7日間ブックカバーチャレンジ 第2日目(堀有伸)

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○ニコマコス倫理学(アリストテレス)

精神科医になった後、先輩方が大学の哲学の先生のところに月に1回集まって勉強するという会があって、それに参加させてもらっていました。

そこでの学びが本当によくて、人生の宝になっていることを感じます。福島に来てから、その会への出席が続けられなくなったのは、残念なことの一つでした。


そこで読んだ本の中に、昨日の『純粋理性批判』もあったのですが、今日は『ニコマコス倫理学』です。

特に、「思考の徳」の中で触れられた「フロネーシス」という概念にとても強い影響を受けました。「叡智」と訳していたような気がします。全体的な判断力みたいなもの。

思考の徳として、エピステーメーという概念にも触れられていましたが、それは専門知みたいなもの。

さまざまな思考の特に触れられますが、最後の総合的な判断を下す力、みたいな能力であるフロネーシスには、一段高い価値が与えられているように思いました。

そして、アリストテレスはフロネーシスを定義しないのですよね。「ペリクレス(アテネの有名な政治家)のようなスコトーダイ(立派な人)」が持っているもの、として経験的な記載になっています。これも、なるほど、と思いました。

『ニコマコス倫理学』の中では、他に「数学のような学問」と「政治学・倫理学」を分けていて、前者には厳密さを要求すべきだけど、後者には過度な厳密さを求めてはならない、といった区別を書いていました。前者は若者でもできるけど、後者は向かない、みたいなことも。

脳神経科学でも、「ホムンクルス(脳の中の小人)問題」っていうのがありましたね。脳の機能を要素に分解していった先に、最後にそれを統合する中枢はありえるのか、みたいな。

フロネーシスに代表されるような機能には、神秘的な魅力を感じてしまいます。

(でも、ひょっとして、脳の機能には反射の複雑なのみたいしか本当にはなくて、「決断する叡智・自我」みたいなのは、事後的に構成される幻想(ファンタジー)に過ぎない、って結論になるかもしれませんけどね)


最後の結末が、人間の求めるべきものは「ユーダイモニア」だ、となっています。これは「幸福」と訳されることもありますが、「魂が良い状態にあること」だそうです。ちょっと貴族主義的と、読んだ時に思いました。


豆知識的には、「フロネーシス」は、当時心の座と考えられた「フレーネ(横隔膜)」から来た言葉で、このフレーネが分裂した病気が「スキゾフレニア(統合失調症)」となります。


こちらにインスピレーションを受けて書いたブログが、こちらになります。(一部、放射線防護の理解にあいまいな点があるのですが、修正しないままになっています。こういったことは、もっと厳密にしないといけません)

https://www.huffingtonpost.jp/arinobu-hori/nuclear-plant_b_8879872.html

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