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ミッシャ・マイスキーがいる〜J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲全曲演奏会(第二夜)

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ミッシャ・マイスキーによる、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲の第二夜@サントリー・ホール。10月31日、ハロウィンの夜の公演となった、

無伴奏チェロ組曲は全部で6曲。全てプレリュード(前奏曲)で始まり、その後に様々な舞曲が続くのだが、それはバッハの時代の組曲構成による。最初はアルマンド、ゆるやかな2拍子系。続いて「走る」を意味するクーラント。荘重なサラバンドの後は、メヌエット、ブレー、ガヴォットといったスタイルの中から各曲において一つが選ばれ、最後は活発なジーグで閉じられる。

構成は同一でも、その曲想は様々である。この日、私はこんなことを考えながら、聴いていた。最初に演奏された第3番は、プレリュードで、曲の全体像が示される。風景的、山のような森のような。そしてその中心あるいは山頂は真ん中に置かれたサラバンドで示される。他の舞曲によって道中が描かれる。概して楽しげな道のりである。

第2番はガラッと変わる。6曲のうち、2番と5番が短調、2番はニ短調である。これはドラマである。プレリュードでドラマがスタートする。どのようなストーリーなのか、それは分からない。ただし、重い何かが始まり、ストーリーが展開していく。

そして最後の第6番は、チェロという楽器の可能性を一段高いところに持ち上げる。かつては5弦のチェロというものがあったらしく、この曲はそのために書かれた。それを、現代では通常の4弦のチェロで演奏する。とても、1台の楽器で奏でられているようには聞こえない。遠くのチェロと呼応したり、隣同士で協奏したり。もちろん、技巧的であるととともに美しい。

無伴奏チェロ組曲は、全曲が名作である。今度聴く時は、また違った顔を示してくれるだろう。そんな名作をまとめて聴くことの贅沢さを、改めてかみしめた。しかも、ステージにはマイスキーがいる。

アンコールは、昨日に引き続き息子が登場、バッハのチェロ・ソナタ3番を演奏した。

続いて、コラール前奏曲「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」。元はキリストの来臨を賛美するカンタータである。マイスキーは、今はラトヴィア共和国の首都となっているリガに生まれる。当時はソビエト連邦の時代で、ユダヤ系の彼は強制労働に送られた経験も持つ。世界には多くの苦しみが存在する。経験者の一人としての祈りのようにも聞こえた。

これで終演と思いきや、昨日に続いてG線上のアリアを演奏し、濃厚な二日間が幕を閉じた

なお、この日はカメラが入っていた。12月30日NHKで放送される予定とのこと

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