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俺のおやじ、ミノル 【其ノ壱】俺のおやじ、ミノルには、誕生日が二つある。

 
俺のおやじ、ミノルには、誕生日が二つある。
 
 
戸籍では、昭和10年4月18日が「誕生」となっている。
ところが、実際に生まれたのは、
昭和9年の12月10日頃(本人疎覚え)。
 
つまり、4か月も“放置されていた”のだそうだ。

おやじに問い詰めてみると、混沌の時代らしい複雑な事情があったようである。どうやら、おやじが生まれた頃に当家に婿入りした祖父、俺からみるとひいじいちゃんにあたる人物が関係しているらしいのだが…。ちょっとデリケートな話になりそうなので、おじさん(ミノルの弟)にも裏をとってみることにする。
 
 
それにしても、本来ならば、生後2週間以内に届出をしなければいろいろとまずいことになる。

 
当時はまだ子だくさんの時代だったから、いちいち1人にかまっていられなかったのかもしれないが、
 4か月も放置していたとは、親(俺のじいさんとばあさん)も大した度胸の持ち主である。
 
 
そんなわけで、俺のおやじ、ミノルには、誕生日が2つある。戸籍上は酉年だが、戌年でもあるのだ。

道理で、犬みたいに年中自転車こいであちこち出かけてるけど、鶏みたいに朝起きるのが早い(年のせいか・・?)。
 

そんなおやじ、ミノル。別に賢くも、お金持ちでもないが、俺の自慢の父である。
 

 ぴーこ


#創作大賞2022

#俺のおやじミノル





実家にいた頃は、俺にはおやじはいるのか?と思うくらい、夜遅くまで呑みあるっていて顔を見る機会も少なかったおやじ、ミノル。晩年は缶ビール1本を飲むか飲まないか、というレベルの酒量でしたが、それでも楽しく嗜んでいたようです。おやじへの酒代として大切に使わせていただきます。