教科書を読む「ごんぎつね」⑦
TBSアナウンサーで絵本読み聞かせを行い、
いま順番に配信しております。
私は、講談社 講談絵本 「大岡越前」
を担当。
本日YouTubeに上がったとの事でしたので
もしよろしければ覗いてみてください。
「(おおおかえちぜん)」よみ:ほりい みかアナウンサー【TBS】 youtu.be/aK7SjZ1oyjc
バラエティのポップなものや、
BSの旅紀行などのナレーションは
何のストレスもありませんでしたが、
男性の声や事件もののナレーションなど
低く重厚感ある声が出ませんでした。
毎日宝塚男役の発声練習をして、
加賀美幸子さんのナレーションと
幸田弘子さんの朗読を
耳に叩きつけました。
20代後半のその頃はまだ
カセットテープだったので
往復2時間の電車の中、
いつもかちゃかちゃやってた気がします。
歳もあってか10年くらい前から、
戦争特番、事件もの、
深夜のドキュメントなど
担当させていただけるようになりました。
なんでも少しずつ長くコツコツですね。
という事で、すみません、なかなか終わらない
ごんぎつね、今日も参ります。
兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。
兵十は今まで、おっ母と二人きりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」
こちらの物置の後うしろから見ていたごんは、そう思いました。
赤い井戸も麦も貧しさの象徴です。ここは飾り立てずに質素に読んでいきます。
もう一人ぼっち、の「もう」と「一人」の間にも溜息をはく間を入れたい。そのあとの「おれと同じ一人ぼっち」の一人ぼっちは前と同じに発声し被せていきます。いたずらを通して世界が繋がっていた兵十に対し、ごんの中でひとりぼっち同士という結びつきが生まれてくるのです。勝手な友情のようなものかもしれません。
ですから「おれと同じひとりぼっちの兵中か⤵︎」のかを落として兵中に同情するのではなく、か⤴︎とあげて仲間意識を入れてあげても良いと思います。
ごんは物置のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。
「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」
ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、弥助やすけのおかみさんが、裏戸口から、
「いわしをおくれ。」と言いました。いわし売うりは、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもってはいりました。ごんはそのすきまに、かごの中から、五、六ぴきのいわしをつかみ出して、もと来た方へかけだしました。そして、兵十の家の裏口から、家の中へいわしを投げこんで、穴へ向むかってかけもどりました。途中の坂の上でふりかえって見ますと、兵十がまだ、井戸のところで麦をといでいるのが小さく見えました。
**ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。 **
ごんは自分のせいで何かが起こってしまったと気づきどんどん健気になっていきます。でもつぐないの方法を間違えてしまうのです。本当に哀しい・・。「いわしの安売りだあい」の声に走っていくごん。何かにすぐ反応してしまうごん。兵十のおっかあが死んだ中、起承転結の転に入っていく場面です。転にふさわしく「いわしの安売りだあい」「いわしをおくれ」は威勢良く声を張り上げてください。言葉を5メートル向こうに投げてやりとりをします。人が亡くなる中でも日常はしっかり動いているのです。
ごんがいわしを盗むシーンはテンポよく、息急き切るように読んでください。駆け出す、投げ込む、かけもどる、振り返る、小さく見える。ごんの小さな体が躍動している、身の軽さを表現していきます。
そして「ごんは、まず一つ良いことをしたと思いました。」です。まずは一つ負債の埋め合わせができてほっとしているごん。でも立ち止まって思い起こしている訳ではありません。ある種の興奮状態の中で駆け抜けながら自分に言い聞かせるのです。
ごんぎつね、読み込むほどどんどん好きになってきて、なんだか終わりが見えてきてるのに寂しい。
また次回です。