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俺のおやじ、ミノル 【其ノ拾弐】俺のおやじ、ミノルは、墓にハマったことがある



 俺のおやじ、ミノルは、墓にハマったことがある。


私が幼稚園に入る自分まで、 住んでいた実家は、
裏山のある南側と西側を お墓に囲まれていた。

今みたいに墓との仕切りはなく、
なんとうちの庭から直接お墓の敷地に入っていけた。

裏山にあるお墓のほうは、 その時分でも土葬だったそうで、
後から考えてみると、薄気味が悪い気がした。

そして、おやじは子どもの頃、
そのお墓のあたりでよく遊んでいたそうだ。

ある日のこと、 おやじが悪友たちと追いかけっこをしていたら、
急に足が動かなくなった。

気の根っこにでも引っ掛けたのかと思って 足もとを見ると、
なんと、足がずぶっと土の中に潜っていた。。。

さすがのおやじも、これにはビビった。
が、あせればあせるほど、 足が抜けない。

言うまでもないことだが、 棺桶が腐って、
そこに足がハマってしまったのだ。


まぁ、ホラーではないので
足をゾンビに掴まれていたとまでは言わないが、
焦りもあってか、なかなか抜けなかったらしい。

やっとのことでそこから脱出したおやじも、
その後しばらくは裏山には行かなかったそうである。


うーん、 おやじにも、恐れるものがあったか。
今頃、その墓の主に 怒られてたりして………!?


〜天国(地獄?)にいるであろうおやじに現世より愛を込めて♪〜

ヒロシ


#創作大賞2022

#俺のおやじミノル

実家にいた頃は、俺にはおやじはいるのか?と思うくらい、夜遅くまで呑みあるっていて顔を見る機会も少なかったおやじ、ミノル。晩年は缶ビール1本を飲むか飲まないか、というレベルの酒量でしたが、それでも楽しく嗜んでいたようです。おやじへの酒代として大切に使わせていただきます。