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教科書を読む「ごんぎつね」⑤

こんな変わり種な記事をフォローしてくださっている稀有な皆様いつも有難うございます。

皆様におかれましては解析もいいがじゃあ本当に読めるのかと、いぶかるような心持ちも湧いてきているかと思います。

読みたいです。この解説シリーズが終了したら。だから今日もグッと我慢して急ぎます。

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継続は力なり。石の上にも3年。
では参りましょう。

兵十がいなくなると、ごんは、ぴょいと草の中からとび出して、びくのそばへかけつけました。ちょいと、いたずらがしたくなったのです。ごんはびくの中の魚をつかみ出しては、はりきり網のかかっているところより下手しもての川の中を目がけて、ぽんぽんなげこみました。どの魚も、「とぼん」と音を立てながら、にごった水の中へもぐりこみました。

ぴょいと、ちょいと、ぽんぽん、どぼん。どれも身軽さを表現する擬音です。新美南吉は言葉遊びのように見せて丹念にゴンを描いています。何かに反応して体が動く感じ。自由なゴン、無条件になにかにちょっかいをだしたくなるゴン。ゴンと魚の躍動感。太字にした4つの言葉だけで足りるのです。表現するときはこの4つの擬音をちゃんと生かして下さい。

一ばんしまいに、太いうなぎをつかみにかかりましたが、何しろぬるぬるとすべりぬけるので、手ではつかめません。ごんはじれったくなって、頭をびくの中につッこんで、うなぎの頭を口にくわえました。うなぎは、キュッと言ってごんの首へまきつきました。そのとたんに兵十が、向うから、
「うわあ、ぬすっとぎつねめ」と、どなりたてました。ごんは、びっくりしてとびあがりました。うなぎをふりすててにげようとしましたが、うなぎは、ごんの首にまきついたままはなれません。ごんはそのまま横っとびにとび出して一しょうけんめいに、にげていきました。

そして太い、ぬるぬる、じれったくと重い印象の単語にかわり、うなぎが登場します。今まで、自由にやってきたごんにちょっと負荷がかかってくるののです。
行動のスピードと読みのスピードは一緒にというようなことを以前に話しましたが、私ならここをゆっくりじっとり読みます。モノクロでうなぎがスローモーションで動いていくイメージです。なぜならきっとこの場面を後でゴンは思い出すことになるから。
では「うわあ、ぬすっとぎつねめ」はどう読みますか?びっくり驚いただけなのか、大変な事態として叫ぶのか。もし先のストーリーがわかっていれば必死に、血相を抱えて怒鳴る方を選びます。だってこのうなぎは病床の母のためにどんくさい兵十がやっと捕まえた一匹なのです。

①ほら穴の近くの、はんの木の下でふりかえって見ましたが、兵十は追っかけては来ませんでした。
 ②ごんは、ほっとして、うなぎの頭をかみくだき、やっとはずして穴のそとの、草の葉の上にのせておきました。

そして①と②。どちらにテンションをかけて読みますか?私なら①です。①から②にかけてすこしフェードアウトし、②は平板で読みます。ゴンには兵十の存在しか意識の中にないのです。兵十が追いかけてこない時点で全てが終わります。うなぎは脇役、むしろ邪魔なもの。うなぎのやりとりのくだりはゴンにとって特に意味はありません。だから兵十の母親のお腹に入るはずだった大事なうなぎをゴンは自分の腹に入れることなく草の上にただのせたりもするのです。

もっと行きたいのですが、キリがいいので今日はここまでにします。次はお葬式のシーン。

その前に次回のnoteでは私が毎日聞き続けた朗読カセットたちを紹介したいと思っています。
昔の朗読カセットは最高です。

2020・5・1 TBSアナウンサー堀井美香