便利と安楽を金融を介して求める時代になり【互助互恵】の原理が効かなくなった。

人々と「共に生きよう」とする高い資質の知は、人間にとって真の資本であると思う。

これからの課題は、競争ではなくお互いに助け合う【互助互恵】の原理が大切だと考えます。

pp.239〜240.(抄)

著者は この本で、競争原理とは質的に違う人間社会の「生命の源になる土壌を豊潤にし、植物の根をしっかり張らせるような、豊かな生命力をもたらす経済と政治に組替えていくべき。」と提起する。

2003年に出版された本。内容的に今(2020年代)も示唆に富んでいる。

2021.03.15
2021.03.16 加筆

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