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生きている喜びを、心から実感できるビール。がん経験者の思いが込められた「Thanks & Cheers!」が完成!

今回発売される「Thanks & Cheers!」は、がん経験者の思いを集めてつくられたビールです。

コンセプトは「生きている喜びを心から実感できるビール」。がんを経験したからこそ感じる苦しさや悲しみ、その先にある希望、幸せ、喜び──。人生にあるいろいろな思いを、ほろ苦さと爽やかな後味・香りで表現しています。

このビールは、カルビー株式会社やサッポロビール株式会社などさまざまな企業のがん経験者の有志が参加して、企業内のピアサポーター育成に取り組む「WorkCan’s」(ワーキャンズ、以下同)の課外活動プロジェクトとしてつくられました。

今回は、ワーキャンズのメンバーである、一般社団法人CSRプロジェクト代表理事の桜井なおみさん、カルビー株式会社常務執行役員の武田雅子さん、サッポロビール株式会社の村本高史に、ビール完成までのお話を伺いました。

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左から、カルビー株式会社の武田雅子さん、 一般社団法人CSRプロジェクトの桜井なおみさん、サッポロビール株式会社の村本高史

「生きている喜び」を伝えるビールをつくりたい

──このビールは、「ワーキャンズ」の課外プロジェクトとしてつくられたんですよね。ビールづくりの最初のきっかけについて教えてください。

桜井さん:村本さんの思いがきっかけですよね。

村本さん:そうですね。「ワーキャンズ」でプロジェクトが正式にはじまったのは2021年4月ですが、話は2019年にまで遡ります。

サッポロビールは「Can Stars(キャンスターズ)」というがん経験者の社内コミュニティを2019年3月に立ち上げました。その発足宣言に、こんな一節があるんです。

私たちは、人生にはつらいことがあることを身をもって知っています。でも、私たちは、生きることの素晴らしさも心から実感しています。そんな私たちだからこそできることがあると信じています

この言葉について、私は常日頃から考えていました。私たちに何ができるだろうか、と。すると2019年の終わりに、「ビール」という言葉がふと思い浮かんだんです。「生きることの素晴らしさ」を感じられるビールがあったら飲んでみたい。それがアイデアの発端です。

──がん経験者の思いから生み出されるビール……そのアイデアはどこから来たのでしょうか?

村本さん:そのアイデアが浮かんできたのには、思い当たる理由があります。新型コロナウイルスが流行する前、社外のがんサバイバーの方から頼まれて、「がん飲み」というイベントを開催したことがあったんです。

その方は、「がんを経験すると、飲み会に誘われなくなることが寂しい」とおっしゃっていました。たしかにその通りだなと思い、がんサバイバーが集まる飲み会を開催しました。

すると50名くらいの人が集まり、すごく楽しい会になって。がんとビールは結びつきにくいかもしれないけれど、だからこそ、当事者の思いをもとに、自分たちが飲みたいビールをつくることには意味があるのではないかと思うようになりましたね。

──どうやってそのアイデアを、実現まで持っていったのでしょうか?

村本さん:実現できた要因はふたつあります。ひとつが、サッポロビールの「ホッピンガレージ」、もうひとつが「ワーキャンズ」という枠組みです。このふたつの枠組みを使ってビールづくりができるといいなと思いました。

せっかくなら、同じような思いをもった人たちと一緒に、思いをつなぎながらつくっていきたかったんです。

「そんなの、やるっきゃないでしょ」

──武田さんや桜井さんは、ワーキャンズでビールをつくろうと村本さんからお話があったとき、どう受け止めたのでしょうか?

武田さん:「そんなの、やるっきゃないでしょ」って。気づいたら一緒につくっていましたね。

一同:(笑)。

桜井さん:村本さんが言ったように、一般的に「がんになるとお酒は飲んではいけない」というイメージがあると思うんですよ。主治医に許可をもらってお酒を飲んでいたのに勝手に心配されたり、飲み会に誘われなかったり。実際に「がんとビールはくっつかない」って私も知らず知らずのうちに思い込んでいたから、「えっ! ビールつくるんだ!」って反射的に驚きました。

武田さん:「がん」と言うだけで、付き合いを勝手に遠慮されちゃうことが本当に多いんですよね。主治医の許可があれば、お酒を飲んで大丈夫なケースもあるのに。

桜井さん:あとは、「ビール」を通してがんについて語れるということが、とてもいいなと思いました。がんについて語ろうとすると、体験談とか医学的な話でしか語る機会がなかったんですよ。

でも「ビール」を通すことで、新しいがんの語り方を見つけられた感じがします。ビールを通してどんな世界を見たいのかなど、「がんのその先にあるもの」を共有できたというか。「村本さんってロマンチックだなあ〜」って思いましたね。

村本さん:お恥ずかしいです(笑)。

250名の思いを、「選ぶ」ではなく「包み込む」

──このプロジェクトは、何名くらいの方が関わられたのでしょう。

村本さん:コアメンバー十数名が中心になりながら、一般公募の方も含めて4回のワークショップを行い、のべ250名くらいの方が関わってくださいました。

武田さん:最後は、がんサバイバーじゃなくても、共感してくださったいろいろな人たちが入ってくれて。

──250名の方々の思いをひとつのプロダクトに落とし込むのはすごく大変だと想像するのですが、ビールづくりはどのように進めたのでしょうか?

村本さん 制作過程で一番大切にしていたのは、関わった人々が全員、遠慮することなく、自分が思っていることを存分に言えることでした。

武田さん:まずはそれぞれ、「がん」「ビール」に対する思いやストーリーをひたすら共有していきましたよね。ストーリーに同じものは絶対にない。一人ひとりの話が本当に愛おしくて、何度も泣いたことを覚えています。ものすごく、豊かで美しい時間でした。

話していくうちに、ビールづくりにおいて「何かのエピソードを選び取る」よりも、「すべての物語をどうやったら包含できるか?」という方向性にたどり着きました。

村本さん:具体的には、「苦さがあって、爽やかさに向かっていく。悲しみがあって、笑顔に向かっていく。そしてそれらは、ビフォーアフターではなくて、ひとつに溶け合っている」という言葉が出ました。

いいなと思う一方、それを味に落とし込むのはなかなか難しいと思っていたんです。でも、そのひとつの解になったのが「ソラチエース」というホップの存在でした。ヒノキやレモングラスのような複雑な香りや味が、コンセプトにぴったりだったんです。このホップを、サッポロビールの醸造スペシャリストの蛸井さんが選択したことで、味が一気に決まっていきましたね。

武田さん:最初に飲んだとき、本当に感動しました。複雑さも繊細さも、爽やかさも苦みも全部入っていて、「本当に全部包み込んだな、すごい!」って。

桜井さん:マジックですよね。どんどん変わっていくもん、味が。

──気になります……! 「Thanks & Cheers!」は、パッケージも美しいですよね。このデザインは、どのように決まっていったのでしょうか。

村本さん これは一日の中で空の色が一番変化する、幻想的な時間帯「マジックアワー」をモチーフにしています。「光と影が入り混じっている」という点が重要で、それをデザイナーの方に反映してもらって決めていきました。

すべての人生に、「Thanks & Cheers!」

──最後に、このビールはどんな方々に飲んでいただきたいですか?

桜井さん:私はやっぱり、お世話になった人、ひさしぶりに会う人、主治医の先生、人生で関わってきたみなさんに届けたいです。

武田さん:一緒につくったみんなにも、先に空に行っちゃった人にも、いま頑張って治療している人にも、「薬をやっと飲み終わった!」みたいな人にも。

幾度のワークショップを通して、人が生きることの尊さを、みんなで実感しながらこのビールに辿り着きました。軽い人生なんてなくて、一人ひとりの人生すべてに重みがある。そんなことを、いろいろな方に感じてもらえるとうれしいですね。

村本さん:私と同じような思いの人に加えて、いろいろな不安の中で苦しんでいる人、がんばっている人が、ちょっと一息つきたいときに飲んでくれたらと思います。今まさにがんや病気と闘っていて飲酒を控えなければならない人に対しても、この商品が発売されたという事実や商品パッケージを通じて「一人ではない」というメッセージを届けることができたらと思っています。

桜井さん:本当に、「Thanks & Cheers!」だからね。みんな、この言葉がおりてきたときに黙っちゃったくらい、いい言葉ですよね。

村本さん:すべての人生に乾杯したいですね。「すべての人生」とは、旅立った人も含めていろいろな人の人生に、という意味もあるんですけど、「自分のすべての人生に」という意味もあると思っています。

自分の人生を振り返ると、きっといいことばかりでも、不安なことばかりでもない。まるっとひっくるめて、このビールで乾杯してほしいです。

あとがき

取材中、がんで亡くなった祖父のことを思い出して涙ぐむ私を見つめるみなさんの視線に、まさに「包まれている」と感じました。このビールに込められている思いやストーリーは、決して他人事ではありません。すべての人生に、心からの乾杯をしたいと思います。Thanks & Cheers!

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HOPPIN' GARAGE(ホッピンガレージ)は、お客様との共創によるビールづくりを展開するサッポロビールの新しいブランドです。魅力的な人々の人生ストーリーをもとに多様性あふれるビールを生み出し、そのストーリーを味わいながら飲むという、これまでにないビールの楽しみ方をお届けします。新作ビールを2カ月に1回お届けする定期便サービスも展開中です。