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りさ子のガチ恋♡俳優沼     読後感想文~私はガチ恋なのか?~

 

 タイトルからして、ポップなイメージ。しかし、裏表紙には、「演劇業界の闇」「愛憎劇」といった不穏な言葉が並ぶ。私がこの作品を知ったのは、著者である松澤くれは氏が脚本・演出を手掛ける舞台「あなたも知らない舞台裏」を観劇したことがきっかけだった。

 私が「がちこい」を一発変換をすれば、「ガ血恋」になる(笑)。インターネットサイトnumanによれば、ガチ恋の定義は「“本気”(ガチ)で“恋”している“オタク(ファン)”のこと」と定義されている₁(こちらのサイトに掲載されたガチ恋のオタク口上の例文は一見の価値がある)。

 推しに対してどこまで本気なのかどうかは数値では測れないものであるが、シビアな言い方をすればその人がどれだけお金や時間をかけ、現場に通うか、もしくは遠方から通販や配信を利用して応援しているかに現れると思われる。

 推しに恋しているのかどうかは、時に他者から指摘されることもあろうが、ほとんどは主観によるところである。要はキュンとするかどうかによる。

 そしてオタクかどうかも自らがそう思っていれば、オタクなのである。自分でオタクという人間程「にわかオタク」だという反論もあるかもしれない(笑)。気づいたら沼に落ちていたとしても、実は底なし沼ではないので、その後もガチ恋オタクであろうとするか否かは自分で決められるということである。
 
 私の場合は、推し変を高校生から繰り返している。TVや映画に出演している誰もが知っている俳優やプロ野球選手がほどほどに好きだった時代を過ごし、大学生の時にはメジャーデビューしていたバンドを熱烈に好きになったが、しばらくしてバンドが解散してしまい、喪失感に襲われた。そのころから、お金や時間ができるようになったら、好きになったコンテンツにはお金に糸目を付けないで後悔しない推し方をしたいと考えるようになっていった。

 しかしながら、就職した後は無茶な遠征計画を立てて、夜勤を終えてからぎりぎり時間内に入場して昼公演を見に行ったり、終演後の劇場をダッシュで飛び出し、飛行機の搭乗口に滑り込みセーフをキメたり、常に忙しく移動していたため、遠征中の食事は満足に食べられなかった。

 そして推していた舞台俳優のいわゆる「カノバレ」をくらい、「彼女いないって言ったじゃん」と、りさ子と同じセリフが口からこぼれ、それまでの自分の推し方は一体だれのためのものだったのだろうという思いに至った。そうして私はガチ恋をしていたことに気が付いたのだった。

 縁あって、また新たに舞台俳優を推しているが、カノバレした俳優のときのことを思い出し、無理な遠征計画は立てないこと、予算内でグッズを買うことを心に決め、自分も大切しながら推していくことにしている。

 ガチ恋とされる人物像は千差万別であり、「りさ子~」の中では特にりさ子がガチ恋を理解するのに分かりやすい例であるが、ガチ恋がストーカー行為に変貌してしまい、推しやその周囲を危険にさらすことになってはいけないし、チケット代を捻出するために食事や人との付き合いを抑えたり(嫌いな相手に無理して合わせなくてもいいと私は考えるが)、無茶な遠征計画を立てることなど、推し続けるために自らの心身を壊すような行為は自分のためにならないと私は考える。ガチ恋は悪ではない。しかし、自分のことを大切にして、平和な推し方を常に心がけていきたいと思った。

⑴https:/numan.tokyo/words/Zpz1o 最終アクセス2020/7/24 

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