Blender初心者向けの4週間独学カリキュラムをやってみた
3DCGに興味を持って、これまでにBlenderの入門に何度かチャレンジしてきたのですが、その度に失敗してきました。今回、4週間の独学カリキュラムを通していい感じの手応えを得られたので紹介したいと思います。
4週間の独学カリキュラムとは
Blender GuruというYouTubeチャンネルで提案されたカリキュラムです。
動画
テキストで見たい場合は↓
「未経験から4週間で『キャラクターのいるシーン』の作品を作れるようになるためにはどうすればよいか」に焦点を当てています。Blenderの操作方法や機能の紹介だけではなく、良い作品を作るために必要な理論の勉強なんかも含まれています。
世の中には数多くの素晴らしいチュートリアルや教本があるのですが、どれも単独で完結していて、体系的に学んでいる実感が得にくいという思いがありました。手当たり次第にチュートリアルに手を出して、大量の情報の中から体で覚える方法もありますが、そこまでの時間はありません。やはり次に何をすべきかガイドが欲しいと思っていました。
ですので、このような学習の順番を紹介しているのは非常にありがたいです。目標がはっきりしており、内容にも説得力があり、自分にも出来そうと思ったので、今回試してみることにしました。
注意点
この記事ではカリキュラムに沿ってやったことを書いていますが、実際のカリキュラムについては上の元動画や記事を参照してください。特に各項目の狙いとかは動画内で詳しく説明してくれています。
動画の教材は全て英語です。私は英語字幕や自動翻訳を使って視聴しました。
キャラクター作成はこのカリキュラムには含まれません。別途入手してインポートする方法を学びます。
学ぶ内容はかなり絞られてるので、触れられていないBlenderの機能が結構あります。むしろ、パレートの法則で言うところの、8割の成果を生み出す最も重要な2割の機能の学習に集中したカリキュラムとも言えます。
Week 1 その1 ドーナッツのチュートリアルをやる
まずは、ドーナッツのチュートリアルでBlenderの基本機能を学びました。
多分世界で一番有名なBlenderのチュートリアルです。基本操作から始まって、モデリング、テクスチャペイント、マテリアル、ライティング、アニメーション等、広範囲の機能を使ってリアルなドーナッツとコーヒーカップを作ります。
動画24個とかなりのボリュームです。4日かけて完了しました。
Week 1 その2 ドーナッツに似た題材を自分で選んで作る
チュートリアルの動画を真似するだけじゃなく、自分で題材を選んで作品を作ることで理解を定着させます。2日かけてメロンパンを作りました。
ここまでがWeek 1です。5日で完了できました。
Week 2 その1 ライティングを学ぶ
ライティングの解説動画を見てライティングの理論を学びました。ライトの向き、サイズ、色、位置をどう決めるかの基礎知識が身につきます。3日かけて見ました。
動画を見た後は宿題です。Week 1で作ったドーナッツでライティングのバリエーションを2日かけて5個作りました。
Week 2 その2 マテリアルを学ぶ
プリンシプルシェーダーの解説動画を見て、リアルなマテリアルの作り方を学びました。これを見れば、プリンシプルBSDFシェーダーの凄い所や各パラメータの意味が理解できます。例えばプラスチックやガラスといった実在するマテリアルを作ろうとしたときに役立ちます。
Week 2 その3 金床のチュートリアルをやる
金床 (Anvil)を作るチュートリアルをやりました。ループカット、押し出し、ブーリアン等の機能を使ったドーナッツよりも複雑な形状のモデリング方法を学びます。ノーマルマップのベイクや、マテリアルで細かい傷を表現する方法も学びます。
3日かけて完了しました。
ドーナッツのチュートリアルと同様、動画の後は、自分で題材を選んで似たものを作ります。金床と関連して、鍛冶屋のハンマーを2日かけて作りました。
ライティングと地面のテクスチャを設定したら、それなりに見れる感じになってテンションが上った記憶があります。
Week 2 その4 構図について学ぶ
構図についての解説動画を見ました。一番見せたい部分に視線を向けさせる方法や、三分割法等の構図の決め方等を学びました。ライティングもそうですが、写真が好きな人は、この辺の知識は最初から知ってるのかも。
宿題として、ライティングと構図を考えて、金床のバリエーションを3日かけて5個作りました。
この宿題が地味に大変だった記憶があります。手元にあるモデルが金床とハンマーだけなので、それでどうやってバリエーションを出せばいいのか、頭を捻りました。追加で色々作って対応しました。
ここまでがWeek 2です。作業できない日もあって、結局2週間かかりました。
Week 3 その1 ソロプロジェクト (物)
なにか1つ自由に物を決めて、2日程度で作ります。参考写真(リファレンス)を用意して、それを忠実に再現するようにします。再現を通して、対象をよく観察することが大事です。
カリキュラム動画で例として出ていたウイスキーの画像を選びました。
グラスの形状はいくつかの画像を参考にして再現しました。
正直、氷やウイスキーの色など満足できる再現度じゃないのですが、それを含めて模写の重要性を学びました。
Week 3 その2 Environmentの作成のための知識
Cyclesレンダリングの最適化の解説動画を見て、レンダリングの時間を短縮する方法を学びました。
Environmentを作ろうとすると、沢山のオブジェクト、マテリアル、光源を使うことになるので、必然的にレンダリング時間が長くなります。そうなるとクオリティ向上のための試行錯誤やモチベーション等に大きな影響が出るので、意外に重要な知識です。
テクスチャの繰り返しのパターンをわからないようにタイリングする方法について動画で学びました。Blenderの機能というより、Blender Guruが配布してくれているシェーダーのノードグループの説明ですが、実際便利です。
Micro Displacement についての解説動画を見て、方法と利点を学びました。地面のような大きなオブジェクトに対してマテリアルのディスプレイスメントを使ってメッシュの形状を変形させる場合にパフォーマンスと見た目に大きな影響が出ます。
FBXファイルをBlenderにインポートする方法について動画で学びました。良い作品を作ろうとする場合、3Dスキャンされたモデル等、サードパーティ製のアセットを使うことは重要です。
Week 3 その3 ソロプロジェクト (Environment)
学んだことを生かしてEnvironmentを作ります。自分で題材を選びます。これまでと違ってチュートリアルなしでの制作なので、どうやって作ればいいか少し途方に暮れました。動画で簡単だと言われていた砂漠を作りました。
ノイズでデコボコさせた地面にダウンロードした岩のモデルをポチポチ配置しただけで、1日で出来ましたが、これでいいのかな?という感じです。
ここまでがWeek 3です。6日で完了しました。
Week 4 その1 ArtStationの作品の調査
ArtStationは、世界中のクリエイターたちが作品を投稿しているサイトです。このカリキュラムを通して初めて知りました。
ArtStationのトレンドにあるような作品を色々見てみて、トップクリエイター達の作品に触れます。今まで学んだことを思い出しながら作品の良いところを分析しました。大体2、3時間だったと思います。
作品のURLと画像のスクショをメモに貼り付けて、「コントラストによって、メインのオブジェクトに視線が向けられてる」とか「三分割法使ってる」とか書いたりしました。
Week 4 その2 キャラクターのインポート
Mixamoからキャラクターを入手してBlenderにインポートする方法について動画で学びました。このカリキュラムではキャラクターの作成は触れられていません。いつかキャラクターの作成もチャレンジしたいです。
宿題として、自分で作ったEnvironmentにキャラクターを配置しました。
あまりに工夫がなさすぎる棒立ちですね。立ち上がるアニメーションの中の1フレームです。
Week4 その3 色、エフェクト
色についての解説動画を見て、彩度と明度についてや、配色のパターンについての理論を学びました。
BlenderのCompositionの機能についての動画を見て、レンダリング結果にエフェクトを付ける方法を学びました。これはちょっと内容が淡白過ぎるので、別の解説を探すのも良いかもしれません。
宿題として、作ったEnvironmentの色を調整して、Compositionのエフェクトを色々かけてみました。
↓Before
↓After
Week4 その4 最終プロジェクト
今まで学んだことを使って、キャラクターがいるEnvironmentを1つ作ります。
Mixamoに忍者のキャラクターがあったこと、Artstationで鳥居が印象的な作品があったこと、忍者→SEKIRO→大蛇のイメージ等々のアイデアから、「大蛇に対峙している忍者」を作ろうと思いました。
シンプルなオブジェクトとカメラを配置してレイアウトを決めた後に詳細を作っていきました。
4週間で学んだこと全てが作品に活かされていて、圧倒的成長を感じました。また、木の作り方や、蛇にボーンを設定してポーズさせる等、カリキュラムに無かった方法も調べて使いました。
地形、蛇、鳥居、灯篭は自分でモデリングしました。参道のデコボコはマテリアルのディスプレイスメントで表現しています。木や草のテクスチャはCC0 Texturesのようなサイトのものを利用しました。自作じゃない素材を使って作品を作る場合はライセンスや利用規約をよく確認しましょう。
テクスチャペイントで目を描いたり、ボリュームやホコリを追加して空気感を出したり、Compositionで色合いやフィルターを調整したりして完成したのがこちらです!
ArtStationにも投稿してみました。高解像度で見たい方はこちら。https://www.artstation.com/artwork/28QLDa
どうでしょうか? 個人的にはかなりいい出来だとおもいます。カリキュラム全体が4週間なので、この作品も2,3日で完成させる想定なのだと思いますが、色々作り込んだ結果10日程かかってしまいました。
4週間カリキュラムを終えた感想
約6週間かかりましたが、最後までやり通すことが出来ました。Blenderの色んな機能や作品作りで必要な理論を学べて、ようやく3DCGの入門を果たせたんじゃないかなと思います。
ですが、まだまだ簡単なものしかモデリング出来ないですし、より良い作品のためには継続した訓練が必要だということもわかりました。
このカリキュラムで触れられていないトピックも、今後チャレンジしてみたいです。キャラクターモデリングとか、アニメーションとか。
まとめ
とても良いカリキュラムと思いました。Blenderをどうやって始めればよいか悩んでいる人にはおすすめです。
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