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母子登校を経験して

息子が小学一年生のとき、登校しぶりがあり、母子登校を経験しました。

期間は1ヶ月半ほどで、徐々に母親が学校にいる時間を減らしていき、一人で過ごせるようになりました。

当時、息子は支援級に所属しながら、ほぼ全交流で過ごしていました。体が不自由なため、登下校は親が送迎しており、付き添いがいないと休み時間に外で過ごすのは少し難しい状況でした。

通常のクラスの子が学校に行きづらくなったのとは違うケースではありますが、経験談をお話したいと思います。


母子登校って何?


教育現場で明確に母子登校という言葉があるわけではありません。

登校拒否になってしまった子どもが、母親と一緒であれば登校できそうなら、提案されることがあるようです。

ただ、母親がそばにいることで安心できる低学年で提案されるかと思います。

また、私は専業主婦、一人っ子ということで、提案されてからすぐに開始することができましたが、最近は仕事をしている方も多いですし、未就園児がいるお母さんだと難しいですね。ですから、すぐに母子登校をお願いされることは最近はないと思います。学校だけでは上手く解決できず、お母さんの力を借りればいけそう、ということであれば、数時間だけでもお願いされることはあるかもしれません。

私の場合は最初は登校してから下校までずっとでした。ただ、息子の場合は2時間目からしか登校できなかったので、朝早くから付き添う必要はありませんでした。

母子登校ってどんなだった?


母子登校のきっかけとなる登校拒否になってしまったのは、二学期からでした。
支援級でしたが、知的障害はなかったので、全て交流に行かせていたのです。
ASDの診断もありましたが、入学直前だったため、学校生活でどんな問題が出てくるのか親の私も分かっていませんでした。

二学期が始まる一週間くらい前から、行きたくないと言い出し、どうしてか聞いても一年生ということもあり、明確な理由が分かりません。ASDの子は言葉で理由を説明するのが難しいのですが、紙に書くんだったら表現しやすいかも、と思い書かせてみました。

“学校なんて何もおもしろいことがない”

一年生の夏休み明けの子がこんなことを言うなんてかなりショックです。

すぐに先生に伝え、先生から息子にヒアリングすると、“学校はやだ、お母さんと一緒にいたい”と言ったことから、母子登校を提案されました。

嫌な理由はいろいろとあったのでしょうが、一年生でASDということもあり、お母さんといたい、と答えるのが、精一杯だったのだと思います。

ただ、息子一人に対して先生が一人のクラスでしたし、先生も小さなお子さんがいる女性だったので、今思えば、母子登校せずとも解決したような気もしますが、なかなか上手く行かず、私も行くことになりました。


基本的に授業に出てしまえば、何も問題ない子なので、一人授業参観状態で教室の端で見ているだけでした(泣)あまりに暇なので、不登校に関する本を読んだりしていました。
あとは、当時、学芸会の練習の時期でしたので、練習の様子を見学したり、体育館の練習のときも遠くのほうから見ていました。
普通は学芸会の練習を見学することはまずないので、これはいい経験になったと思います。発表を見たとき、自分の子どもだけでなく、他のお子さんのがんばっていた姿を思い出し、感極まっていました。

そして、給食の時間は交流級でみんなに混じって食べました。席が近い4、5人でグループを作って食べるのですが、席は息子の向かいに座ることになっていました。
すごく抵抗がありましたし、自分の分の給食はないので、お弁当を持っていかないといけません。

ですが、周りのお子さんたちはみんなあまり気にしていませんでした。今ちょっとつらいことがあって、お母さんと一緒に来ている、くらいのイメージで捉えられているようでしたし、周りの子もまだ一年生で幼いので、私に話しかけてくれる子もいました。

一年生ということもあり、野菜炒めなどは残す子がいっぱいいました。今の食事指導は、自分が食べられる分はきちんと食べる、という方針なので、いただきますをしてから、食べられない分を配膳台に戻しに行くんですね。カレーなどはおかわり希望の子で取り合いになりますが、野菜中心のメニューは残飯の量がすごく、そんなに残すなら私にちょうだいよ!と思ったものです(笑)
コロナ禍前でしたが、余った給食をおすそ分けしてもらえることはありませんでした。学校によっては少しだけもらえることもあるそうです。

母子登校で見えてきたこと


母子登校は大変でしたが、実際に学校に行くことで何が嫌なのか少しずつ見えてきました。

一番は全交流がしんどかったようです。
体が不自由で休み時間に交流級の子と一緒に遊ぶことはなく、授業に出ていてもお客様状態ではありました。
ASDの特性でよくある、集団の中にいると疲れてしまう、というのもあったと思います。息子は精神的に疲れると聴覚過敏も出てしまうので、一年生のガヤガヤした教室も辛かったようです。

そして、これもASDの特性になりますが、決まったことをするのは問題ないが、自由にしていいとなるとどうしたらいいのか分からなくなってしまう。

だから、授業中は特に問題ないんです。
問題は給食、掃除、休み時間という自分の意志で動かないといけない時間。
少しずつ母親のいる時間を短くしていきましたが、この3つに関してはなかなか離れることができませんでした。

あとは予定が分からないと不安になるという特性からくるのだと思いますが、授業で何をするのか分からず、1日の見通しが立たないのも不安だったようです。

どうやって克服した?


まずは、全交流をやめ、支援級で過ごす時間を増やしました。朝の会、帰りの会も交流だったため、それは支援級に。
苦手意識のあった図工と道徳をとりあえず一年生が終わるまでは支援級でやることにしました。

すると休み時間には支援の上級生の子が自然と誘ってくれるようになり、息子のできる範囲で一緒に外で遊べるようになりました。
私も、休憩できるようになったので、生協のカタログを見たりしていました(笑)

給食に関しては途中で聴覚過敏がひどくなり、支援級で食べたりしていましたが、環境が変化するにつれ、交流級でも食べれるようになりました。

掃除は体が不自由なので、床の雑巾がけもできませんし、ほうきも上手く使えません。それで自分の居場所がないように感じていたのではないかと思います。
私とも息子は何をしたらいいか考えてはいましたが、あるとき窓の桟の拭き掃除をしてみたところ、先生に褒めてもらえたことがきっかけで自信がつき、掃除の時間も苦にならなくなりました。

あとは授業の細かい内容もできる限り伝えてもらうようにしました。この頃は息子もかなりナーバスになっていたため、漢字ドリルの何ページをやるかなどまで教えてほしいと要望していましたが、そこまではできないと。
次にやる単元名を伝えるくらいならできますよ、とのことだったのでお願いしました。

母子登校の終盤には持久走大会があったのですが、練習期間に走った周数をクラスで集計して競うことになっていました。
休み時間に走った周数もカウントできるのですが、普段通りに遊ぶ子がほとんどでわざわざ走る子はまずいません。
しかし、支援級の子たちが、「息子くんが走ってくれたおかげで(周数が)増えたよ!」と声を掛けてくれるため、それに応えようと休み時間も健気に走っていました。
体が不自由なため、走るといっても早歩きくらいの速度しか出ないのですが、お礼を言われることが嬉しくて、毎日練習していたのです。

自分が走ることでクラスの周数が増える。そのことでクラスのみんなにありがとうと言われる、これで自信がついたのだと思います。
交流級ではどこかお客様状態で馴染めずにいた息子ですが、支援級で過ごす時間を増やし行事ではクラスの一員であることを自覚し、徐々に立ち直っていきました。


そして、学校だけではすぐに解決できそうになかったため、教育委員会にも相談をし、そこでスクールソーシャルワーカーさんを紹介され、学校に介入していただきました。スクールカウンセラーさんにも相談し、学校や担任の先生との橋渡しをしていただきました。自分だけでは煮詰まっていたので、専門家の方とお話できるのは息抜きになりましたし、そのお二人との面談を入れることで一人授業参観状態から逃れることができ、心も軽くなりました。

スクールカウンセラーは有名なので、相談した方もあると思いますが、私はスクールソーシャルワーカーさんに相談するのもおすすめします。スクールソーシャルワーカーとは問題を抱える児童・生徒を取り巻く環境を改善し、関係機関との連携・調整をしてくれる専門家です。
私のように教育委員会から紹介される場合もありますし、学校に申し出ると取り次いでくれます。

息子の場合は疾患のため、体が不自由でしたが、病気のことをちゃんと理解している先生が少なかったり、ASDの診断が付いているものの、学校では特に問題を起こさず、あまり表情に出さない子なので、息子がしんどい思いをしていることは気付かれていませんでした。

こういった息子の特性を先生方に周知してくださり、息子が過ごしやすい環境に近づけていただけました。

スクールカウンセラーさんにも相談はしており、学校にも伝えることを了承して、先生方の意識を変えようとしてくださっていましたが、先生方の悩みに寄り添うことが中心で、私にはそこまで変化を感じられなかったです。

私は相談したら解決策を提案してほしいと思ってしまうタイプなので、話を聞いてもらうだけでも楽になるタイプの方はスクールカウンセラーさんに相談されるだけでも、解決の方向に向かうかもしれません。


いろいろな方のお力を借りながら、自分もクラスの一員であることを自覚し、自信が持てたことで母子登校を克服することができました。

母子登校は親子共、精神的に追い込まれますが、授業参観等では分からない普段の学校の様子を見ることができます。そこに親が入ることで、比較的すぐに問題点が見つかることがありますので、時間的に余裕がありそうなら、一度検討してみてもいいのではないでしょうか?





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