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「G線上のあなたと私」ドラマの仕上がりに震える

いくえみ綾作品を10代からずっと読み続けていますが、近年で1番大好きな作品が「G線上のあなたと私」です。ドラマ化するという話を聞いた時は「ムチャすんな!」と思いましたよ。

同時期に連載していた「太陽がみている(かもしれないから)」が映像化するならまだわかりますよ、ドラマ的要素が沢山あるから。G線は大人のバイオリン教室に通う3人の日々とやり取りを描いた話なので、1クールのドラマとして成立するものなのか疑問だったのです。

でも、原作はその3人の他愛のないやり取りが尋常じゃなく面白いのです。恋愛とか友情とか以前に「会話劇」として最高の作品なのです。

也映子という最強キャラクター

1話目タイトルは「私には何もない」でした。也映子は婚約者に振られ職場も辞め、ポカンと空いた穴に落ちそうな状況だったけど、溺れる者はバイオリンという藁を掴み、何もない状況から仲間を手に入れる。

とにかくこの作品は、也映子のへこたれない明るさとユーモアが物語を引っ張っていくのです。だから、也映子役はすごく難しいと思った。綺麗すぎず、でも愛嬌がある也映子。波瑠さんがやると聞いた時は「イメージ…遠いよ…多分、綺麗すぎて也映子には見えない…」と落胆したのです。もっと無名の女優さんでいいからイメージに近い人はいないんかい⁉︎と。

ドラマを見てひっくり返る

波瑠さんの也映子、綺麗だよ。波瑠さんだもん、そりゃ綺麗だよ!でも、也映子の持っている『残念なところもあるが愛嬌があり実はメンタル強い』という最強の魅力が何故か滲み出てた!

幸恵の松下由樹さん、理人の中川大志さんも「どうなんだろう…」と思ってたけど、どちらもすごくいい!特に理人の暗いのに負けず嫌いで、ちゃんと也映子と幸恵と受け答えして、たまに敬語使わずラフになるところ。あんなのキュンとくるだろよー。

原作より重要視されている存在は眞於役の桜井ユキさんですね。原作ではあまり見えてなかった要素の情熱とか冷たさとか強さを合わせ持つ存在となっていると思う。

原作と比較した1話の脚本と演出について

こんなに色々膨らませますか!という位の脚本と演出効果があったのでまとめてみました。

3人がバイオリンに出会う場所がショッピングモールに集約されている

原作で也映子はCDショップで流れていたDVDでG線上のアリアに出会います(ドラマでは也映子が婚約者にふられた日に部屋で観ていたテレビ映像が同じものかな?)

ドラマでは同じ場所で眞於の演奏を聴いて、バイオリンを弾きたいという思いに駆られる也映子と幸恵。(理人は眞於への思いからバイオリン教室を利用するのだけれど)3人の動機があのショッピングモールの1ヶ所に集約されていて、ある種の運命感を感じさせる演出でした。

也映子の事情を話した後の幸恵と理人のリアクション

泣き出す也映子を前に慌てて「延長でお願いします!唐揚げ、メガポテト…」「揚げ物祭りでいいんじゃない?」と気遣う理人と幸恵・・・いい!この3人だからこそ今後関係性が深まるんだなぁということが納得できる良いシーンです。

原作では眞於と侑人は芙美の妊娠を機に別れたのではない

原作で侑人が眞於と別れた理由は、侑人が眞於の家に行って家柄や色々な環境の違いを感じてしまったから。也映子が「あなたのお兄さんはひどい人です。ろくでなしです!」と理人に言うシーンがあるけれど、ドラマ版では芙美(原作では史ちゃん)の妊娠により一層「マジでろくでなし!」感が強まっている。

どうしてわざわざハードな設定にしたのかなぁといくつか考えてみました。

① 也映子と眞於の婚約破棄を「対となる出来事」としたい

原作では侑人と眞於が別れたのは理人が学ランを着ている頃=数年前と思われます。数年前であれば傷が少しは癒えている可能性もある。也映子の婚約破棄と対の出来事とするには、眞於の婚約破棄も同時期であり、なおかつ也映子が元婚約者にはぶつけきれなかった「ひどい!」の言葉をぶつけられるだけのエピソードが必要だったから。

② 也映子に元婚約者に対する想いを振り返らせるため

理人は「相手にみっともない程すがって、それでも無くしたくない感情が本当に好きってことなんじゃないか」と言っていたけど「好き」の形は色々あるわけで。也映子だって元婚約者への想いはあったけど、そういう好きとは種類が違ったのかもしれない。

「本当に誰かを好きになったら、好きな人に気持ちを簡単に言えないってわかるはず」という台詞は理人の眞於への想いも強く反映してますよね。

也映子は婚約破棄になり傷ついていたけれど、それは相手を失う悲しさよりも、職場も辞めて宙ぶらりんの位置にいて可哀想と思われてしまう自分に傷ついていたのでは?と振り返らせるため。

③ 眞於をより魅力的に見せるため

理人が長年惹かれている眞於。そこに説得力を持たせるには眞於の魅力を描く必要性があります。第2話で理人と出会った頃の様子が描かれるようですが、綺麗で優しいだけじゃない、眞於というキャラクターをより多層的で魅力ある存在に見せるためなのでは。

46万円の振り込み

慰謝料として元婚約者から振り込まれた46万円。原作にこの描写は全くありません。確かに40万でも50万でもないこのハンパな金額は、出来る限りの誠意を最大限に表した絶妙な金額かもしれない。その前の也映子の通帳残高が約167万円だったから、也映子は残り約200万で神様がくれた休息の日々を過ごすことになるのですね。このお金が少なくなる頃には色々なことが変わっているはず。

その他 良かったところ、気になったところ

・也映子と幸恵だけのカラオケ 

カラオケで理人の恋愛話をしている也映子と幸恵が、会話を重ねるうちに少しずつ敬語ではなく砕けた口調になってくる場面。20代と40代の2人の距離があのカラオケの部屋で近づいていくのが見えるのです。このシーンが「ドラマになって良かったぁぁ!」と1番嬉しかった場面でした。

・年齢差が微妙に違う

原作での年齢差:出会った時に理人19歳、也映子25歳、眞於29歳=也映子と理人は6歳差、眞於と理人は10歳差。

ドラマでの年齢差:理人と也映子・眞於は8歳差=理人19歳、也映子・眞於27歳ということですね。年齢設定をどうして変えたのか意図を知りたいなー。

・也映子が元同僚と街で会った時「その顔やめてー」と心の中で思った『哀れみ笑顔先輩』の顔が原作そっくりで最高だった。

・いとこ役の真魚ちゃんへ也映子渾身の低音「やってらんないもんねー」、いい!

・初めてのカラオケ練習で「食べていいですか?」「1曲いいですか?」に対する理人のリアクション、いい!

・ビブラート関連の理人名言「わかってるなら、やれよ!」「あなた達一生ビブラートかかんないから!」、いい!

・原作では、幸恵の夫の浮気話を義母にはしてないはず。ドラマでは言われっぱなしではなく、幸恵の小さな逆襲が見れてよかった。

公式で也映子のメガネが売っている

公式ホームページでオリジナルグッズを販売しているのですが、何ということでしょう、也映子モデルのメガネフレームが売っていた!「yaeko」と刻印が入っているそうです。危うくポチりそうになった手を止めましたが、今後我慢できるか心配です。

(追記 : 記事作成翌日の10/20に公式ページ見に行ったら既にsold outになっていた…うぉぉ何か悔しい!)

火曜が楽しみで仕方ない

2018年5月7日に体験レッスンが始まり、それぞれの事情を持った、出会うはずのなかった3人の物語が始まりました。

私はこの作品は「他愛のない瞬間の積み重ね」が裏テーマだと思っています。さぁどこに着地するのでしょうか。バイオリンのレッスンは月曜19時ですが、火曜22時が楽しみな3カ月となりそうです。

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