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【一部公開③】幻聴の世界を本当に知ってますか?

僕が2021年9月23日に出版した本。

幻聴の世界を本当に知ってますか?ー当事者地獄、他人には笑い話ーを一部無料公開します。続きは本編をぜひ読んでみてください。

<第3話> ヤクザ登場 

 男女の2人コンビであった。脳に音波を直接送り込む装置が用意されたのかはわからないが、ヤクザ達の声が聞こえるようになった。

「バカだねぇ、ざまあみろ、嘘つき」そんな声が頭の中に響いてきた。

 その三日後の夜、上の階でヤクザ達が飲み会をしていた。ジャンプしたり、大声で叫んだりして、僕は寝れなかった。飲み会は朝の4時まで続いた。僕は罪の意識を感じていたため、我慢し続けた。耐えられないほどしんどくなったので、実家に帰る事にした。

 実家に帰って、Yの悪口の件だけ話した。バイトの件は、罪悪感から言えなかった。実家では何も聴こえなかった。親から言われたこともあまり覚えていないが、もう少し頑張れと鼓舞され、戻ることにしたことを覚えている。

 アパートに戻ってからとうとう自分の考えていることが読み取られるようになった。そして頭の中で考えている事に対して、「やっぱバカだわ、死ねばいいのに」といちいちヤジを飛ばされるようになった。

 クレジットカードのスキミングと同じように脳波を抜き取られて読み取られていると考えた。それからはとにかく余計な事を考えないように意識した。特にキャッシュカード・クレジットカードの暗証番号のことは意識しないようにしていた。

パソコンやスマホでネットサーフィンして、意識を別の方に向けたが、今度はテンペストと呼ばれる電磁波を傍受・解析し情報を盗み取るアンテナが用意され、パソコン・スマホ画面も監視されるようになった。

そして僕は行動範囲をどんどん狭くしていった。

 唯一の楽しみはスマホで他人の顔写真を加工して遊ぶ事だった。眼球を飛び出るほど瞼を開いたら、ヤクザ達も最低と言いながら爆笑していた。

それから少しずつヤクザ達と仲良くなっていった。

 頭の中で悪口や馬鹿にするなど他人に対して悪いことをした時は叱り、逆にバスで年配の方に席を譲るなど良いことをしたときは褒めてくれるようになった。

それから僕はヤクザ達から礼儀というものを教わった。

僕に対して理不尽なことをしてきた人にも文句を言うこともあり、僕が物を失くした時にもどこにあるか教えてくれることもあった。

そんなこともあり、僕はヤクザ達のことをだんだんいい人だと思うようになり、苦しみが和らいでいった。


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