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【一部公開①】幻聴の世界を本当に知ってますか?

僕が2021年9月23日に出版した本。

幻聴の世界を本当に知ってますか?ー当事者地獄、他人には笑い話ーを一部無料公開します。続きは本編をぜひ読んでみてください。

ー 第一章 陽性症状 ー

<第1話> Yの怒り 

「死ね、調子乗るな!」
 そんな声が急に僕の席の後ろから聞こえてきた。

 それが悲劇の始まりだった。当時、僕は某国公立大学の化学科に通っている大学3年生でその声が聞こえてきたのは後期の授業が始まる10月のことだった。

 声の主は同級生Yであった。Yのいる授業では、毎回聞こえていた。同じ言葉を何度も連呼され、悪魔に囁かれたような感じでいつも怯えていた。

 Yはガタイが良く、当時華奢な体型をしていた僕は、ビビって言い返せなかった。言い返したところで授業中に暴言を吐く人間に何されるか分からないから関わりたくもなかった。

 2週間も続くとさすがに苦しくなってきて、友人のKに相談した。Kは柔道の黒帯を持っているため守ってくれる安心を感じていた。

「Yから授業中に悪口言われているんだけど言ってない?」
それに対して、Kは
「言ってたら直接言うわ」と言われ、心強かった。

でも数日後、Kは、
「そんなこと言ってなかったよ」
心の中で僕は「そんなまさか」とは思いつつ
「ごめん、そうなんだね。勘違いしてたわ」と答えた。

その後も悪口は続いていた。そして、その事についてもう誰にも相談しないと決めた。ただYの後ろの席に座っている時だけは聞こえなかった。だから絶対Yが悪口を言っていると思った。

 悪口を言われ続けて1ヶ月経つと、同じクラスにいる女子達も僕をみて、ニヤニヤしていた。何かしてしまったのかなと内省したが全く思い当たることがない。それに対してYの悪口の数が増え、声も大きくなった。だからYが失恋でもしたのかなと思った。

 そんな予感が何となく当たっている気がした。Nさんと呼ばれるクラスのマドンナがいた。色白で笑顔が素敵な人であった。授業中、よく僕と目があった。その度にYの悪口の激しさが増した。YがNさんに振られた。振られた理由が「他に好きな人がいます。」と言われたんじゃないかと仮定した。そしてNさんが好きな人は僕という流れ。

 まぁ今思うと相当自意識過剰だった。笑

 だんだんとその意識は強くなっていった。めんどくさかったが、つじつまがあって悪口を言われる理由がわかったので、何とか耐えて、Yとは違う研究室に入ることにした。ついにYの悪口から解放された。助かった。やっと終わったと思った。

 しかしこれは始まりに過ぎなかった。


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