阿G

演劇UNITホープフルモンスター代表

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『牛談〜おそれをいだきて~』台本

                   作:安島崇  暗闇の中、怪談師・蘇芳(すおう)の声が響く。 蘇芳  新天地開闢同盟(しんてんちかいびゃくどうめい)・無明(むみょう)——それは、戦前・戦中に存在した研究機関、通称「百八機関」を前身とする、この国を〝在るべき姿〟へと創り直すことを目的とした秘密結社。  ぼんやりとした照明の中、蘇芳が登場。  和装で、まだ若いのに白髪。右手には包帯を巻いている。 蘇芳  無明は、百八機関に所属していた、三人の科学者達によって統率されて

    • 『忘談~きおくをたどりて~』台本

      忘談(ぼうだん)~きおくをたどりて~ 作:安島崇  とある山奥。  陽(ひ)は落ちはじめ、周囲は薄昏(うすぐら)くなっている。  白髪だが、それ以外は若く見える男が登場。男は襤褸(ぼろ)布を体に纏っている。右腕には掌から肘にかけて、包帯が巻かれている。  ガサガサッ、と木々の揺れる音。  男、ビクリとして音のした方を見る。  沈黙。  少し迷った末、音のした方に、そろりそろりと歩き出す男。  ガサガサッと、今度は背後の木々が揺れる。  男、慌てて振り返る。 男  誰か—

      • 『死談~ともしびついえて~』台本

        『死談(しだん)~ともしびついえて~』 作:安島崇  真っ暗な室内。  着物に身を包んだ若い女・英(はなぶさ)瑞恵(みずえ)、蝋燭(ろうそく)の灯(あかり)と共に登場。  座布団に座り、客席に深々と頭を下げる。 瑞恵  ——さて。今宵お話しますのは、鶴泉南雲(つるみなぐも)、人生最後の物語です。  ご存じない方の為に説明いたしますと、鶴泉南雲は私と同じ怪談師です。鶴屋南北(つるやなんぼく)と小泉八雲(こいずみやくも)にあやかり、その性と名からそれぞれ一文字ずつ取って鶴泉

        • 『弄談〜いのちであそびて〜』台本

          『弄談(ろうだん)~いのちであそびて~』                     作:安島崇           原案:渡辺キョウスケ、岸田國士  霧が深く立ち込めている。  鉄道線路の土手——その下が、材木の置場らしい僅かの空地、黒く湿った土の、ところどころに踏み躙られた雑草。  遠くに、シグナルの赤い灯。どこかに月が出ているのだろう。  着物を着て、眼鏡をかけた男——鶴泉(つるみ)南雲(なぐも)が、ぽつねんと材木に腰をかけている。首にはマフラーを巻き、その右腕には

        『牛談〜おそれをいだきて~』台本