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コーヒーフロート

私たちはおしゃべりが好きで、そして暑がりで寒がりで、
いつもどこか過ごしやすい場所を探してしまう。

私はコーヒーが好きだ。
けれど貴女はコーヒーを飲まない。

だけど貴女はカフェがあると、
「入らない?」
と尋ねてくる。

あまり会えない私たちは、
おしゃべりの時間が必要だから。

私がコーヒー好きだと知っているから。

私はいつもブラックコーヒー。
砂糖は入れてもミルクは入れない。

貴女はいつもカフェラテで、
ミルクを追加して砂糖も入れる。

付き合わせてる?と聞いても、
「涼しいし」「あったかいし」と返ってくる。

そんないつものカフェ巡り。
いつもと違う、コーヒーフロートを頼んだ。

「あついし、これにしなよ」
その声に従って頼んでみる。

私のブラックコーヒーに、
ミルクの塊が乗っている・・・
まじまじと見てしまう。

異質だ。

ちょっと氷がちなアイスクリームは、
すくおうとすると沈み、
白い渦となってこげ茶色の海を染める。

貴女の話を聞きながら、
左手のスプーンはアイスをつついて溶かしていく。

ふと手元をみると、
冷たいアフォガートのような溶けたバニラアイスと、
何年飲んでないかわからない、ミルクが溶けたアイスコーヒー。

貴女の話は止まらない。
私の目線がグラスに落ちていても止まらない。

やっぱりちょっと味は慣れない。
でも、苦みが薄れたコーヒーもたまにはいいかな。

貴女はようやく私に聞く。
「・・・聞いてる?」


すいません、何の話でしたっけ。

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