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【科学】ウサギとカメと相対性理論

こんにちはマスター、蓬莱です。

マスターはウサギとカメの童話はご存知ですよね。足の速いウサギがのろまなカメを挑発して、かけっこに誘い出し、ウサギが油断して寝ている間にカメが追い抜いて勝利、ウサギは大恥をかくというお話です。これはイソップ童話が原型らしく、日本に入ってきたのは室町時代だったとか。もとは紀元前6世紀のギリシャから伝わったお話だったのですね。

さて、このウサギとカメ、仮にカメが先に動いたらウサギはカメに追いつけないという感じの有名な詭弁術がありまして、この場合、足の早いのはウサギではなくギリシャ神話に出てくる英雄で「駿足のアキレス」と言われるほど、足の早い人でした。

この詭弁術は先にカメが走るとする、アキレスは追いかけ始めたカメの位置に辿りつく、しかしその位置からカメは少し前に存在する、アキレスはその位置に辿りつく、そのときに更にカメは前に存在している。アキレスがそこに辿りついた時にもカメはわずか前に居る・・・これは無限に繰り返される・・・だからアキレスは永遠にカメに追いつくことが出来ない・・・という内容です

古代ギリシャの哲学者ゼノンが提唱したアキレスと亀のパラドックス

これは言葉を巧みに使って、アキレスがカメに追いつき追い越す点をわざと回避して、その前に無限に時間を分割するという論理の仕掛けを構築し、説得力をもたせようとする話術。詭弁術と言います。

実際には容易くアキレスはカメを追い越してしまいます。

ところが、この現象、アキレスとカメが宇宙船に乗ってかけっこをした場合、その宇宙船が光の速度に近づけば近づくほど、現実に起こってしまうらしいのです。

今回は静止している者と、動いている者とでは、時間の進み方が違うという、とても不思議な、でも、実際に起こっているお話です。

以前「光の速度をつかまえろ」の記事で今から350年ほど前の人が天体の動きから光の速度は秒速20万kmと計算し、170年ほど前の人が光の速度の測定器を作って、光の速度は31万kmと算出、現代では光の速度は秒速約30万kmと認定されていることをお話しました。

ところで光は何度観測しても、何処で観測しても、空気中もしくは真空中で常に観測者から見て秒速約30万kmで進むのです。たとえば光の半分の速度の乗り物から光を前に放ったとしても、観測点から計測すると1.5倍の速度にはならない。常に秒速30万km。光の速度が一定なのは1887年のマイケルソン・モーリーの実験で明らかになり、その後、何度も実験で確かめられています。

静止しているものと超高速で前進しているものどちらが光を発しても光の速度は変わらない

これを「光速度不変の原理」と言います。そして、この事実は今までのニュートンの力学が通じなくなり、相対性理論が誕生して時間も空間も歪むのだということが確かめられるまで事象と論理的及び物理学的な整合性をつけることができませんでした。

相対性理論が構築された現代では、観測点から観測される対象の移動速度が早ければ早いほど、その対象の時間は相対的にゆっくりと進むことが確認されているのです。

光の速度が常に一定で有ることで起こる時間の歪みを説明する思考実験で「光時計」というのがあります。例えば宇宙船の中に巨大な筒を作り、地上でも同じ筒を作ります。その筒の端から端までを30万kmとしましょう、そして、筒の端に明かりを灯すともう一方の端に光が届くのが1秒後、これは地上でも宇宙船でも変わりません。

この光時計の光は地球上でも宇宙船の中でも等しく30万kmの筒の端から端まで1秒で到達する

この宇宙船が地上と平行に物凄く早く移動するとします

すると地上での1秒の観測だと、宇宙船の中の筒の光は30万km以上の距離を走ってしまい、計算が噛み合いませんし、宇宙船内の筒の端にも光が届いていないのです。

地上からの観測だと光は宇宙船の移動分だけ斜めに進んでいますから。光速度不変の原理によると、斜めになっている分だけ距離が足りなくなるのです。

宇宙船が光時計を乗せて光と垂直に進むと、光時計の光は斜めに進む分移動距離が合わなくない?

でも、宇宙船の中での1秒だと筒の中の光は端から端まで届いています。もちろん船内の筒を走る光の速度は秒速30万kmで変化していません。速度が変化しない代わりに時間が変化するのです。

つまり、速度が早く進む方が時間の進みがゆっくりになる。光の速度が一定だとの発見は、時間が状況によって早くなったり遅くなったりすることを証明する事に繋がりました。

アインシュタインによる光速度不変の原理、相対性理論により時間と空間は伸び縮みすると解明

つまり、相対性理論によれば、宇宙船に乗って移動しているアキレスとカメが無限に光の速度に近づけば近づくほど観測点から見たら宇宙船の時間はゆっくりと進み、アキレスがカメに追いつく点も観測できなくなるのです。

また、光速度不変の原理によって重力は時空の歪みである事が確かめられつつあるようです。実際に、重力の影響を受ければ受けるほど時間の進みが遅くなるそうで、地上だと標高が高いほど時間が早くすすむのだとか。

最近だと2020年の4月7日の発表で、東京大学と理化学研究所で光格子時計という、時間の狂いにくい原子時計より更に100倍以上精度が高い時計を用いて標高450メートルのスカイツリー展望台と地表の時間の流れのズレが確認され、相対性理論の正しさが検証されたそうです。

スカイツリー展望台と地上で「相対性理論」の検証に使われた超高精度な「光格子時計」

こういった速度と重力による時間流れのズレの計算値は、人工衛星を使った位置情報を提供するサービス、GPSに応用されているそうですよ。

GPSの人工衛星の速度による時間のズレと衛星軌道の高さによる重力によって起こる時間のズレを相対性理論を用いて計算し、正確な位置情報を提供しているのだとか。私達が不思議だと感じてしまう時間のズレは既に計算されて日常の道具に応用されているんですね。

今回はITメディア・ニュースの「東大、スカイツリー展望台と地上で相対性理論検証」、及び、ウィキペディアの「特殊相対性理論」「時間の遅れ」「ゼノンのパラドックス」などの項目からお話しました。

蓬莱軒では、知的好奇心を刺激する話題を毎週動画でお届けしていますので、YouTubeチャンネルにもよかったら遊びに来てくださいねマスター。

それではまた、らいら〜い🖐

蓬莱軒【水曜20時 不思議・科学・都市伝説】
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