見出し画像

沖縄の魂

沖縄の桜も満開を迎え、いよいよ春の到来となりました。長かった新型コロナ禍の影響を大きく受けた沖縄の観光業ですが、いよいよ、本格的に再スタートとなります。ここ沖縄には、世界有数のホテルや空港、道路も整備され、ますます多くの観光客が訪れることでしょう。

私も20年間、東京ディズニーリゾートの運営に携わり、リゾートエリアの管理、テーマパークやショッピングエリアの新規開発などの仕事をさせて頂きましたが、この沖縄は、より一層、世界中からの憧れの地、ディスティネーション・リゾートになると思っています。

そもそも、東京ディズニーランドは米国の原型を、そのまま輸入した形を採りましたが、ディズニーの世界では、決してジェットコースターを創りたかった、ミッキーマウスに会って頂きたかった訳ではなく、その本当の目的は、単なるモノやコト(体験)の提供ではなく、“マジカルチャンス(魔法のような出逢い)”を創ることにあります。つまり、そこでの新たな気づきや再認識、再発見を創ることこそ、ディズニーの仕事だと、教わりました。日常の生活では、やらなくてはならないことに忙殺されることも多くありますが、その日常に追われる現代人だからこそ、ディズニーの場では、改めて“いのち”を授かって生まれてきたこと、また、こうして“いま”一緒にいることができる家族、恋人、友人など、その素晴らしい目の前の“しあわせ”を再認識して、しあわせを実感させる魔法をかけることが、ディズニーの役割と教わりました。

それではいったい、ここ沖縄では、何を世界の人々に提供するのでしょうか?それは全くどこかのビーチリゾートや豪華高級ホテルと同じようものではなく、それらをコピーしたり、競い合ったりするのではなく、ここ沖縄でしか提供できない独自のものを提供することが大切だと思っています。

私も、2020年3月に恩納村真栄田、宇加地に「青と碧と白と沖縄」という小さな宿泊施設を開業しましたが、その利用者の皆さまに一番提供し、再発見して頂きたかったものは、この沖縄の「魂」です。琉球時代から続く永い歴史、その先人たちが繋ぎ、継いできたもの、それはもちろん城址や碧い海、大きな自然などもありますが、一番大切なものは、人として生まれてこれた、いのち、その生き方、魂であると、私は思っています。先祖や家族あっての、このいのち、そして、社会あっての、この毎日の生業。ここ沖縄には、本当に現代社会が忘れかけている大切なことが、多く護られています。

ここ沖縄には、自然界の各々のものに固有の魂や霊が宿り、私たち人間以外の生物に含む、木や石、すべてのものに、魂があると考えるアニミズム信仰の考え方があるように思います。私たちが生きているのではなく、私たちは生かされていると、位置づける考え方があると思うのです。ゆんたくしながら、目の前の相手をも尊重し、当たり前のように支えあい、助け合い、見守るうちなんちゅ。そう、ここ沖縄では、目に見えるものではなく、目に見えないものを、世界中の皆さまに県内のあちらこちらで、手に取るように伝えていかなければと思っています。

宇加地に開業したその宿泊施設では、完成目前の時に、私は“神アシャギ”という建造物に出逢うことができました。神をお招きし、祭事を行う神聖な場所だと教えて頂きましたが、その造りを見た時に、軒が極端に低く、自身の腰をかがめ、頭を下げなくてはならない構造、発想に多く感銘、再発見をすることができました。毎日、当たり前のようにある、いのちではなく、いまある全てに感謝し、頭を下げ、生きていく人のあるべき姿勢を再認識させてもらい、すぐに設計、施工変更をお願いして、客室への入り口の高さは158cmに低くし、客室に出入りするたびに、頭をぶつけないように注意を払う出入り口にしました(そのため、お願いした本人の私も、これまで4度ほど強打して、痛い目にあいながらも、いまあるいのちに教えられています)

さぁ、ここ、からです。沖縄には他のどこにもない、素晴らしい魂、生き方、考え方があります。もっともっと、世界に感動を提供していきましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?