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わたし2.0

 というYouTubeチャンネルを好んで見ている。「わたし2.0」はいわゆる垢抜け大変身系の動画を出しており、最初はいかにも暗い顔で立っていた人物がメイク中にその辛い境遇や悩みを語り、最後には明るい光の下を笑顔で歩いて人生の抱負を述べるという構成になっている。

 私が子供の頃のテレビ番組にもこの手の企画があった覚えはある。ただ、その頃は今ほど好んで見た記憶はない。番組で「垢抜けてない」とされる女性は分厚いメガネの下にぱっちりした二重を備えていたり、肌には赤みこそあれニキビ跡はなく、話をするたびに血色の悪い唇から真っ白で美しい歯並びが垣間見えていたからだ。

 ただ、このYouTubeチャンネルに登場する男女は、あの番組で「垢抜けてない」とされていた人よりもずっと「垢抜けてない」人物像に近い。肌には隠しきれない荒れもシミやシワもあり、目が分厚い一重の人もいるし、歯並びもまちまちだ。そもそも最初の立ち姿からして、生気がない。顔立ち云々ももちろんだが、この力のなさはテレビ番組よりよっぽどリアルなものだった。

 だから、変身後の姿も等身大でリアルである。実際にコメント欄を見ていてもテレビ番組のように女優のような顔立ちに変わったとか、アイドルのようだと称賛されてはいない。ただ、例外なく全員に目の輝きが戻り、物凄く感じが良くなる。上品で優しげで、笑顔の写真がとてもかわいい。

 自信のある笑顔って最強だなあ。人に自信を与えてくれるメイクとファッションって凄いなあ。としみじみ考えた。

 自分より可愛かったり綺麗な人は後にも先にも無限にいるけれど、自分の中にも振れ幅はあって、等身大の自分の中で一番素敵な自分に近づくこともまた人生の楽しみかもしれない。

 これはこの動画に登場した人のことではないけれど、メイクをして綺麗になって、馬鹿にした奴を見返してやるという人を見たことがあった。でもいざ変身した後は、自分が綺麗になったことが嬉しくて自信を持てて、もうそんな人のことはどうでも良くなったと笑っていたのが印象的だった。

 自分の自信は、誰かに認められたり褒められたり求められることで得られるものと、自分で自分に満足したり嬉しくなることで得られるものがある。この人は後者で自信を得たのだろうなと思うと、なんだか嬉しくなった。

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