市場をどう捉え、どう定量化するか?
こんにちわ、NEWh 堀です。
新事業開発を進めていく中で必ず向き合うことになる市場規模の定量化。
定量化をするためには当然、市場の定義が必要になるのだけれど、
市場というつかみどころのないものをどう定義し、定量化するか、は地味に結構悩みがちな部分かもなと思い、今回はここにフォーカスしてみました。
世の中の素敵な企業の市場の捉え方から示唆を得てみよう。という。
市場の定量化とは。
いわゆるTAM、SAM、SOMをどう定義するか。
新事業の事業企画書とかに必ず入ってくる、よく見るこういう図。
自社が見据える市場のポテンシャル、量感を規定する上で実際の現場でもよく使われている考え方です。世の中的な定義としては図に記載の通り。
若干人によって言葉の揺れはあるものの、大枠としては、
SOM:自社が実際に獲得できうる市場規模
SAM:自社が捉えている市場規模
TAM(可能性として)広がりうる最大の市場規模
という構造で市場を階層的に捉え、自社事業が属する市場のデカさとポテンシャルを定量化し、伝えるために使われてたりします。
概念としては理解しやすいものの、実際に、実務で市場を定量化しようとすると自由度が高く、どう定量化するか、悩ましいもののような気もしたり。
市場の捉え方の「型」
市場って人によって解釈の揺れの大きいかなりのビッグワードです。
だからこそ市場を定量化した"市場規模"はより深みにハマると抜け出せないもの。
が、その実態はすごくシンプルなんじゃないかと思ってます。
つまるところ市場とは、
「何かに困っている人がその困りごとを解決するために使った消費の集合体」である。と。
そして、市場というものを構成する要素はシンプルに、
「誰の」「どの消費」の2つ。この積が「市場規模」。
そしてそして、この「誰」と「消費」をどう"区切るか"によって生まれるのが市場の構造化であり、TAMSAMSOMになる。そんなふうに考えてます。
ただし、
この誰と、どの消費を、何に据えるか。どう区切りを作るかは完全に自由。正解はないはず。
だからこそ、この市場の定量化には起案者の意思が込められるもの。です。
市場規模の定量化と向き合うことは、
事業主、起案者が市場をどう捉えるか。と向き合うことであり、
言い換えれば、
事業に込めた思いだったり、成長の道筋/思惑と向き合い、可視化する。
ということ。
このように捉えてみると、
実は、とても面白く、意味深いものなんじゃないかと。
ということで、ここからは
世の中にある素敵な企業さんの市場規模を説明しているスライドから
各社の市場の捉え方とその思惑についてみてみました。
素敵な企業は市場をどう捉えているか?
「note.」の場合
まずは、いつもお世話になっている「note」さん。
昨年22年度にグロース市場への上場も果たし、メディアプラットフォームとして邁進中のnoteですが、彼らは自らの捉える市場についてこのように表現をしています。
市場の捉え方を「誰」と「消費」の軸に置き直すとこんな感じ。
「誰」は、「コンテンツ消費が行われている場所」
「どの消費」は「コンテンツ消費」に据え、
それぞれ、消費場所がオフラインか、オンラインか、
コンテンツ消費の対象がデジタル・テキストで区切りを持たせ、構造化。
Web上のテキスト形式のコンテンツにとどまらず、
世の中にあるすべてのデジタルコンテンツへの消費をTAMとして据えていることからも、単なるテキストコンテンツに特化したUGCプラットフォームではなく、世の中のすべてのデジタルコンテンツが生まれ、流通され、消費される場となるだ、という意思を感じる。面白い。
「Caster」の場合
続いては、10月にグロース市場に上場されたばかりのCaster。
彼らは、「リモートワークを当たり前にする」をミッションに掲げ、ビジネスシーンにおける各種手配タスクや書類作成、経理、採用等々の業務を、全国に点在するキャストと呼ばれるリモートワーカーに依頼し、ディレクション、品質管理のもとで依頼主に納品、届ける、Waas(Workforce as a Service)事業を展開しています。
そんな彼らは、市場をこのように捉えてる。
こちらも「誰」「消費」の2軸で捉え直すとこんな感じ。
「誰」は、「キャスターが向き合っているBPO領域における課題に共感する中小企業」※資料上の「自社アンケートから抽出した"BPOニーズギャップ"という表現から」類推
「どの消費」は「自社事業におけるARPU」をマックスに据え、そこから非IT系BPO、自社が展開しているサービス領域におけるBPO消費として区分し、市場を構造化している。
※実際の算出ロジックは消費単価ではなく、該当市場規模のシェアを用いて算出している様子。
特徴は、「BPO領域で課題を感じている中小企業」という「誰」軸は市場構造において区切らず、そのまま。アウトソース消費の領域を区切ることで市場を構造化している点。
あくまで中小企業と向きあう、という明確なスタンスと、
その上で、アウトソース領域で広がっていくのだ、という意思を感じる。
「INFORICH」の場合
最後は、昨年12月にグロース上場を果たしたINFORICHさん。
モバイルバッテリーシェアリング事業「ChargeSPOT」を展開されてます。
日に日に設置場所も増えて、スマホのバッテリーが少なくなった時に、私もほんと助けられているサービス。
そんな彼らは市場をこう捉えてる。
これも、「誰」と「消費」で捉え直すとこうなる。
「誰」は「スマホを持つ人で外出時に充電を行う人」そして「モバイルバッテリーに関心があるか」で区分。TAMにおける「誰」はちょっと特殊で、5Gの普及によりバッテリー消費量はどんどん増加するので、SAMで規定した「スマホを持ち外出時充電を行う人」自体が伸びていく範囲をTAMとして据えているよう。
一方、消費はシンプル。
「バッテリー月間レンタルの平均単価」と、そこに上乗せされていくであろう「バッテリースタンドを活かした様々な収益源」で区分けされ、市場を構造化。
そもそもスマホを持ち、外出時に充電を行う人自体が聞くまでもなく結構いそうで、既存の量感もありつつ、
・5G等々の浸透で電力消費量は増え、バッテリーを求める人は増えていくだろうし、
・街中に高密度で設置されていくスタンドからは様々なビジネスへの広がりがあるはず。
という今向き合っている市場のそもそものデカさと、将来的なサイズとしての広がりとビジネスとしての広がりが、ひしひしと伝わってくる。
そんな市場の捉え方な気もする。
まとめ
ほんとはあともう1社やろうと思ってたんだけど、
思いの外、文量が出ちゃったので今回はここまで。
でもやはり、
市場の捉え方は自由、だからこそ各事業の特徴や思惑が浮かび上がる。
市場をどう捉えるか、ってやっぱり深くて面白い。
と感じました。
市場は「誰の」「どの消費」の2つの変数で規定され、
それぞれをどう規定し、どう区切るか。が市場の構造化。
ということで、
また、そのうち第二弾をやってみるので、そのうちまた書こう。
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