見出し画像

2009年ハイドパークのブルース・スプリングスティーン(その2)〜アーカイブからの再掲

(承前)

開場時間がいよいよ迫ってきました。結局、ジェナーロの主張が通り、番号を持っている人から入場です。この時、僕の位置取りは、左から2番目の入り口前から3番目。Pitも無いし、こうなったら最前列目指して走るしかないかという気持ちになって来ました。

ゲートが開きました。「走らないで下さい」という指示を無視し、皆走り出すのですが、配置されたスタッフの人が「走らないで!」と止めようとします。タックルはされたくないので、そこでは皆歩き、スタッフを過ぎると走る、また歩くと繰り返しながら、最前列の柵を目指すのでした。

息も絶え絶えに、確保したのはステージに向かって少し右サイドの最前ポジション。柵を背に、スペースの確保の意味もあり、足を前に投げ出して座り、隣のイギリス人の男性と「やったね!」とハイタッチ。反対側はイギリス人のおばさんで、こちらも息が上がっています。高揚した気分の中、彼らとスプリングスティーン談義、イギリス人男性は30回以上ライブを観ていて、リクエスト・ボードは「Pretty Flamingo」とマニアックなものを持参しています。話の都合上、この男性をケビン、おばさんをナンシーとしましょう。ケビンは、ベテランらしく(歳は僕より若いと思いますが)、ビールを飲む僕に「飲みすぎると、大変だぞ。気を付けた方が良いよ」「ソーセージ・ロールを沢山持ってきたから、欲しかったら言って」と用意周到をかまします。

この日は、ブルースに加え、4つのバンドが登場したのですが、コンサートがスタートしたのが午後2時。始まると、当然ながら皆立ち上がります。最初のセットが終わる頃には、当初確保したスペースは消え去り、座る為の有効スペースはありません。「おいおい、まだ2時半だぜ、ブルースが出てくるまでは相当あるから、体力温存しようぜ」と心の中でつぶやきますが、日本語の言葉にならないつぶやきは、誰にも届きません。

2組めは、Gaslight Anthem。ブルースのホームタウン、ニュージャージー出身のバンドです。ケビンは、「次のバンドはイカすらいしぞ」としきりに話します。スプリングスティーンをちょっとパンクっぽくしたサウンドの演奏が始まり、数曲演奏すると「特別ゲスト」という事でサングラスをかけたスプリングスティーンが登場するではありませんか。勿論、僕も含めて観客は狂喜乱舞です。そして、演奏したのはGaslight Anthemの「The '59 sound」  演奏が終わり、ブルースが引っ込むと、ボーカルのブライアン・ファロンは「ニュージャージー出身の俺らを甘く見るなよ」とアピールしました。




フェスティバルが進行するにつれ、周囲の人口密度は高まり、とても飲み物を買いに行くとか、トイレにいく事は困難になります。そんな大変な中、後ろに位置した女性2名が、僕とケビンに「ちょっと私達の場所見ててくれますか?」 ここで、ひるむのは日本男児の沽券に関わるとばかり、「勿論です、僕が座ってお守りします」と調子よく答えてしましました。このチャンスに座りたい気もありました。しかし、確保すると言ったって、別に明確な国境があるわけでもなく、人間が一人やっと立てる面積を二人分、できるだけ足を広げて座ったのですが、領地を守るのは簡単ではありません。しかも、周囲にはすきあれば国境を超えて侵攻しようとしている巨人もいて、気が気ではありません。

そして、女性2名は一向に戻ってきません。「こんな状態なのに、戻れるわけないじゃん。俺達に領土を譲れよ」という無言の圧力が周囲からかかります。そんな僕に救いの手を差し伸べたのが、隣のナンシーおばさん。「ここには人が戻ってきますから」と、アフガン侵攻を試みる人々を牽制します。そんな中、ステージにはDave Matthews Bandが登場、演奏が始まりました。回りが総立ちで演奏を聴く中、私は一人座ったままでスペースを確保するのでした。結局、二人の中、一人は帰還しましたが、もう一人は諦めたとの事。ちなみに、Dave Matthews Bandは、音楽は結構良いのですが、不必要に音量が大きい演奏でした。

さて、前置きが長くなりました。いよいよ、本日のメイン・エベント、ブルース・スプリングスティーンとEストリート・バンドの登場です。時間は19時15分、ステージ前のかなりの人達は立ち上がってから7時間以上が経過しています。

そして、オープニング、スプリングスティーンが演奏したのは、クラッシュの「London Calling」でした。Boss Timeの始まりです


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?