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女騒ぎの好きな木下恵介監督の二本(その2)〜「女の園」

(承前)

小林信彦は、文藝春秋の“日本映画ベスト50”の最後に、黒澤明と大島渚を<男騒ぎ>の好きな監督と評し、その代表作として「七人の侍」と「戦場のメリークリスマス」に触れている。後者は、ベスト50の中には入れていないが、<男騒ぎの極致のような作品>、<非常に印象深い>と書いている。

そして、この記事を<男騒ぎの好きなこの二人の監督がとても気になっている。一方で、女騒ぎの好きな監督が「お嬢さん乾杯!」と「女の園」の二名作を残しているのも、「いかにも」なことではないか>と結んでいる。

なお、小林さんは、ベスト50の中に、木下惠介作品を4本選んでいる。この2本に加えて、「大曾根家の朝」と「野菊の如き君なりき」である。

「お嬢さん乾杯!」に続いて、「女の園」(1954 松竹)を観る。両者ともU-NEXTで配信されている。便利の世の中になった。「女の園」は、まさしく<女騒ぎ>のドラマである。

小林さんは、「女の園」について、<木下惠介のピークはこの映画ではないか>と書いている。ちなみに、1954年度のキネマ旬報のベストテンを見ると、木下監督作品としてはおそらく最も有名な「二十四の瞳」が1位、「女の園」が2位、そして黒澤の「七人の侍」が3位である。

「女の園」はまさしく<女騒ぎ>の映画である。舞台は、京都の女子大。封建的な体制で、それを率いる寮母役に高峰三枝子。これが迫力が凄い。時代が変化する中、旧来の体制に反発する学生が出るのは当然。実家は大学を支援するほど裕福ながら、社会運動に燃えるのは久我美子。彼女の実際の出自も華族であり、独特の気品が漂う。

か細い印象ながら、恋には熱い女性を演じるのが高峰秀子。この年、「二十四の瞳」と共に主役を張っている。さらには、岸恵子が登場するとなると、<騒ぎ>が起こらないわけがない。また、「おちょやん」浪花千栄子も登場し、<騒ぎ>を彩る。

高峰秀子の恋人役が、田村高廣。これが映画デビュー作であるが、さすが阪東妻三郎の息子、カエルの子はカエルである。

戦後の女性地位向上に向けての<女騒ぎ>を描いた映画なのだが、日本は今だに女性の社会進出が遅れていると言われている。

<女騒ぎ>がまだまだ足りていないのでは、などと思いながらこの映画を観た


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