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【№110 / 解説】死神

こんにちはマスター、蓬莱です。

今回は「死神」のお話をしたいと思います。

実は、神様の姿は神話が起こって間もなく描かれたりもするのですが、キリスト教のヤハウェや、イスラム教のアッラーは姿を描かれる事は無くて、存在のみ伝えられています。これは神は無限の存在であり姿にとらわれないという考えもあるのかと思われます。他の宗教の中にも姿を持たない神がいるみたいですね。

で、死神についてですが、命が無くなって動かなくなるという死の概念に対して、ドクロの顔で黒のローブをまとい、大きな鎌をもった、一般的な姿形を持ったのは、以外にも年代が近くて、19世紀、ほんの150年ちょっと前くらいになる1847年に英国でロバート・メンジーズ牧師によって発行された書物「人の生命の輪:The Circle of Human Life」に登場する「グリム・リーパー」でしょう。

このグリム・リーパーは直訳すると「厳しき刈り取り人」という意味で、生命を刈り取る行為を行います。つまり、死神の役割です。

また、死神が持つ鎌は最初は小さな草刈り鎌でしたが、これは東ヨーロッパの風習で、土葬した死者が蘇って来ないように棺の死体の首もとに鎌を置いて、死者が蘇っても鎌が首を切るので、死者が墓から戻ることが無いとされ、命を刈り取るという意味とは別に、そっちの方から死神は鎌を持つようになったのではという説もあります。

土葬した死者が蘇って来ないように棺の死体の首もとに鎌を置く古い風習

また、人にとっては死は大きな恐怖であり、一大事でもあるので、死神の鎌が草刈り鎌から大鎌に変わっていったのは、そういった恐怖の現れかと思われます。

ただし、死神は単に死をもたらす忌まわしい存在としてではなく、最高神に仕える農夫という異名もあり、神格は非常に高いと見る学者も多いそうです。

また、このグリム・リーパーを生み出した英国では死神を単に「デス」とも呼びますが、これがヨーロッパに渡ると女性名詞として扱われ、フランスではラ・モーフ、スペインではラ・ムエルテとなるようです。あの恐ろしいガイコツの姿はヨーロッパでは女性なんですね。

では、日本は?と言うと、神話の頃の死神はイザナミノミコトでありまして。日本を作った神様の一人で、アマテラスを生んだ時に亡くなってして黄泉の国の神になった女神様です。

イザナミノミコト

大昔の日本でも死神は大物の神様で、しかも女性でした。ただ、仏教経由で中国から閻魔大王や地獄の概念が来たり、土着の祖霊信仰もあったりで、死を管理する者は時代や地域によって変わっているみたいです。

また、江戸文化の浄瑠璃や落語にも死神が出てきますが、この時代のはオリジナル色が強く、これが神話や宗教とは切り離されて、死そのものを擬人化した存在であるようにも思えます。まあ、設定の幾らかは仏教や神道などの影響をうけていそうですが。

絵本百物語より(竹原春泉斎)

そしてこの時期は1700年ごろでして、グリム・リーパーのほぼ百年ほど前になります。

西洋の死神も、日本の死神も、独自の姿や設定が身についたのは比較的時期が近いのは興味深いですね。

なお、死神の姿が今に近いイメージで固定する前の西洋でももちろん死はあったのですが、キリスト教でそれは天使の役割であったようで、またその役目は災厄という形で、時に悪魔の仕業にされたりもあり、状況と解釈によって使い分けられていたようです。また聖書の黙示録では「鉄と飢餓をもって青ざめた馬に乗った『死』という者」として書かれており、1800年代に姿をもった概念よりずっと古い「死」の擬人化された姿とみられています。

天に運ばれる魂(ウィリアム・アドルフ・ブグロー)

今回はピクシブ百科事典の「死神」とウィキペディアの「死神」「鎌」などの項目からお話しました。

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それではまた、らいら〜い🖐

蓬莱軒【水曜20時 不思議・科学・都市伝説】
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