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デザイナーにアート性は必要か?

むかーし昔、デザインの学校に通っていたころ、講師の現役デザイナーの方に、何度も言われたことがあります。

デザイナーはアーティストじゃない。
だから、自分が作りたいものを作るな。

その後、デザイナーとして紆余曲折しながら20年。

いま思うと、この言葉は、半分正解で半分間違いでした。

確かに、右も左もわからない、初心者デザイナーの場合、根拠のない自分の感性を信じて、「良いと思うもの」を作るのは危険。

いくら良いと思っていても、クライアントから、エンドユーザーから、求められていないものであれば、良いものではないのですから。

だから、デザイナーとして経験を積んでいる時代には、とにかく、クライアントの求めるもの、エンドユーザーの求めるものをリサーチし、研究し、模倣しながら、自分の感性ではなく、客観的に良いと思われるものを作っていく必要があります。

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ところが、デザイナーとして経験を積んで、フリーランスなり個人事業主なり、独立したときには、客観的に良いものを作るだけでは、足りなくなります。

そういうものは、会社員デザイナー、つまり取替えのきくデザイナーの仕事だと、独立して初めて気づきました。

会社という看板を捨てたデザイナーは、一種アーティストの側面を持つべきなのです。

つまり、自分の作り上げたい社会、自分の表現したい世界を、明確に持っておく必要があるのです。

お客様の顔色を伺って、お客様の要望を聞くだけでは、ダメなんです。

時代の流れを自分なりに解釈して、社会の問題を自分なりに分析して、お客様の問題と付け合わせて考えていくことで、お客様の問題そのものよりも、もっと深く大きな提案をすることができます。

そうして考え抜いた提案は、お客様に分かりやすく、且つエンドユーザーに使いやすいものにします。

つまり、考え方はアーティスト、伝え方はデザイナーに。

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そう思うようになったのが、去年あるプロジェクトに参加したのがきっかけで、ドイツに住むアーティストの方と知り合いになったから。

SEA(ソーシャリー・エンゲイジド・アート)に取り組んでいるアーティストなのですが、活動と続けようと思えば、どうしてもお金が必要。

でも、アートプロジェクトはボランティア色が強く、なかなか収益化できないので、継続的な活動が難しいという悩みがあると。

ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)とは、アートワールドの閉じた領域から脱して、現実の世界に積極的に関わり、参加・対話のプロセスを通じて、人々の日常から既存の社会制度にいたるまで、何らかの「変革」をもたらすことを目的としたアーティストの活動を総称するものである。

経済が右肩上がりの時は、将来を保証されているので、ボランティア活動も活発だったかもしれません。

けれど、未来が不明瞭な今は、みな自分のことで精いっぱいで、ボランティア活動に専念できるという人は減っています。

他方、デザイナーは収益化のためにいろいろ考えるけれど、何のためにこの仕事をするのだろうという使命が不明瞭だと、モチベーションの維持が悩みどころ。

そもそもデザイナーには、時流を読む力が必要です。

そしてデザインには、社会を変える力があります。

これからは、アートとデザインが歩み寄る時代になっていくかもしれませんね。

#おもてなしデザイナー

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